No.104
柿渋は下手物ではないという話
No.
104
:
Posted at
2024年09月27日(金)
#どうでもいい思い付き #徒然なる日記 #柿渋
渋い梨をどうすれば食えるか調べているうち、渋柿に含まれるカテキン(渋柿ポリフェノール)に興味が出てきた。
だいぶ昔に柿渋を買ってはみたものの強烈な〇ンコ臭で断念したことを思い出したが、今は無臭の柿渋があるということで、またちょっと気になってきて無臭柿渋を買ってみたところ本当に無臭で驚いた。
せっかく買ったのでネットで柿渋の使い方を調べていて、もしかしたら陶胎漆器に塗ったら良い感じになったりするのかもしれないと閃く。
実は、少し前、試験的に日常使いしていた陶胎漆器の飯椀に米粒が固着していたため水を付けて爪でカリカリやっていたら、表面の漆が素地もろとも剥げるという基材破壊を起こしてしまい、やっぱりもう少し下地から何とかしないと安心して使うのは難しそうだと実感したので、それも兼ねて素焼き素地に柿渋を塗ったらどうかと気付くのは自然な流れであろう。
テスト用の素焼き素地はたくさんあるので、柿渋を水で薄めて濃さを変えながら刷毛で塗ってみる。1回塗ってもほとんど吸い込まれてしまい表面に柿渋は残らない。瓶から出した状態の柿渋であれば2回塗ると表面に極薄い塗膜が出来て光沢が出てくるのだが、2倍に希釈すると5,6回塗ってやっと吸い込みは止まってくるが塗膜のような光沢が出ることはない。陶胎漆器の下地に使うなら希釈せず塗る方が良いのかなと思ったが、試しに素地を指で弾いてみたところ音が全く違う。希釈なしの2回塗りは塗っていない素地と似たような音だが、希釈して何度も塗ったものは明らかに音が高く、締まった素地の音がする。
それで、柿渋というのは塗膜として使うものではなく、浸み込ませる事で素地を改善するという使い方をするものなのかと気付いた。
柿渋は漆と違い水性溶剤だ。それゆえによく浸透する。水分が無くなるとカテキンが酸化によって結合していく。その際に素地の成分も結び付けたりするのだろう。だから素地が締まった音になる。漆も柿渋もフェノール樹脂のオリゴマーが結びついてポリマーになるのは同じだが、結合する場所が違うというわけだ。
昔から漆芸では、柿渋で作った下地を「渋下地(しぶしたじ)」と呼び、漆の下地の代用品とか、安価で作るための下手物とか、要するに見下される扱いをされてきた。
私も、そういうものなのかと信じ込まされていた節があるわけだが、いや、ちょっと待てよ。これは柿渋本来のポテンシャルを見誤った考え方なのではないかと気付いた。
どちらも塗料というジャンルで見ると、確かに漆に比べれば柿渋の塗膜は弱いし、撥水性はあるにせよ長時間の耐水性までは無いかもしれない。だがそれは塗膜という土俵においての話であって、柿渋は本来、漆のような厚い被膜を作る使い方ではなく、少しずつ浸透させ胎を作るという全く異なるジャンルでこそ実力を発揮するものではないかと思う。
塗って浸透するまで待ってから、表面を布で乾拭きする。それを繰り返し、表面にうっすらと艶が出てきた状態で止める。塗膜にするのではなく、その前で完成とする。これが本来の渋下地のポテンシャルを最大限に発揮させる使い方という事になるような感じがする。
ちなみに、表面に艶が出ても止めずに塗り続けると、柿渋が弾かれて玉状になり斑が出て来るので見た目が汚いのと、著しく接着性が落ちて剥離し始めるからやらない方が良い。
渋い梨をどうすれば食えるか調べているうち、渋柿に含まれるカテキン(渋柿ポリフェノール)に興味が出てきた。
だいぶ昔に柿渋を買ってはみたものの強烈な〇ンコ臭で断念したことを思い出したが、今は無臭の柿渋があるということで、またちょっと気になってきて無臭柿渋を買ってみたところ本当に無臭で驚いた。
せっかく買ったのでネットで柿渋の使い方を調べていて、もしかしたら陶胎漆器に塗ったら良い感じになったりするのかもしれないと閃く。
実は、少し前、試験的に日常使いしていた陶胎漆器の飯椀に米粒が固着していたため水を付けて爪でカリカリやっていたら、表面の漆が素地もろとも剥げるという基材破壊を起こしてしまい、やっぱりもう少し下地から何とかしないと安心して使うのは難しそうだと実感したので、それも兼ねて素焼き素地に柿渋を塗ったらどうかと気付くのは自然な流れであろう。
テスト用の素焼き素地はたくさんあるので、柿渋を水で薄めて濃さを変えながら刷毛で塗ってみる。1回塗ってもほとんど吸い込まれてしまい表面に柿渋は残らない。瓶から出した状態の柿渋であれば2回塗ると表面に極薄い塗膜が出来て光沢が出てくるのだが、2倍に希釈すると5,6回塗ってやっと吸い込みは止まってくるが塗膜のような光沢が出ることはない。陶胎漆器の下地に使うなら希釈せず塗る方が良いのかなと思ったが、試しに素地を指で弾いてみたところ音が全く違う。希釈なしの2回塗りは塗っていない素地と似たような音だが、希釈して何度も塗ったものは明らかに音が高く、締まった素地の音がする。
それで、柿渋というのは塗膜として使うものではなく、浸み込ませる事で素地を改善するという使い方をするものなのかと気付いた。
柿渋は漆と違い水性溶剤だ。それゆえによく浸透する。水分が無くなるとカテキンが酸化によって結合していく。その際に素地の成分も結び付けたりするのだろう。だから素地が締まった音になる。漆も柿渋もフェノール樹脂のオリゴマーが結びついてポリマーになるのは同じだが、結合する場所が違うというわけだ。
昔から漆芸では、柿渋で作った下地を「渋下地(しぶしたじ)」と呼び、漆の下地の代用品とか、安価で作るための下手物とか、要するに見下される扱いをされてきた。
私も、そういうものなのかと信じ込まされていた節があるわけだが、いや、ちょっと待てよ。これは柿渋本来のポテンシャルを見誤った考え方なのではないかと気付いた。
どちらも塗料というジャンルで見ると、確かに漆に比べれば柿渋の塗膜は弱いし、撥水性はあるにせよ長時間の耐水性までは無いかもしれない。だがそれは塗膜という土俵においての話であって、柿渋は本来、漆のような厚い被膜を作る使い方ではなく、少しずつ浸透させ胎を作るという全く異なるジャンルでこそ実力を発揮するものではないかと思う。
塗って浸透するまで待ってから、表面を布で乾拭きする。それを繰り返し、表面にうっすらと艶が出てきた状態で止める。塗膜にするのではなく、その前で完成とする。これが本来の渋下地のポテンシャルを最大限に発揮させる使い方という事になるような感じがする。
ちなみに、表面に艶が出ても止めずに塗り続けると、柿渋が弾かれて玉状になり斑が出て来るので見た目が汚いのと、著しく接着性が落ちて剥離し始めるからやらない方が良い。