猫田に小判 -新館 -

Last Modified: 2026/05 RSS Feed

No.121, No.120, No.119, No.118, No.4件]

#金継ぎ #侘継ぎ #陶磁器修理

AIはネット上に存在する既存の内容については、割とちゃんとした答えを出すが、未知の領域に対する推測的な回答は95%役に立たない。数学では未解決問題を解いたりするようだが、少なくとも金継ぎに関して言えば、これまでに何度か質問を投げかけてきたが、結局、やってみるとAIの回答通りになった例はない。

伝統的に用いられている絞漆を元に、接着剤の添加材として有効性のある順番をAIに並べさせると卵白はランキングが低くなる。成分が水溶性であること、乾燥するとクラックを発生して脆化すること、などが理由だと言う。
確かに卵白は水溶性だし、ガラス板に塗って乾かすと乾燥するに従い塗膜にクラックを作りボロボロと取れてしまうので、現象としてAIの言うことに間違いはない。
だが、問題は、それを漆と混ぜた場合。更に、卵白のタンパク質を展開処理して漆と混ぜた場合は、AIの言う事は否である。まず絞漆にする場合、卵白は漆との混合層になるため水溶性であることは塗膜に大きく影響はしないし、漆の塗膜に卵白を塗るとクラックは生じるが、混ぜた場合にはクラックは生じない。更に、卵白の球状タンパク質を展開させて漆と混ぜるという事例がネット上には存在しない(たぶん)。だからAIは展開卵白と漆の混合についてはハルシネーションしか言わない。

自分でテストをしたところ、卵白の展開タンパク質は漆と結合し、接着剤として極めて優秀な結果をもたらすという事が分かった。最初にこの結果を見たときには、正直、自分でも信じられず何度もテストをやりなおしてみたが、やはり優秀な結果を出すことは変わらなかった。
どの辺が優秀なのかは、noteに纏めておいた ので読んで頂くとして、ここではnoteに書いていない話を少しする。

前回、今の金継ぎは縄文時代から続いた漆直しの文脈を逸脱し修正が不可能な状態まで変化し拡散してしまったから、本来の文脈に近い定義を残すために新しい直しの用語を考えてみたらどうだろうという事で『侘継ぎ(わびつぎ』を提唱した。
侘継ぎは、余計な思想や主張を持ち込まず、ただ直すことだけに集中・特化した修理を言う。
これは千家侘茶の「喫茶去」と同じだ。ただ茶を点てる者、飲む者、という人と人の対峙。それ以上でもそれ以下でもなく、だから必要な最小限の設えしか行わない。そうすることで寂びと繋がり、世界の無限を感じることになる。それが茶の湯の真髄であろう。
侘継ぎもそれと同じで、ただ器と持ち主のために直す、それ以上でもそれ以下でもない。何なら金蒔きも要らない。持ち主に必要な最小限にして最強、そして永続することが可能な修理方法が侘びた直しというものだと思う。

この直しを行うために最適な接着剤が変性卵白漆だと、私は今のところ思っている。指で触っても接着誤差が分からないほどの薄層。この薄層の接着の美しい佇まいは、この上に蒔絵をして失ってしまうことが惜しいと思えるほどの風情がある。しかも、接着するだけで1か月水没させても脆化しない耐水性と耐衝撃性を持ち、この強度が接着から3週間で得られる。
乾酪漆(カゼイン漆)も、接着強度は相当強い。元からデンプンを含まないためカッテージチーズの状態でも強いのだが、お湯でドリップして脂質を溶かし出した後にアンモニアで展開したカゼイングルーを混ぜた漆は、恐らく金継ぎ用接着剤の中でもトップ強度だと思う。だが、如何せん接着の質実剛健な姿は、卵白漆の薄層の美しさほどではない。厚みの差で言えば0.0数ミリの違いだと思うが、その僅かな差で、やはり乾酪漆は蒔絵があって成立する接着剤だと感じてしまう。

変性卵白漆については、もう少しテストをしてからでないと実践投入は難しいと思うが、たぶんいずれは侘継ぎの主力として接着剤に起用することになると思う。勿論、言われれば金蒔き加飾はするが、しなくても十分な強度と耐水性、そして繊細な美しさを有しているという安心感は、何物にも代え難いのではないかと思っている。

〔 1691文字 〕 編集

「金継ぎ」に替わる言葉を探したいという話

No. 120 :
#金継ぎ #陶磁器修理 #どうでもいい思い付き #徒然なる日記

言葉というのは時代や地域によって変化していくものだという一般常識的な感覚は、もちろん私にもある。
日本で使われる「寿司」という言葉は、アメリカだとカリフォルニアロールのような海苔を内側に入れた巻き寿司の事を意味する。ちなみに日本の巻き寿司を「MAKI」、握り寿司を「NIGIRI」と呼び、それらの総称を「SUSI」と呼ぶわけではなく、あくまで「SUSI」は裏巻きの寿司というグループの名称という使い方だそうだ。

金継ぎもKINTSUGIになった事で、受け取り方が多少は変わってくるだろうという感じはしていたが、金継ぎの場合に問題なのは金色である事以外は日本で行われてきた金継ぎのオリジナリティが壊滅的に無視されている事。無視された上に自己啓発やスピリチュアルでは、器の破壊行為が正当の範疇で行われている。もはや直しですらない単なる営利のための大量消費となっている。
しかも困った事に、日本でも金継ぎをするといえば、そうした消費活動だと考える人間が増えてきているという事実。金継ぎをすると言っている日本人の9割以上は、漆芸の歴史との兼ね合いを微塵も知らない状態ではないかという感じがしている。オリジナルを残しつつ変化している部分があるならまだしも、明らかにオリジナルが消滅し、残骸となりつつある。

これは、自然や他人との関係やバランスを重視する日本に対し、最も優先されるのが個人の幸福であり、そのためには他人を説き伏せることが重要だという国外との世界観の違いによるものだろう。だから、自分と器の距離を考えながら時間を掛けて直す金継ぎと、自らの精神構築のために器を割り、出来るだけ早く組み立てる事を象徴的に捉えるKINTSUGIの違いが生まれることになる。KINTSUGIは金継ぎをリスペクトしていると言う人もいるが、その実は全く逆だったりする。

これまで、金継ぎの歴史を調べてnoteに書いたり、漆芸の歴史から生まれた金継ぎと、現在の商業ベースで広まった金継ぎには凡そ伝統と呼べる接点は無いという事を言ったり書いたりしてきたが、正直、肌感としては完全に手の打ちようのない状態だと思う。もはや日本人が行ってきた金継ぎは濁流による崩壊を起こしてしまっている。

それで考えたのは、所詮、金継ぎは昭和30年代に略称として生まれた若い言葉であり、そろそろ用語として新たなフェーズに移行する時期なのかもしれないという事。
「繕い」が「漆繕い」になり「金粉繕い」から「粉繕い」、「金粉継ぎ」から「金継ぎ」へと呼び名は変化を続けてきた。言葉は変わっても技法や気持ちとして受け継がれたものがあったと思うが、それすら無くなっているとしたら、それはもう別物だ。元来なら別物に対して新たな呼び名を考えるのが筋だと思うが、商業ベースで広まり拡散してしまった今となっては、それは叶わない願いだろう。
ならば、商業ベースの行為に「金継ぎ」という用語はくれてやって、縄文時代から続いた漆直しの源流を持った修理に別な用語を付けたら良いではないのではなかろうか。元来在るものという認識が生じればいいのだから、金継ぎという名称に執着する必要もない。執着しないのは禅の教えでもあるわけだし。

というわけで、そんな意味を表す何か良い言葉は無いかとずっと考えていて、「侘数寄(わびすき)」という茶道用語を見て語呂が似ている

「侘び継ぎ、侘継ぎ(わびつぎ)」

というのはどうだろうと思い付いた。

これならば金色である必要もないし、金色に執着する必要もない。銀でも良いし、漆だけでも良い。人と宅が入っている漢字の並びも良い。勿論、侘茶が持つ自然との接点みたいなものも感じられる、日本に根ざしたイメージが強く感じられそうな気がする、個人的には。

これまでの金継ぎの名称の歴史的文脈から言えば「漆継ぎ(うるしつぎ)」を用いる方が自然ではあるが、漆継ぎはどうにも語呂が悪い。「し」と「つ」が並んでいたり、5音節なのが原因ではないかと思う。

もっと良さげな言葉があれば、また書きたいと思うが、今のところ「侘継ぎ」は自分の中ではかなりしっくりきている。

〔 1761文字 〕 編集

金継ぎの料金を値上げすることにした話

No. 119 :
#金継ぎ #徒然なる日記

私が金継ぎ師や金継ぎ作家ではなく金継ぎ修理屋を自認自称しているのは、陶磁器の修理として金継ぎを捉えているからだ。
そして修理には、それに応じた妥当性というものが必要だろうと考えている。

修理の値段はその中でも最初に苦慮した事で、私の金継ぎ修理はあくまでも美術工芸品ではなく庶民的に器を使い続ける事を目的としているから、使い続けられる「ギリギリ妥当なお足を頂く」ために分かりやすさを優先し、それまで通例とされてきた言い値による料金ではなく、計算方法を公開し価格を提示しするという方法を考えた。それが、基本料2000円と、技術料の接着1cmあたり100円。欠損1cm角あたり400円だ。当時は地元の画材屋から購入していた金粉が1gで1万円位だったから、修理に使用する金粉の標準量を0.01gとすると、まぁ妥当ではないかという判断だった。

しかし、昨今の金の未曾有の高騰により、現在の金粉はネット店の直販でも1gで35000円はする。明らかに原価割れだ。
それでも、食費を削りエンゲル係数の爆上がりを実感しながら、庶民的な修理感覚としてその値段を維持してきたが流石に堪えられなくなった。
現状の金の高騰を鑑みれば、料金の値上げは3倍を超えるのが妥当なのは分かっているが、それでは庶民的な修理感覚を大きく逸脱してしまう。
なので、4月から頑張って頑張って頑張って金継ぎの技術料は、接着1cmあたり200円。欠損1cm角あたり800円にした。
少なくとも私にとって庶民感覚の修理はここが限界だ。これ以上なら修理を頼むことはしないと思う。

焼継ぎは、修理の値段が新しい器を買う値段を上回ったことで絶滅する道を辿った。
本漆と本金を使った金継ぎも、いずれは焼継ぎと似たような衰退の道を辿るとは思う。庶民感覚の金継ぎは消えると思うが、ただし金継ぎそのものが完全に消えるかというと、たぶんそれはない。金継ぎは本来、武家や公家、豪商などが持っていた数百万円、数千万円を下らない(数億円クラスもあった)という茶器に対して行われていたもので、言い換えればそういう額の売買が出来る人間のためのものだった。そういう世界線では金継ぎは廃れることはないだろう。
カネは取れるところからはしっかり取るというのはビジネスとしては正しい。ただ、私はそれに付き合うつもりはない。あくまでも庶民感覚で可能な最大限の金継ぎを模索するだけだ。

『The more you give Babe, the less you lose, yeah
運が悪けりゃ死ぬだけさ
死ぬだけさ』

金継ぎ修理屋を始めた時に歌い続けた「男達のメロディー」は、今も心の真ん中にある。

〔 1146文字 〕 編集

#金継ぎ #どうでもいい思い付き #徒然なる日記

金継ぎは侘び寂びなのか?という疑問に始まり、直しの用語の変遷などを調べていくうちに日本人の器物直しの歴史が見えてくると、そろそろ「金継ぎは馬蝗絆が~」の嘘は真面目に止めておかないとアカンな、と思い始め、金継ぎの歴史を「案外 書かれない金継ぎの話」で形にしておくことにした。

金継ぎの歴史1 室町以前
金継ぎの歴史2 茶人と繕い
金継ぎの歴史3 繕いの変化
金継ぎの歴史4 名称の変化
金継ぎの歴史5 現代史

で、書き終わったのだが、全5章はかなり長くて読むの大変だから短めに説明できないものかと考えていて、AIに読ませて本の帯文みたいなの書かせてみたらどうかと気付く。「5つのブログを読んで、仮にこれが書籍だとしたら、どんな帯文を作りますか?」と同じ質問を6つのAIにしてみた。少し誤読してそうなAIもいるが、概ね良さげな感じの推薦文を書いてくれて面白かったので紹介しようと思う。AIの帯文を見て、興味が沸いたら本編も読んでみてください。


その金継ぎ観、近代の創作かもしれない。
侘び・癒し・哲学、語られすぎた物語を、史料から静かにほどく。
縄文から現代まで――
史料と実例でたどる、日本の〈繕い〉文化史。【 ChatGPT 】


金継ぎへのイメージを刷新し、本質を突くスタイル
「金継ぎ」という言葉は、昭和の発明だった。
縄文の漆直しから、江戸の「焼継ぎ」ブーム、そして世界が熱狂する「KINTSUGI」へ。
誰もが知る「日本の伝統」の、誰も知らなかった真実。
文献に埋もれた「繕い」の記録を掘り起こし、日本人の美意識の変遷を辿る極上の文化史。【 Gemini 】


きれいごと抜きで語る、金継ぎのリアルな歴史。
そのひび割れは、いつから「美」になったのか。
SNSで語られない、金継ぎと焼継ぎのほんとうの話。
美談でもスピリチュアルでもない、実務としての金継ぎ史入門。【 Perplextiy 】


金継ぎブームの今だからこそ読むべき一冊。
史料に基づく緻密な検証が、私たちの思い込みを次々と覆していく。
「侘び」「禅」「サスティナブル」――
時代ごとに変容する金継ぎの意味を追い、日本人と器の関係史を浮き彫りにする、驚きと発見に満ちた文化史。
「あなたの知っている金継ぎの歴史は、ほとんどが創作かもしれません」【 Claude 】


金継ぎは侘び寂びの象徴? ――それは、昭和に生まれた幻想だった。
千利休も使わなかった“金”。“金継ぎ”という言葉が生まれたのは、わずか100年前――
史料で読み解く、本当の金継ぎ史。
ロマンチックなイメージを、丁寧に剥がす。ワークショップに行く前に、ぜひ読んでほしい一冊。
あなたの金継ぎ観が、180度変わる。【 Grok 】


あなたの知っている金継ぎは、金継ぎではない。
昭和に生まれた新しい言葉が、いつしか古典の顔をして語られてきた。
その誤解をほどき、金継ぎの歴史をゼロから組み直す。
言葉でつなぐのは文化の記憶。
忘れられた修理の名と、移り変わる価値観をたどる、金継ぎの静かな歴史散歩。【 Copilot 】

〔 1356文字 〕 編集

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