猫田に小判 -新館 -

Last Modified: 2025/04 RSS Feed

No.106

#徒然なる日記 #どうでもいい思い付き #金継ぎ

金継ぎについて質問を受けたのがきっかけで、そこからウルシオールが酸化して固まるというのを改めて勉強して知識を整理しておかないとアカンかな。と痛感し、ネットで漆関連のサイトを見たり、ネットで見られる範囲の論文を読んだりしていて、漆が固まるのに湿度が必要つまり水蒸気が必要だという見解は共通して登場するものの、では実際に水蒸気がどういった使われ方をしているのかという具体的な話になると殆ど説明されていない感じがしなくね?という事実に気付く。

「酵素がウルシオールの酸化に水蒸気を利用している」とか、「水から酸素を取り出して使っている」という説明は見るのだが、では、H2つとО1つはどのように分解されて、それぞれがどういう経緯で使われたり放出されたりする等の、そういう話が見当たらない。結構、いろいろ見たのだが、カテコールが酵素の脱水素作用で繋がるとか、側鎖とカテコールが繋がるという話は多いのに、そこに水が介在するという話が出てこない。

漆は相対湿度が60%を下回ると恐ろしく乾かないというのは事実で、だから冬は漆風呂の管理とか大変なわけだから水蒸気が何かの役に立っていることは間違いない。だが、漆の方向から調べても結論が出ないということで、仕方がないから湿度と酸素の関係から更に検索範囲を広げてサイトをあたっていたところ、湿度が上がると酸素透過が高くなるという話を見付けた。アドレスから元をたどってみた所、三菱ケミカル株式会社が作成しているエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂「ソアノール」という樹脂膜に関するサイトで、その中の、物を包む事についての基礎知識の8番の酸素透過係数の湿度依存性というPDFだった。

三菱ケミカル株式会社 ガスバリア講座のサイト
www.soarnol.com/jpn/solution/

8番だけ読んでも用語がよく分からないので1番から読み直してみたところ、要するに、ヒドロキシ基(OHのでっぱり)を持つ高分子は、相対湿度が60%を超えると高分子の隙間(穴っぽこ)に侵入した水分子が増えて隙間を広げる。そのため高分子膜は相対湿度が上がると酸素の透過度が高くなる。という事なのだそうだ。

そうえいば、水というのは世界最強の濡れ、つまり隙間侵入能力を持っているから、とにかく接着の邪魔になるというのは接着剤の本で読んだことがある。そして、ウルシオールのカテコールはヒドロキシ基を2つ持っていて、そのうちの1つが酵素によって脱水素されて酸化するが、もう1個ヒドロキシ基が残っていれば、漆が乾き始めた時の表面って、ヒドロキシ基を持った高分子の極薄膜って事になるんじゃないのか?それが湿度60%を超えると、水蒸気によって隙間が広がり酸素が透過して、極薄膜の下の酵素が奪った水素と結合し水として放出することが可能になり、酵素が活性化する、と。そんな風に推測する事が出来る。

つまり、水蒸気は分解されたり結合に使われているわけじゃなく、耳鼻科で鼻の穴を広げて薬噴霧したりするときに使う医療用の拡張器具みたいなことに使われているという事なのか?!って話。

実際のところ、ウルシオールの薄膜がガスバリア講座の高分子膜と同じ扱いに出来るのかは私の頭では限界があって恥ずかしい所よく分からない。こういうのは専門家がお高い機材を使って調べたり、難しい計算をして統計的に妥当な値なのか導き出す必要がある分野なので、市井の金継ぎ屋がどうこう出来る話じゃないから、あくまで推測の域を出ないのだが、水蒸気の使われ方がほとんど見当たらない以上、期待値高めの推論にはなるような感じがする。

ちなみに、湿度と高分子の隙間と酸素透過の関連グラフを見ると、相対湿度30%前後が一番低く、酸素が透過しない。ということは、仮に水蒸気が漆膜の隙間に関与しているなら、相対湿度30%辺りで漆を保管すると最も酵素が酸素と結合しにくく適値だという事にもなる。湿度は低ければ低いほど保管に良いということにならないし、グラフ通りだったとしたら湿度0%で漆が乾く可能性も考えられるわけだから、これはこれで結構衝撃的な話になったりしそうな感じもする。

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〔 1794文字 〕 編集

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