No.121
New 変性卵白漆は侘継ぎを代弁する漆接着剤だという話
No.
121
:
Posted at
2026年05月19日(火)
#金継ぎ #侘継ぎ #陶磁器修理
AIはネット上に存在する既存の内容については、割とちゃんとした答えを出すが、未知の領域に対する推測的な回答は95%役に立たない。数学では未解決問題を解いたりするようだが、少なくとも金継ぎに関して言えば、これまでに何度か質問を投げかけてきたが、結局、やってみるとAIの回答通りになった例はない。
伝統的に用いられている絞漆を元に、接着剤の添加材として有効性のある順番をAIに並べさせると卵白はランキングが低くなる。成分が水溶性であること、乾燥するとクラックを発生して脆化すること、などが理由だと言う。
確かに卵白は水溶性だし、ガラス板に塗って乾かすと乾燥するに従い塗膜にクラックを作りボロボロと取れてしまうので、現象としてAIの言うことに間違いはない。
だが、問題は、それを漆と混ぜた場合。更に、卵白のタンパク質を展開処理して漆と混ぜた場合は、AIの言う事は否である。まず絞漆にする場合、卵白は漆との混合層になるため水溶性であることは塗膜に大きく影響はしないし、漆の塗膜に卵白を塗るとクラックは生じるが、混ぜた場合にはクラックは生じない。更に、卵白の球状タンパク質を展開させて漆と混ぜるという事例がネット上には存在しない(たぶん)。だからAIは展開卵白と漆の混合についてはハルシネーションしか言わない。
自分でテストをしたところ、卵白の展開タンパク質は漆と結合し、接着剤として極めて優秀な結果をもたらすという事が分かった。最初にこの結果を見たときには、正直、自分でも信じられず何度もテストをやりなおしてみたが、やはり優秀な結果を出すことは変わらなかった。
どの辺が優秀なのかは、noteに纏めておいた ので読んで頂くとして、ここではnoteに書いていない話を少しする。
前回、今の金継ぎは縄文時代から続いた漆直しの文脈を逸脱し修正が不可能な状態まで変化し拡散してしまったから、本来の文脈に近い定義を残すために新しい直しの用語を考えてみたらどうだろうという事で『侘継ぎ(わびつぎ』を提唱した。
侘継ぎは、余計な思想や主張を持ち込まず、ただ直すことだけに集中・特化した修理を言う。
これは千家侘茶の「喫茶去」と同じだ。ただ茶を点てる者、飲む者、という人と人の対峙。それ以上でもそれ以下でもなく、だから必要な最小限の設えしか行わない。そうすることで寂びと繋がり、世界の無限を感じることになる。それが茶の湯の真髄であろう。
侘継ぎもそれと同じで、ただ器と持ち主のために直す、それ以上でもそれ以下でもない。何なら金蒔きも要らない。持ち主に必要な最小限にして最強、そして永続することが可能な修理方法が侘びた直しというものだと思う。
この直しを行うために最適な接着剤が変性卵白漆だと、私は今のところ思っている。指で触っても接着誤差が分からないほどの薄層。この薄層の接着の美しい佇まいは、この上に蒔絵をして失ってしまうことが惜しいと思えるほどの風情がある。しかも、接着するだけで1か月水没させても脆化しない耐水性と耐衝撃性を持ち、この強度が接着から3週間で得られる。
乾酪漆(カゼイン漆)も、接着強度は相当強い。元からデンプンを含まないためカッテージチーズの状態でも強いのだが、お湯でドリップして脂質を溶かし出した後にアンモニアで展開したカゼイングルーを混ぜた漆は、恐らく金継ぎ用接着剤の中でもトップ強度だと思う。だが、如何せん接着の質実剛健な姿は、卵白漆の薄層の美しさほどではない。厚みの差で言えば0.0数ミリの違いだと思うが、その僅かな差で、やはり乾酪漆は蒔絵があって成立する接着剤だと感じてしまう。
変性卵白漆については、もう少しテストをしてからでないと実践投入は難しいと思うが、たぶんいずれは侘継ぎの主力として接着剤に起用することになると思う。勿論、言われれば金蒔き加飾はするが、しなくても十分な強度と耐水性、そして繊細な美しさを有しているという安心感は、何物にも代え難いのではないかと思っている。
AIはネット上に存在する既存の内容については、割とちゃんとした答えを出すが、未知の領域に対する推測的な回答は95%役に立たない。数学では未解決問題を解いたりするようだが、少なくとも金継ぎに関して言えば、これまでに何度か質問を投げかけてきたが、結局、やってみるとAIの回答通りになった例はない。
伝統的に用いられている絞漆を元に、接着剤の添加材として有効性のある順番をAIに並べさせると卵白はランキングが低くなる。成分が水溶性であること、乾燥するとクラックを発生して脆化すること、などが理由だと言う。
確かに卵白は水溶性だし、ガラス板に塗って乾かすと乾燥するに従い塗膜にクラックを作りボロボロと取れてしまうので、現象としてAIの言うことに間違いはない。
だが、問題は、それを漆と混ぜた場合。更に、卵白のタンパク質を展開処理して漆と混ぜた場合は、AIの言う事は否である。まず絞漆にする場合、卵白は漆との混合層になるため水溶性であることは塗膜に大きく影響はしないし、漆の塗膜に卵白を塗るとクラックは生じるが、混ぜた場合にはクラックは生じない。更に、卵白の球状タンパク質を展開させて漆と混ぜるという事例がネット上には存在しない(たぶん)。だからAIは展開卵白と漆の混合についてはハルシネーションしか言わない。
自分でテストをしたところ、卵白の展開タンパク質は漆と結合し、接着剤として極めて優秀な結果をもたらすという事が分かった。最初にこの結果を見たときには、正直、自分でも信じられず何度もテストをやりなおしてみたが、やはり優秀な結果を出すことは変わらなかった。
どの辺が優秀なのかは、noteに纏めておいた ので読んで頂くとして、ここではnoteに書いていない話を少しする。
前回、今の金継ぎは縄文時代から続いた漆直しの文脈を逸脱し修正が不可能な状態まで変化し拡散してしまったから、本来の文脈に近い定義を残すために新しい直しの用語を考えてみたらどうだろうという事で『侘継ぎ(わびつぎ』を提唱した。
侘継ぎは、余計な思想や主張を持ち込まず、ただ直すことだけに集中・特化した修理を言う。
これは千家侘茶の「喫茶去」と同じだ。ただ茶を点てる者、飲む者、という人と人の対峙。それ以上でもそれ以下でもなく、だから必要な最小限の設えしか行わない。そうすることで寂びと繋がり、世界の無限を感じることになる。それが茶の湯の真髄であろう。
侘継ぎもそれと同じで、ただ器と持ち主のために直す、それ以上でもそれ以下でもない。何なら金蒔きも要らない。持ち主に必要な最小限にして最強、そして永続することが可能な修理方法が侘びた直しというものだと思う。
この直しを行うために最適な接着剤が変性卵白漆だと、私は今のところ思っている。指で触っても接着誤差が分からないほどの薄層。この薄層の接着の美しい佇まいは、この上に蒔絵をして失ってしまうことが惜しいと思えるほどの風情がある。しかも、接着するだけで1か月水没させても脆化しない耐水性と耐衝撃性を持ち、この強度が接着から3週間で得られる。
乾酪漆(カゼイン漆)も、接着強度は相当強い。元からデンプンを含まないためカッテージチーズの状態でも強いのだが、お湯でドリップして脂質を溶かし出した後にアンモニアで展開したカゼイングルーを混ぜた漆は、恐らく金継ぎ用接着剤の中でもトップ強度だと思う。だが、如何せん接着の質実剛健な姿は、卵白漆の薄層の美しさほどではない。厚みの差で言えば0.0数ミリの違いだと思うが、その僅かな差で、やはり乾酪漆は蒔絵があって成立する接着剤だと感じてしまう。
変性卵白漆については、もう少しテストをしてからでないと実践投入は難しいと思うが、たぶんいずれは侘継ぎの主力として接着剤に起用することになると思う。勿論、言われれば金蒔き加飾はするが、しなくても十分な強度と耐水性、そして繊細な美しさを有しているという安心感は、何物にも代え難いのではないかと思っている。