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金継ぎの陶磁器接着の錆漆、の追記事項

No. 38 :
#金継ぎ #陶磁器修理 #ガラス用漆

2つ前のブログで陶磁器の金継ぎで接着をするときに使用する接着用錆漆の最適混合比についてを記載したが、使用する砥の粉や漆の種類によっては少し硬すぎるという話があったので、調整について追記。

陶磁器接着用錆漆は「砥の粉:漆:水=4:2:1」を基本とするが、水の量で硬さの調整が可能。最大で「砥の粉:水:漆=4:2:2」つまり漆と同じ量(重量比)まで増やすことが出来る。これはガラス板で挟んで固まり方を観察して確認したもので、おそらく、余程粒子の荒い砥の粉とか、水分の多い漆でない限り、この範囲で接着用として機能すると思う。
なお、水分量が増えると硬化も早くなるので、ある程度の手早さが必要になってくる。あまり大きな器だと断面に塗っている最中に固まり始め、結果的に張り合わせる時には硬くなってしまう可能性もあるので、その辺は数をこなして自分の作業速度から水分量を推測できるようになるしかない。無責任な物言いになってしまって申し訳ないけれども。
ちなみに水分量が漆の量を超えると、表層の漆が乾き、中の漆が乾かない状態になりやすく、厚みのある器や磁器ものでは再破損が起こる可能性が高くなるので、あまり目分量で混ぜたりせず面倒でも計量器でちゃんと計量する事をお勧めする次第。

〔 572文字 〕 編集

#金継ぎ #陶磁器修理 #修理道具 #ガラス用漆

『漆の小分けにシリンジを使うという案(ブログ№14)』 で、シリンジの有効性を書いたり、ちょっと周りに説いたりしてみたのだが完全に反応が悪い。そんなに良いなら売ったら良いじゃないかと言われたりもしたが、違うんじゃー!シリンジに入れて売っても仕方がないんじゃー!みんなが漆を気軽に小分けにして無駄なく何度も使えるところがシリンジの売りであって、使い捨てのシリンジ漆を広めたいわけではないんじゃー!
で、どうやらシリンジに漆が入っていれば使いたいが、小分けにする作業が面倒くさいという事なのだろうという結論に至る。シリコン粘土でアタッチメントを作るところがネックらしい。

ということで、シリコン粘土不要。既存のチューブをハサミで切るだけで小分け作業が出来る方法を考えたので、今回はそれを紹介しようと思う。

<チューブで漆をシリンジに小分けにする方法>

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用意するのは、ホームセンターなどで売っているゴム(またはシリコン)チューブ(以下、チューブと記載)。重要なのは穴径4mmのチューブを買う事。シリコン製の場合は厚みが1㎜で外形6㎜。近所のホームセンターは穴径4㎜はシリコン製しかなかったのでゴムだと外形は違う(ゴムの方が薄いので6㎜以下)かもしれません。値段は1mで400円位。でも使うのは5㎝なので10㎝あれば十分です。近所のホームセンターは10㎝から切り売りしていたので30㎝買いました。
シリンジは大小いろいろなサイズが有りますが、注射器のインジェクター(針の部分)規格が決まっているため、シリンジの口は全てφ4㎜です。なので、どのサイズのシリンジを使う場合でもチューブの穴が4㎜のものを選んで下さい。

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チューブを切って3㎝と2㎝にします。3㎝はインジェクター代わりに使用する部分。2㎝はシリンジのキャップになります。
インジェクターにするチューブの長さは任意で構いませんが、長すぎると吸い上げるのが大変なので3㎝前後が良いと思います。

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3㎝のチューブにシリンジの口を入れます。

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漆チューブを立て、口にチューブ付きシリンジを入れます。この時、あまり漆チューブの口いっぱいまで漆を上げてしまうと漆が溢れ出て来るので、漆チューブの漆は少し余裕を持たせておいてください。
なお、漆チューブの口が6㎜以上であることが条件になります。えー、うちのチューブの穴はそんなに大きくないわぁという方は最後に補足を記載しますので今は漆チューブに入れる事が出来たという体で説明を読み進めて下さい。

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ゆっくりとシリンジのピストンを引くと漆を吸引します。(始めてやる時はチューブの空気の体積分だけシリンジ内に無駄が出ますが、あとで入った空気は抜きます)

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適量を吸引したら、漆チューブからシリンジを引き抜きます。チューブの周りが汚れていたら爪楊枝などでコソいで漆チューブに戻すと無駄が出ません。
チューブがあるていど綺麗になったら、口を上にし、シリンジのピストンを少し引いてチューブ内に残っている漆も吸引します。
シリンジ内に空気や泡などがあるので、シリンジを軽く指で弾いて泡を消し、その後、無駄な空気を抜いて下さい。
作業を終えたら、チューブをゆっくりとシリンジから外してください。

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2㎝に切ったチューブで蓋を作ります。クリップを用意します。(止められれば良いのでセロテープでも良いです)

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チューブをクリップで止めます。(セロテープの場合はチューブを折り曲げてセロテープで巻いて下さい)
シリンジのキャップの完成です。

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シリンジの口に嵌めると密閉出来ます。
これで小分け作業終了です。
キャップを抜く時は、出来るだけ口に近い部分を持って抜きます。口から遠いところを持つと抜け難い上に、抜けた時に漆が飛ぶことがありますから注意しましょう。

<補足事項>

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※補足1
小分け用に使ったチューブは使い捨てでも構いませんが、綿棒で中を拭くと再利用出来ます。綿棒に少し揮発性油を付けて拭くと綺麗な状態で保管できます。
シリコンは非常に強い素材なので、加水分解してベトベトにならなければ結構何回も使えると思います。

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※補足2
2回目以降シリンジに再度小分け作業する時は、少しシリンジ内に漆が残った状態でチューブの口ギリギリまで漆を出しておいてから吸引するとチューブ内の空気を引き込まずに済みますので、空気抜きの無駄な手間が省けます。

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※補足3
漆チューブの口が6㎜以下の場合ですが、シリコンチューブはガラスチューブのように温めて伸ばすのが難しく、またテーパー型のインジェクター代用品を探したのですが見つからなかったので、Amazonなどで『インジェクタ』で検索して細いものを購入するのが良さそうです。
写真のインジェクタは万年筆のインク詰め替えに私が使用しているものですが、金属製は値段が高く、穴も小さいので使い捨てるにはコスパが悪いためプラスチック製(www.amazon.co.jp/dp/B07YYN5M6R/ref=cm_sw... )を使用するのが良いと思います。
インジェクタの場合、小は大を兼ねるのでチューブを使わずインジェクタを買えば良いだけじゃないかというのはごもっともですが、今回はホームセンターでも買える手軽さとコストを優先して紹介いたしました。

〔 2281文字 〕 編集

#金継ぎ #陶磁器修理 #ガラス用漆
 
今回の話は、陶磁器の金継ぎで接着をするときに使用する接着用錆漆の最適混合比についてなのだが、旧ブログ(nekotani.lix.jp/diary/)を知らない方にはいきなり接着用錆漆と言われても「?」だと思うので、接着用錆漆に至る経緯(ダイジェスト)を先に書いておこうと思う。これまでの経緯が分かっている方は、途中をすっ飛ばして結論だけ読んで頂ければ問題ないです。

<接着用錆漆が出来るまで>

陶磁器の金継ぎの接着に最低限必要なのは漆だけであるというのは、案外、見落とされがちだ。理由は簡単で、世の中に出ている金継ぎハウツー本のほとんど全てに接着のための糊漆や麦漆の作り方が書かれているから。私が知る限り漆だけで付ける話は、岩波文庫「うるしの話 松田権六著」に「漆でいちばん丈夫に接着させようとする場合には、優良な漆で「クロメ」と「ナヤシ」のかかった乾燥力の早いものを選んで、接着すべき物体の両面に塗り、完全乾燥の一歩手前というところで両面を接着させる。これがもっとも効果的な接着方法であろう。」という一文しか見た事が無い。
どうして接着のため漆に混ぜ物をするのかという理由については、案外、書いていない。いろいろ考えた末、大きく2つの理由に拠るのではないかと結論付けた。
1.接着の初期保持力を上げるため
2.浸透力が高い場合の対処
漆が固まるまでにズレないための粘着力を初期保持力と言う。昔はどのようにして破損したものを固定したのか不明だが、映画「初恋のきた道」で出てくる茶碗の修理の件で(映画は金継ぎではなくカスガイ留めという修理だが)器を荒縄で巻いて固定しているので、おそらく金継ぎも同様の方法を使ったのではないかと考えられ、それゆえに初期保持力の強い混ぜ物が必要だったと思うのだが、現代では糊の発達により、接着後の固定にはマスキングテープや養生テープが用いられるようになった。そのため初期保持力はこれらテープに依存する事になり、実は強い初期保持力はあまり必要がなくなっている。
よって、2の浸透力との問題が重要になる。陶器接着の場合、特に焼成温度の低い楽焼などは、漆を塗っても素地が吸い込んでしまって接着断面に漆が残りにくい。アロンアルファに液状とゼリー状があるのと同様、接着断面に漆を残すためには浸透しづらい物を混ぜてやればいい。そこで米粉や小麦粉が必要になってくるわである。

だが、ここで問題が出てくる。米粉や小麦粉は耐水性ではあるが温水に接すると軟化してしまうという欠点がある。年に何件か、他で修理をしたら取れてしまったとか、自分で本を見ながら直したが取れてしまったという再修理依頼が来るのだが、これは概ね米粉や小麦粉の混合の際の問題による。そこで、温水でも接着力が落ちない混ぜ物はないものかと、いろいろなものを漆と混ぜてガラス板に塗り、沸騰した湯に入れて剥離するまでの時間を計ってみたところ、最も強かったのが砥の粉を混ぜた錆漆であった。
やはり陶磁器のような無機物の接着には米や小麦のような有機類ではなく無機類を使うのが最善なのか、と分かってみれば実に至極当然な話である。
しかし、パテに使用する錆漆では少し硬すぎて破片数の多い器の修理では接着誤差が大きくなり不向き。ならば混合比率を変えて対処すれば良いのだろうという結論に至る。

と、ここまでが、旧ブログで接着用錆漆が生まれたダイジェストである。

<接着用漆の混合比>

ということで本日の主題、混合比の話。

結論から言うと、混合比は

砥の粉:漆:水 = 4:2:1(重量比)

である。砥の粉の半分が漆、漆の半分が水である。覚えやすい。ここへ至るまで、いろいろな比率で試験して来たが分かってしまえば実に美しい比率。陶器も磁器も同じ比率で問題ない。

実践的な話をすると、この比率ならばどういった順番で混ぜても構わないのだが、私は砥の粉と水を混ぜてから、漆を入れて練るようにしている。理由は、私の場合、砥の粉に「黄」または「赤」の含鉄砥の粉を使っており、これが漆と反応して練っている間に黒く変色する事で混合進度を視覚的に確認出来るようにしている。なので、砥の粉と水を混ぜてしまってから、漆を混ぜて色の変化を見ながら使い時を探っていくわけである。一応、目安は黒くなったら。黄土色から黒く変色するまでは練る作業を続ける。
パテ用の錆漆は保存が出来ないが、接着用錆漆はサランラップで包んで空気を抜いておくと、結構、保存が効く。2週間くらいは保管できるように思う(その前に使い切ってしまうので保管期限までは試験していない)。空気の抜き方は、サランラップで挟んでからクッキングシートを乗せてヘラで押す。以前にブログに写真付きで説明した通り(nekotani.lix.jp/diary2/tegalog.cgi?posti...)である。

ちなみに、パテに使用する錆漆の混合比率は「砥の粉:漆:水 = 60:20:15」。少しややこしい比率ではあるが、接着用漆の比率に15を掛けると「60:30:15」なので、実は接着用とパテ用の錆漆は漆の量が少し違うだけで砥の粉と水の比率は同じだったりする。漆が10違うだけなので、慣れてくれば残ったパテ用錆漆に少し漆を足して接着用にしたり、接着用錆漆に砥の粉を足してパテにしたりすることも可能なのかもしれないが、私は常に試験も兼ねており比率至上主義なのでやった事は無いが、趣味で金継ぎをやっていて大量に余ってしまって勿体ないなぁという場合は、錆漆の重さを計って重量比で計算すれば、加える漆や砥の粉の量は分かるので、そうして作っても良いのかもしれない。この辺は自己責任で。

〔 2400文字 〕 編集


#金継ぎ#ガラス用漆 #陶磁器修理

少し前にコーヒーフィルターで漆を漉すと滑らかで塗りやすい漆になるよ、という話を書いた。その際、漆と弁柄を混ぜる時にサランラップを使用していたのだが、もしかしてクッキングシートを使った方が混ぜやすいのではないかと閃き、試しに使ってみたら混ぜる時にも丈夫だし、漆を漉す時にも押し出しやすいという事で、即、サランラップからクッキングシートに切り替えた。サランラップをクッキングシートに替えただけなので、写真で解説する必要もないかなと思ったが、一応、写真と簡単な補足だけ書いておこうと思う。
ちなみに、どうしてクッキングシートを思いついたのかだが、少し前から破片接着後の固定をマスキングテープからグルーガンに替えて試しているのだが(これについては、もう少し数をこなしてから書こうと思っている)、グルーガンが温まってきた時にグルーがダラ~っと垂れる事があり、この垂れたやつを机に付かないようにする方法は無いかと調べていて、クッキングシートにはグルーが付着しないと分かり、グルーガン作業の時には机にクッキングシートを敷くようにした時に、漆を混ぜるのもこれで良いじゃん、と思ったわけである。
写真のクッキングシートは100均(ダイソー)製品を使用している。マツモトキヨシのクッキングシートも使ってみたが、どちらも使い勝手は全く同じなので、クッキングシートであればどこのメーカーでも使用可能だと思う。ほとんどのクッキングシートは表裏にシリコーンコーティングしてあるので、どちらの面を使っても問題ないが、もしかしたら片面のみのシートがあるやもしれないので、その場合は、シリコーンコーティングのある面で漆を混ぜるようにして下さい。



クッキングシートに漆と弁柄を出します(比率は任意ですが、私は漆100に対して弁柄40(重量比)にしています)。




クッキングシートの上でよく混ぜます。




上からコーヒーフィルターを乗せて、3つに折ります。
その後の押し出し作業からは、前回の説明と同様です。

〔 888文字 〕 編集


#金継ぎ#ガラス用漆 #陶磁器修理

個人的に、錆漆と金蒔きの下地に使う赤漆(弁柄漆)は鮮度が大切だと思っている。実際、作り立てのものは扱いやすいので、当たらずとも遠からずだと思うが。
趣味で金継ぎをしている人でも、錆漆は都度作っていると思うが、赤漆はチューブを使う人が割と多いのではないかと思う。最後の金蒔き工程しか使わないのにいちいち漉すのが面倒とか、作ったけど固まってしまう事が多いとか、そういう感じじゃないかと推察する。更に、漆漉しでよく使う吉野和紙が案外入手しにくかったり値段が高めという事もあるかもしれない。

そこで、今回は、私がやっているコーヒーフィルターの漆漉しをご紹介。コーヒーフィルタで漆を漉しているというと、大体、冷たい目で見られるか、漆を何だと思っていると説教されるのだが、珈琲が綺麗に漉せるのだからコーヒーフィルタで漆を漉しても問題ないやろ?と思うし、実際、非常に滑らかな良い赤漆が作れる。やり方を詳しく書いたので実際にやってみて判断して頂きたい。
本当は動画のほうが分かりやすいと思うのだが、動画編集はよく分からないので写真と説明書きにいたします。(動画編集が得意な人は、自分で動画撮影と編集をやって公開して頂いて問題ありません。)

<コーヒーフィルタで漆を漉す>

使用するのはマツモトキヨシのコーヒーフィルターです。
マツキヨ限定ではないのですが、マツキヨのコーヒーフィルタは値段の割に紙質が良く、かなり丈夫なのでお勧めです。ちなみにマツキヨのフィルタは内側が毛羽立っていて外側がツルっとしている(普通は内側がツルっとしていて、外側が毛羽立っている)これが良い味を出すので、私はコーヒードリップのフィルターとしても常時使ってます。
あ、そうそう。マツキヨのコーヒーフィルターはカリタ102のサイズしかありません。もっと小さいのが欲しいとか大きいのが欲しいという方は、別なメーカーを探して下さい。


窯内

フィルターを切ります。使用するのは1枚だけなので、コーヒーフィルタ1つで2回分になります。1枚は保管しておきましょう。


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毛羽立っている方を上(自分側)にして置きます。


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まず、フィルタを半分くらいから上下に折って。

窯内
窯内

次に、大体3等分になるよう左右から折り曲げます。


窯内

こんな感じで折り目を付けておきます。


窯内

サランラップの上に漆と弁柄を用意します。
私は金継ぎ作業は、ホームセンターで買ったタイルを長年愛用しているのでタイルの上にサランラップを乗せていますが、普通に机の上にサランラップ広げて頂ければ問題ありません。
なお、『サランラップ』と敢えて固有名を出しているのは、経験上、サランラップが最も強度が高く扱いやすいからです。クレラップや安いラップは薄手なので、この作業ではサランラップがお勧めです。
漆の分量は任意ですが、あまり少ないとフィルタに吸収されて無くなってしまうので、0.5g以上はあった方がよいと思います。
弁柄も基本的には任意ですが、私は漆の量の40%(重量比)を目安にしています。あまり多いと漆の伸びが悪くなるし、少ないと金粉の沈殿が大きい感じがするので。

窯内

漆と弁柄を混ぜる作業は、ホームセンターの木材売り場で買った細切りの竹を切って、紙やすりで先を研いで使っています。器の断面に接着用の漆を付けたり、欠損に錆漆を充填する時にも使える万能棒です。
1本買って切ると10本くらい取れますが、まだ2本しか使っていないので全部使い切れずに終わるような(笑)


窯内

弁柄のダマが大体見えなくなるまで混ぜます。後で漉すので多少プチプチ残っていても大丈夫ですが、フィルタに残る弁柄が多いと勿体ないので出来るだけ混ぜて下さい。
混ぜ終わったら、先ほどの折り目を付けたコーヒーフィルタを用意して。


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弁柄と混ぜた漆の上に、折り目の中心と合うようにして乗せます。この時、コーヒーフィルタの毛羽立っている方が漆側になります。逆にすると、漉す時に毛羽立った繊維が入る可能性があるので、これは間違えずに置くようにして下さい。


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この後、漆を漉しますので、もう一枚サランラップを敷いて頂き、その上で、サランラップごとコーヒーフィルターを折ります。折り目を付けてあるので、折り目に沿って折ればOKです。
軽く折る程度なら、漆は染みてきますが漏れる事はないので急がずゆっくり行って下さい。


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折り終わった状態がこれです。ケーキの生クリーム押し出すやつみたいな感じです。
一人で作業しながら写真を撮る関係上、洗濯ばさみで留めていますが(留めないと開いてしまうので)、普段作業する時は洗濯ばさみで留める必要はありません。


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そうしたら、コーヒーフィルタをヘラでゆっくり押して漆を漉します。
なお、漆漉しは兎に角ゆっくりのんびりが基本です。漆は粘性がありますし、コーヒーフィルターの紙の隙間は非常に小さいので最初はなかなか出てきませんが、ゆっくりと力を掛けながら押していると、そのうちジュワァ~っと出てきます。出てきてからもグイグイ押さず、漆が自然と出てくるのを待ちましょう。量によりますが、少量でも全部漉せるまで5分くらいはかかります。ヘラは漆を押し出すというよりも、逆戻りしないように抑えているという感じです。
漆は5分10分では乾かないので、滑らかな赤漆になるよう、ゆっくりと行って下さい。


窯内
窯内

ヘラが先端までいったら、裏に返してもう一度同じようにやったら漉す作業は終了です。
それから重要なことですが、ヘラの移動は1回です。ヘラが先端まで行った後に勿体ないからと残っている漆を2度3度とヘラで押してしまうと、ダマの弁柄が出てしまう事があるので1番絞りで終わりにしてください。2番絞り3番絞りはありません。


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漆漉しが終わったら、漆が乾かないようにサランラップで包みます。


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私は、出来るだけサランラップ内に空気が残らないように100均で買ったシリコンゴムのヘラの薄い部分をを切って加工したやつで空気を押し出すようにしています。


窯内

空気が押し出せたら、小さくまとめておきます。
きちんと空気を抜いてあれば、かなり長期間固まらずに保管できます。もちろん、早めに使い切る方が良いとは思いますが。
また、少量になったら新しい赤漆と混ぜて使うことが出来ますが、その時は漉し終わった漆と混ぜず、弁柄と混ぜ終わった赤漆と混ぜて再度コーヒーフィルタで漉して下さい。


余談になりますが、コーヒーフィルタ漉しをするまでには、キムワイプとかモノタロウのラボワイプとか、紙の眼鏡拭きとか、もちろん、ろ紙も使ったり、いろいろ試しましたけど、漆を漉すのは今のところマツキヨのコーヒーフィルターがベストなようです。もっと良い紙が見つかったら、またブログに書きます。

〔 2853文字 〕 編集

漆の小分けにシリンジを使うという案

No. 14 :

#金継ぎ #ガラス用漆 #シリンジ #どうでもいい思い付き

前回このブログが実はディープウェブになっていると判明しましたが気にしませんよ。辿り着く人だけが見られればいい。という事で、今回はネットを検索した限りでは誰もやっていない漆の小分けの話。

仕事柄、ほぼ毎日漆を練ったり塗ったりしているが、そもそも金継ぎで使用する量というのはたかが知れている。たかが知れているけれども、それでも漆は樹木の貴重な樹液、つまり献血の血液みたいなものだから出来ることなら1滴たりとも無駄にはしたくない。それ故に、接着用の漆や錆漆の最適混合比というのをブログ( nekotani.lix.jp/diary/index.php?page=18 )に掲載して、出来るだけ必要量を的確に作れるよう思案しているわけである。
だが、チューブの漆は、ちょっと押す加減を間違えると多めに出てしまったりする。しかも、金属製のチューブの場合、出し過ぎを戻すのは結構な難度である。漆がラミネートチューブで売っていれば多少は戻したり、また、最後の1滴まで出し切る事が可能だと思うが、私が知る限りにおいてラミネートチューブの漆は見たことがない。
それから、大きいチューブを買ってそのまま使っていると、どんなにエタノールで綺麗にしながら使ってもチューブの口に少しずつ漆が固着してきて蓋が開きにくくなるし、そもそも都度、エタノールで拭くのも漆が勿体無いので、私の場合はネットで小さめの金属製の空チューブを購入して、漆は小分けにして使っているのだが、空のチューブは意外と高かったり、届いてみたら潰れていて規定量が入らなかったりと案外面倒。

そうした諸々の問題を何とか打開出来ないものかと常々考えていたのだが、ある日ふと思いついた。シリンジ(注射器の筒)で漆を管理すれば、規定量を出すのも、出し過ぎを戻す事も容易ではないか。というわけで、早速、シリンジを購入。実際にシリンジで漆を管理出来るのか試してみた。
で、結論から言うと、シリンジで漆を小分けにする作戦はかなりオススメ出来る。むしろ金継ぎ用の漆はシリンジで売って欲しいと思うほど。空チューブよりシリンジの方が安いし、空チューブのように使い捨てではなく使い回しが出来るし、最高。

ただし!1点だけ難関がある。それは漆をチューブからシリンジに移す事。漆は粘度が高く、細いシリンジに入れたり密閉するのに一苦労。そこで出来るだけ簡単にチューブの漆をシリンジに移せる方法が無いものかと考え、やっと良い方法を見つけたので公開させて頂く。写真を見れば大体、やり方は分かると思うので簡単な説明と注意点だけ付けておく。


シリンジ

用意するのは、テルモのシリンジ。テルモじゃないとダメですか?という疑問があると思うが、テルモでお願いします。実は最初に近所のホームセンターで押出棒にゴムの無いシリンジを買ったのですが、まぁ押出し難いし引っ張れないし扱いにくいことこの上ない。ですので是非とも押出がゴムのテルモのシリンジでお願いいたします。ちなみに私はAmazonで試しに2.5ml(10本で400円)を買いましたけど、ちょっと小さすぎました。でも金継ぎをする頻度でも変わるので、あまりやらない人は2.5mlで十分かも。


シリコン

それから、ダイソーで売っている熱湯で柔らかくするシリコン粘土。樹脂加工が趣味の人は知っていると思いますけど、いわゆる型取り用シリコン。これで漆が漏れないようにチューブとシリンジを繋ぎます。それと、シリンジ用の蓋を作ります。




では、始めましょう。まず、漆のチューブの口に、空のシリンジの先を突っ込みます。チューブが下、シリンジが上です。逆にするといきなり漆が出ますから絶対にこの配置で。




次に、温めて柔らかくなったシリコン粘土でチューブとシリンジが抜けないよう密着させて塞ぎます。ここで隙間があると、当然、漆が漏れてきて大惨事になるのでしっかりと密着させて下さい。ちなみに、セロテープなどで止める事も出来ますが、テープは後で外すのが大変なので私はシリコンをオススメ。シリコンだと冷えて固まれば簡単に外せます。


蓋

シリコンが冷えて少し硬くなってきたら、チューブが上、シリンジが下になるようにしてから、ゆっくりとシリンジの棒を引っ張って漆をシリンジに吸い込ませます。
ひっくり返さずシリンジが上のまま吸えるかと思いましたが、上手く吸えなかったので、ひっくり返した方が良いと思います。

適量を入れたら、チューブが下、シリンジが上になるように戻し、ゆっくりとシリコンからシリンジを引き抜き、シリンジの口をエタノールで綺麗に拭きます。シリンジの口は細く、棒を押さない限り漆が出てくることはないので焦らずゆっくり作業して下さい。


蓋

最後に、温めて柔らかくしたシリコン粘土を口元に押し付け蓋にして終了。蓋にするシリコンは多めに使う方が密閉性が高く、また、取り外しも楽です。

あ、チューブのシリコン粘土も取り除いてチューブの蓋を閉めるのをお忘れなく。
ちなみに、チューブとシリンジを繋ぐのに使ったシリコンのアタッチメントは、同じチューブとシリンジであれば何度も使いまわしできますので保管しておきましょう。

<追記>
シリンジ漆の使い方が分からない方がいらっしゃると困るので。
シリンジに入れた漆を使用する時は、シリンジを上に向けてから軽く棒を引き、それから少しずつ棒を押して口元の空気を抜き。最後に下を向けて適量を出します。いきなり押すと漆が飛び出る事がありますので注意して下さい。

〔 2333文字 〕 編集

『 冬のガラス用漆ってどうなのよ 』

No. 1 :

#金継ぎ #ガラス用漆

3ヶ月ぶりにこんにちは。最初に書いておきますと、ガラス用漆その後の話です。

いい加減に冬も終わりというか、日中は夏日になってガリガリ君を食べたりしている4月。予報では今日の午後は30度になるそうで。ちなみに、現在は深夜2時ですが寒くてファンヒーター付けていたりする。6月だと、そういう日もあるけど4月じゃん、まだ。
まぁ、それはともかく、もう、真冬の状態にはならないと思うので、以前に、冬場のガラス用漆のリポート書くという約束を果たそうと思う。

話の前提として、私が仕事をしている場所を書いておく必要があるだろう。栃木のほぼほぼ中心。ここは内陸性気候に区分されている。11月を過ぎると日中の気温が10度以下、夜〜明け方は氷点下になり、水を入れて外に出したバケツには1cm前後の氷が張る。そんな感じの土地だ。しかも、それだけ寒いなら冷気が入らないしっかりした建物を作るべきだと思うが、残念ながら、当家は家の中でも吐く息が白いという状態。当然、仕事場もそういう環境だ。加えて、冬は湿度が30%まで下がる。しかも絶対に50%を超えない。いや、40%も超えるのを見ることすら稀だ。部屋が寒くなるということは、当然、気密性もあまり高くないわけで、常時、湿度30%位のところで生きている。
と、長々書いたが、要するに冬は漆作業に向かない環境だ。部屋に置いた漆は1ヶ月置いても全く硬化しない。だが、逆に、全く漆が硬化しない環境ゆえ、硬化条件を細かく調べることも出来ると言える。

そういうわけで、ガラス用漆の硬化条件はどの辺りなのか調べてみた。いよいよ本題へ入る。
結論を書くと、ガラス用漆が硬化する最低温度は18度、湿度48%だった。ただし、この条件だと硬化まで5日かかる。これよりも温度、湿度のどちらかが下がると全く硬化しなくなる。ちょっと数値が下がるのだから、時間を置けば硬化しそうなものだが、硬化しなくなる。なので、最低温湿度で漆を扱うのは非常に危ない。仕事として成立するのは、温度が20度、湿度が50%まで上げる必要があり、これだと3日で硬化する。
つまり、気温20度、湿度50%の状態を3日キープ出来る漆ムロがあれば、ガラス漆の金継ぎ仕事は出来ることになる。実際、それでやってるし、私。

それから、漆を硬化させるには、気温25度以上、湿度80%以上が必要というのは、必ず漆ハウツー本に書いてある呪文だ。しかし上に記載したように、そこまでの温度と湿度は必要ない。というか、ガラス漆の硬化を調べていて気付いたのだが、呪文は最も早く漆が硬化する条件であって、実は、仕事として考えると、漆は呪文よりも下の数値で硬化させた方が結果的に扱いやすい。というのも、最適化条件に近づくほど皺も出やすくなる、つまり作業がシビアになってくる。勿論、適切な塗り方であれば問題ないし、プロなら仕事をする時の温度と湿度を見て、厚みを調整して塗るのが当たり前だが、趣味で漆塗りをする人はそこまで経験値が上がらないことが多いし、加えて、大抵、厚く塗る。その時、最速硬化条件の温湿度(特に湿度が大切)だと皺が出てしまう。もっとゆるやかに硬化させた方が結果的に失敗しにくくなる。
温度が20〜25度、湿度が50〜80%の範囲であれば硬化するので、あとは、各自の塗り癖に従って調整したら良い。と突き放すと文句を言われそうなので、大体の目安として書くと、温度が25度。湿度が60%辺り、中1日置いて作業出来る程度で作業を進めていくと、間違って少し厚塗りをしてもそこそこ皺が出にくいので、非常に仕事しやすい(だから厚く塗っても良いという事ではないので、そこは取り違えないように)。

ってことで、冬の状態からのガラス用漆の扱いについて。でした。
また気になったことがあったら、追加していきたいと思いますので。

〔 1618文字 〕 編集

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