猫田に小判 -新館 -

Last Modified: 2024/04/14(Sun) RSS Feed

タグ「金継ぎ」を含む投稿32件]

#徒然なる日記 #金継ぎ #どうでもいい思い付き

ウルシオールは揮発するのか?を調べている。きっかけはGoogleで漆について検索している時、AIが生成した「ウルシオールは酵素が最も活発化することで揮発する」という文章だった。
昔から、漆に全く触っていないのに被れたという話があるのは知っているが、正直、ウルシオールが常温で被れを生じるほどの量で揮発するとは思えず、全く触っていないと本人が思っているだけで実は何かしらの理由で触ってはいるという事なのだろうと考えていた。しかし9割は揮発しないと思っていても、1割位は「えぇ!ウルシオールって揮発するんだぁ」と驚いてみたいという気持ちもあり、実際に確認してみるか、となったわけである。

が、ウルシオールが揮発するかどうかをどうやって見つけるのか。まずテスト方法から考えなければいけないわけだが、問題は「手持ちの環境で」という事。空調が整った実験室や高額な道具や機材があれば割とすぐに結果が分かるのかもしれないが、金粉1gを買っただけで食事のレベルを下げなければいけない貧乏金継ぎ屋にとってそういう環境は期待できない。汚い作業場で極力手近にある物を組み合わせてウルシオールの揮発の有無を知るためのテスト方法を考えるのは、結構な想像力を必要とするように思われる。
しかし、古代や中世の人々だって、そこまで精度の高い道具が無くても様々な発見をしていたわけで、十分に頭を使えば100%は無理でも75%程度の確証までは得られるだろうとポジティブに考えることにした。間違えた結論を出しても、そこから他の人が新しい何かを見つけてくれれば、まぁ良いかという若干の投げやり感もあったりはするわけだが。

テスト方法についてはいろいろ試していることもあり書き始めると長くなるのでエックスで小出しにするとして、今のところ

「漆の酵素が、使い終わった水分を空気中に放出する際、一緒に何かが出てくるようだ」

という事までは推測出来た。ウルシオール単体で揮発するというよりは、水分放出と関連しているのだろうと思われる。
何しろ試験精度が低いので、あくまでも推測の域を出ない。もう少し試行錯誤を繰り返して精度を上げないと確証まではいかないが、いつかそれなりの確証が持てたら、触っていないのに漆被れする理由としてnoteにでも残しておこうとは思っている。

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〔 1015文字 〕 編集

拡大鏡で仕事の寿命が少し伸びた、という話

No. 91 :
#徒然なる日記 #どうでもいい思い付き #陶磁器修理 #金継ぎ

金継ぎで細かい作業するたびに眼鏡をずらしたり外したりする事に、そろそろストレスを感じるようになったため思い切って拡大鏡を買うことにした。

拡大鏡を使ってみてまず分かったのは、去年から「加齢で細い線を引くのが下手になったなぁ、いつまで修理を続けられるのかなぁ」と思っていたが、加齢で器用さが落ちたわけではなく視力の問題が大きかったということ。眼鏡を外すと細かいところまで良く見えると思い込んでいたが、否、拡大鏡で見える解像度とは雲泥の差。ちゃんと見えるということは、ちゃんと細かい作業が出来るということに直結しているのは、体感してみて五臓六腑に染みわたった。

そして、よく見えるようになって仕事の精度が上がると、材料の無駄もかなり減った。線が細く引けると、使う漆の量も金粉の量も結構驚くほど減るし、線だけではなく欠けに充填する錆も無駄に食み出さなくなるので使う量が減る。
無駄を減らす最良の策は、精度を向上させることだったんだなぁと納得した。いくら無駄を減らそうと頑張っても精度が低いうちは結局無駄が出てしまうわけで、逆に言うと、精度が上がると無駄を減らすとか考えなくても自動的に無駄が減っていくのだ。精度ってほんまに大切。

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(写真:親に修理を頼まれたカップ)

ちなみに拡大鏡はネットで検索しても金継ぎするのに最適な倍率が分からなかったので、試しに5倍と10倍の2つを買ってみたが、使いやすいのは5倍だった。
10倍は確かに無茶苦茶細かいところまで見えるようにはなるのだが、その分、見える範囲もピントの合う範囲も狭い。特にピントの合う範囲が狭いのは割とストレスで、レンズ中央から外れると像の歪みが大きいので立体物に線を引く時は拡大鏡を少しずつ動かして調整しなければならず、そのたびに線から筆が離れるので集中力が途切れる。1~2cm角くらいの欠けであれば範囲も狭いし割と平面なので10倍でも使いやすいが、初めて買うなら5倍くらいの方が総合的に使い勝手は良いと思う。5倍でも十分精度の高い仕事出来るし。

〔 910文字 〕 編集

#徒然なる日記 #金継ぎ

マツコの知らない世界で金継ぎが取り上げられたというのでTVerで見つけて視聴してみた。
某ナカムラ出演と書かれていたので、これは間違いなく期待できないな、と思ったら案の定、金継ぎ無茶苦茶になっていた。

某ナカムラさんといえば、私の中では結構誤った内容(早い話が嘘)な雑過ぎるエポキシ金継ぎ本を出していて、海外にスピリチュアル金継ぎを広めた一旦を担いでいて、ラジオ番組で稲垣吾郎さんに食器には使わないでとメーカーが注意喚起しているエポキシ&新うるしを使った金継ぎが安全だと言い切った人、ということで、別に好きでも嫌いでもないが、少なくとも金継ぎを世間に誤解させまくっているという印象がある。話し方で他人を安心させる空気感を出す方なので、余計にたちが悪かったりする。

別に私は恨みつらみがあるとか、好き嫌いとか、そういうのは全くないわけだが、この人がやっている事は金継ぎのエッセンスだけを利用したアートであって、要するに金色が使ってあるアートなのだが、それを見せて、これが精神の高みに至る日本発祥の金継ぎであ~ると言いきっているのが困ったもんだな、という話なのだ。

どうも最近は漆を使い始めたみたいなのだが、テレビで紹介したものを見る限り、どう見ても技術は素人程度というか素人以下というか、線の引き方といい、研磨の中途半端さといい、金色の乗せ方といい、付け焼刃な感じしかしない。水研ぎのやり方を見ても、器に傷が付くことなど微塵も気にしていなさそうだし。つまり器を修理しているという気持ちがまるで無く、金色のアート作品を作っているだけなのだ。
で、金継ぎは素晴らしいでしょうって語るので、まぁ、「ん~…」としか言いようがない。

別に金継ぎは誰のものでもないので、どう解釈しようと、どういう使い方をしようと構わないっちゃ構わないわけだが、影響力がある立場なので自分に都合の良い箇所だけをピックアップした俺様金継ぎを発信する前に、もう少し、歴史とか、技術を守ってきた職人の方々への敬意みたいなものにも気を使ってほしいなぁと思ったりする次第。でも本に、金継ぎの極意は他人の金継ぎを気にしない事みたいな話を書いていたりするし、歴史とか職人の事も気にしないんだろうなぁ。

〔 970文字 〕 編集

#徒然なる日記 #金継ぎ

かなり久しぶりにXで金継ぎを検索してみたら、勝手に金継ぎをするチャデスというポケモンが話題になっていた。話題になっているというか、その話と金継ぎキットの宣伝しか出てこない状態だった。全部読み込むと、ツイート取得上限になってしまいそうなので、適当なところで早々に読むの止めたけども。

ちなみに、このチャデスというポケモンは、隙間を見つけると勝手に金継ぎをするという設定らしいが、使うのが抹茶らしい。要するに茶道と金継ぎの曖昧情報をガッチャンコしたという感じなのか。金継ぎする割には、体は肩衝茶入だし、手に持っているの茶杓だし。金継ぎの道具まったく関係ないのね。設定と絵面のバランスが無茶苦茶で面白いっちゃ面白いけども。

それにしても、勝手に金継ぎしてしまうというところは、私のように修理を生業としている人間から見ると、金継ぎブームで急に湧いてきた上に、器を片っ端から接着剤だの紛い金を使ってゴテゴテにして、SNSに中途半端な修理品を載せて金継ぎサイコーとか喜んでいる人々と同じだなぁとか思ってしまう。
自分の家の器を直している分には別に構わないんだけど、他人の器を無料でとか格安でとか言って修理品募集していたり、酷いのになると勉強中だから修理はノークレームでとか言ってたりね。次から次へと出て来るし。私からしたら、勝手に金継ぎするモンスターそのものよ。

とは言え、私はポケモン全くやったことないので、ポケモンそのものもよく分かってないんだけど。ピカチュウも見た目以外はどういうモンスターなのかも分からんし。

〔 697文字 〕 編集

#徒然なる日記 #金継ぎ

カッテージチーズの成分に脂質が有るのは脱脂粉乳から精製したとしても元が牛乳だという事を考えれば完全に除去するのは難しいんだろうし、食った時にも全く無いと旨くないんだろうと納得できるわけだが、カルシウムはどうなんだろうかと思っていたら、リン酸カルシウムがカゼインミセルの核なのは知っていたが、実はカゼインミセルが凝集して大きな塊になるにもカルシウムが必須なんだそうな。
カルシウムは、カゼインを沈殿させて取り出すために必要不可分という事なのか。無茶苦茶納得した。

〔 271文字 〕 編集

#徒然なる日記 #金継ぎ

金継ぎが世界的に取り上げられているとか、日本文化は物を大切にする文化だとか、日本の景色という美学は素晴らしいとか、世間で語られる99.9%は恐らく擦り倒された金継ぎ美談である。
これには見た目だけでなく内容にまで映えを気にする昨今の事情や、日本賛美を聞いて気持ち良くなるという日本人のオナニー好きが根底にあると思っていて、正直、そういう話はもう止めてくれないかと個人的には思っている。

今の金継ぎ解説は、あくまでも金がカジュアルに購入できるという時代からの視点であって、そもそも、何故、器を直す必要があったのか(直さなければならない事情があったのか、と言い換えても良い)、金という貴重な資源を使う必要があったのかという根本的な問題について、当時の御恩と奉公という武家社会の世情をきちんと考えた上から記されたものではない。

よく金継ぎの話は侘び寂びの範疇で語られたりするが、本来、千利休が目指した侘び茶は、虚飾を排し極限までありのままの単純化を繰り返し、そうした物と向き合う事で精神の根源に行き着くという哲学であって、だからこその「侘ぶ」なのであろう。当時の金が持つ意味合いや重要性からしても明らかに金と侘びは相性が悪い。そう考えると果たして千利休は茶碗に施された金を景色として見たのか、金であることを良しとしたのかも甚だ疑問である。もし百歩譲って金継ぎがアリだとしても、それは、見えてはいるが無いものとして扱う金(どの色にも属していない、つまり傷は無いという暗黙の了解)であり、景色として鑑賞する意味合いは無かった。かもしれない。

個人的には、始まりの頃の金継ぎは、取り繕いとしての結果であって、金継ぎの意味合いが詫び寂びに組み込まれたのは、利休死後かなり経過してからで、織部の頃よりも後、詫び寂びがかなり形骸化し、侘び寂びは解釈の仕方で各人が自由に定義しても構わないという意識が広まってからではないかと考えている。さらに現在の「勿体ない」と金継ぎが結び付くのは、おそらく昭和に入ってから(戦後もだいぶ過ぎて平和になってから)だろう。

物を直して使い続けるという習慣は決して悪いものではないと思うが、そのために金継ぎを歴史の美談として扱うこと、殊更それを日本の美徳とすることは、どうも懐疑的である。というか、正直、あまりにも商業主義的に走り過ぎた解説だけがあふれかえっていると思う。もっと冷静に金継ぎの歴史を検証し、語るべきではないだろうか。

〔 1068文字 〕 編集

#金継ぎ #陶磁器修理 #陶芸

陶芸の粘土に使う水は、水道水よりも雨水を溜めたものが良いというのは昔から言われている。何ならボウフラや水苔が混ざっていて、寝かせる間にカビが生えるような粘土が良いという話もある(流石に生き物を練り込んでしまうのは可愛そうなので私はやったことは無い。)
実際、粘土を練って柔らかくする際には井戸水や雨水を使うと水道水よりも混ぜやすいし粘りも早く戻る感じはする(個人の感想です)。粘土が墨汁を拭き取った後の雑巾みたいな臭いになるので個人用では使ったりもするが、講習会用の粘土は水道水を無加工で入れて練っているけども。

そんなわけで天然の物に水を加える際には水の鮮度ということは余り考えたことが無かったわけだが、どうも近ごろ錆漆の乾きが悪いというか乾きが遅いような気がして、エアコンの無い作業場の暑さ(大体30~32℃)で錆漆の漆の酵素が失活しているとか、いや、まさかな。と原因が分からずにいたのだが、昨日、加水する為に使っている洗浄瓶の底に緑色のカビが発生していたことに気付く(雨水ではなく普通の水道水だが2週間くらい入れ替えていないと思う)。上に書いたように、水の鮮度に無頓着だったので水カビごときで漆の乾きは左右されないだろうと、その時は思ったわけだが一応カビを取り除いてアルコールで滅菌させてから新しい水道水を入れ直して錆を作ったら、今日、ちゃんと硬くなっていた。

で、気付いたわけですよ。生漆は夏に水球の水が腐って酵素が失活し固まらなくなるのだから、錆を作る時の水もカビが発生した水を使ったらダメじゃんか、と。
漆作業で加える水は、粘土と違って鮮度の管理は大切だったんだなぁ。
そういえば、日本では漆芸に使う水は全て軟水だと思うけど、硬水が原因で錆漆の乾きが悪いとかいうのもあったりするのかなぁ。国によっては石灰を混ぜたりフッ素を混ぜたりすることもあるし。そういうところの漆の扱いってどうなっているんだろうか。

〔 849文字 〕 編集

#金継ぎ #陶磁器修理 #どうでもいい思い付き

カゼイン漆の水没試験をしてみて分かったのは、カゼイン漆は固まるのが遅いという事だ。いや、固まるのが遅いというのは語弊がある。糊漆や接着用錆漆と同じタイミングで接着をすると2ヵ月経っても芯まで乾かず、水没試験で接着強度が落ちる。糊漆や接着用錆は2か月で耐水強度が出るのに。

最近は全く麦漆を使っていないが、そういえば麦漆も直ぐに接着すると芯まで乾かないことを思い出したので、タンパク質の入った漆は接着のタイミングが早すぎるとアカンのだなと気付いた。

そもそも硬化した漆というのは、どれくらい酸素を透過するのか?ポリエチレンなどは水を通さずとも空気は通す膜だが、漆の塗膜はどうなんだろう?何となくナイロンのように酸素を透過させなさそうな気がする。調べてみたが漆の塗膜の酸素透過率の話は全く見つからず。
例えば5mm厚の磁器を接着した場合、接着面は5㎜厚の塗膜みたいなものだ(左右から乾いていくから2.5mmの塗膜を表裏に塗ったと考える方が適切かもしれないが)。もし、平面に5mm厚で塗ったとしたら、間違いなく表層が乾いたら中は乾かない。もし漆の塗膜が酸素を透過させるとすれば、この状況でも酸化は行われて少しずつ硬くなるように思うが、そうはならないだろう。

麦漆は接着断面に塗った後、少し養生して酵素によるカテコールの結合が始まったのを確認してから張り合わせるわけなので、カゼイン漆もそういう張り合わせ方が必要なのかもしれない。
だが性質上、カゼイン漆は薄く塗り伸ばすのが難しいので、だとしたら、塗る前の漆とカゼインを混ぜる時点で、手動のクロメをする時のように出来るだけゆっくりと練り合わせ、カテコールを結合し始めてから接着断面に塗る方が良いのかもしれない。
いずれにせよ、混ざったのと、使える状態に混ぜたのは明確に違うということで、扱い方に注意が必要ということなんだろう。

〔 840文字 〕 編集

#徒然なる日記 #金継ぎ #陶磁器修理

カゼインそのものについては、東京の陶芸教室で仕事をしてた頃(20年以上前)からヒビの入った磁器を牛乳で煮ると、ヒビが見えなくなるレベルのヒビ止めが出来るという事で知っていたし、だいぶ前に旧猫田に小判には、牛乳のカゼイン止めで陶磁器を接着することは出来るけど熱湯を入れる器でやると吸水して脆くなるから基本的にお勧めできないという話を書いていた記憶がある。

その後は全くカゼインと縁が無かったのだが、少し前に、生分解プラスチックについてネット検索をしていて牛乳から作るカゼインプラスチックというのを読んで、改めてカゼインの事を調べている時にカゼインプラスチックの欠点は漆を混ぜれば何とかなるのでは?と閃いた。
その後、更に調べてみたら、漆に卵白や牛乳を入れ、タンパク質で粘度を上げるという手法は伝統技法として行われていること。漆とカゼインタンパクは分子レベルで結合し、漆やカゼイン単体とは異なる性質を持つ事。カゼイン分子はガラスに積極的に密着する性質があること。などが分かり、これは相当に凄い接着剤を思い付いたのではないかやと思ったら、伝統技法の応用として漆を主成分とする接着剤 という特許を見つけて、あぁやっぱり既にあったか、そりゃ思い付くよな。となった。

この特許では、工業用のカゼインと素黒目漆を使うことで、高純度のカゼイン漆を作るというのが主旨で、それゆえに工業的な応用展開が期待できるわけだが、私個人としては金継ぎで使用する糊漆や麦漆、漆に粘土を混ぜた接着用錆に、新たな接着の選択肢が出来れば良いので、そこまでの純度にはあまり興味が無い。美術画材としてカゼイン粉末を売っている(一応、油絵科出身なので画材についてはそこそこ詳しい)のは知っているが、金継ぎをやりたい人が手を出すには敷居が高いと感じるし、金継ぎのために自分で無脂肪乳からカゼインを抽出するのも手間である。もう少し気軽で安全なカゼインを入手出来ないかと考え、スーパーでうろうろして見つけたのが雪印メグミルクの「カッテージチーズ」であった。
スーパーで材料を買えるのは非常に手軽。しかも食用として売っているので安全面については心配無用。

雪印メグミルクのカッテージチーズの成分を見ると、タンパク質含有が17.6%。特許で作り方を説明しているカゼイン水溶液とほぼ同じ比率。ただし、その他に乳脂肪分や防腐剤が入っているので、問題は、これと漆を混ぜて特許のようなカゼイン漆が作れるのか、特許のカゼイン漆程では無くても、割と近しい強度が得られるのかということだ。そこでカッテージチーズを買い、作り方から混合比率なども含めて耐水性や接着強度を調べてみることにした。

作り方や注意点は、そのうちnote でちゃんと解説したいと思っているので、ここでは結論だけ書くが、アンモニア水を入れて溶解させたカッテージチーズに漆を重量比で100~120%混ぜると、強力なカゼイン漆接着剤を作ることが出来る。無論、耐水性や接着強度も申し分ない。特許で書かれている接着強度は麦漆よりも上だそうだ。カッテージチーズはそこまでではないかもしれないが、少なくとも麦漆相当か、それより少し上である事は間違いない。
ガラス板に塗って乾かした後、熱湯に浸けるテストでは糊漆や麦漆よりも密着耐性が高いと思われる。

そして何よりカッテージチーズを使う方法はカゼイン粉末から水溶液を作るよりもハードルが低い。

余ったら食べてしまってもいいのだが、冷凍庫で凍らせると長期保存も可能(ただし風味は落ちるので冷凍させたものは接着剤用になるけれど)。
カッテージチーズから作るカゼイン漆は、接着剤の選択しとして十分にあると考えている。

〔 1585文字 〕 編集

湿度は上がっていかないという話

No. 53 :
#金継ぎ #陶磁器修理 #修理道具

陶胎漆器の漆を乾かすための漆風呂の棚は上下2段。更にその下に素焼きの平皿を置けるスペースを作り水を入れて湿度調整するようにしていたのだが、漆風呂の気温が20℃になると明らかに上段と下段で乾きに違いが出て、上の段の陶胎漆器の乾きが悪くなると分かる。金継ぎで使う時は下の段がメインで、下の段に数時間置いて指触硬化を確認したら上の段へ移動して一晩養生という方法をとっていたので、上の段の乾きがここまで悪いということに気付かずにいた。

試しに上段と下段それぞれに温湿度計を置いて状態確認したところ、下段が気温20℃で湿度65%なのに対し上段は気温20℃だが湿度35%。棚は簀子状になっているので棚で空間が遮断されているわけではないのだが、上下でこんなに差があったのかと驚いた。それにしても問題は何故これほど上下で差があるのかという事。
いろいろ考えた結果、密閉した漆風呂内の空間では空気の循環が起こらないため素焼き皿から蒸発した水分はそのまま下に溜まっているのではいかという結論に。そこで上段の棚の下に温湿度計を張り付けて計測してみたところ湿度50%。やはり水源の周りに水蒸気が溜まり、上へ行くほど水蒸気は薄くなっていた。上段は下段から25㎝の位置、つまり水蒸気は20㎝程度しか上がっていかないということになる。

そこで上段の上に更に棚を作り、素焼き皿を下から上へ移動。20分ほど置いてから温湿度計で確認したところ、上下段の差は無く65%になっていた。
金継ぎの漆風呂というと、箱の中に濡らした雑巾などを置き、その上に簀子を乗せて漆を乾かすという方法を紹介しているものが殆どだが、この方法だと高さ20㎝程度までのものしか湿度をきちんと与えることが出来ない。実は濡らした雑巾は上に吊るす方が湿度調整には良い。
密閉した空間内では湿度は上へ移動しない。個人的にめちゃめちゃ納得する発見であった。

〔 829文字 〕 編集

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