猫田に小判 -新館 -

Last Modified: 2024/04/14(Sun) RSS Feed

No.53

湿度は上がっていかないという話

No. 53 :
#金継ぎ #陶磁器修理 #修理道具

陶胎漆器の漆を乾かすための漆風呂の棚は上下2段。更にその下に素焼きの平皿を置けるスペースを作り水を入れて湿度調整するようにしていたのだが、漆風呂の気温が20℃になると明らかに上段と下段で乾きに違いが出て、上の段の陶胎漆器の乾きが悪くなると分かる。金継ぎで使う時は下の段がメインで、下の段に数時間置いて指触硬化を確認したら上の段へ移動して一晩養生という方法をとっていたので、上の段の乾きがここまで悪いということに気付かずにいた。

試しに上段と下段それぞれに温湿度計を置いて状態確認したところ、下段が気温20℃で湿度65%なのに対し上段は気温20℃だが湿度35%。棚は簀子状になっているので棚で空間が遮断されているわけではないのだが、上下でこんなに差があったのかと驚いた。それにしても問題は何故これほど上下で差があるのかという事。
いろいろ考えた結果、密閉した漆風呂内の空間では空気の循環が起こらないため素焼き皿から蒸発した水分はそのまま下に溜まっているのではいかという結論に。そこで上段の棚の下に温湿度計を張り付けて計測してみたところ湿度50%。やはり水源の周りに水蒸気が溜まり、上へ行くほど水蒸気は薄くなっていた。上段は下段から25㎝の位置、つまり水蒸気は20㎝程度しか上がっていかないということになる。

そこで上段の上に更に棚を作り、素焼き皿を下から上へ移動。20分ほど置いてから温湿度計で確認したところ、上下段の差は無く65%になっていた。
金継ぎの漆風呂というと、箱の中に濡らした雑巾などを置き、その上に簀子を乗せて漆を乾かすという方法を紹介しているものが殆どだが、この方法だと高さ20㎝程度までのものしか湿度をきちんと与えることが出来ない。実は濡らした雑巾は上に吊るす方が湿度調整には良い。
密閉した空間内では湿度は上へ移動しない。個人的にめちゃめちゃ納得する発見であった。

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