猫田に小判 -新館 -

Last Modified: 2024/04/14(Sun) RSS Feed

No.86

土偶の造形の解説についての話

No. 86 :
#徒然なる日記 #どうでもいい思い付き #陶芸 #縄文時代

Youtubeで縄文時代の土偶についての動画を見ていて、土偶の後頭部に穴が開いていて何のために開けたのか分からないという解説がされていたのだが、普通に水蒸気爆発防止の穴でしょ?と思った。陶芸をやっていれば当然開けるだろうと思う位置にちゃんと穴を開けている縄文人はやはり凄いなと思うと同時に、陶芸やったことがない人からすると穴の意味が分からないのかと少しびっくりした。

成形可能な状態にした粘土には15~20重量%の水分(物理水)が含まれている。この水分は焼成時の加熱に伴って水蒸気になり粘土から抜けていく。この時、徐々に温度が上がって水が液体から気体に変わっていくと粘土は形が壊れることなく熱変性していくことになるわけだが、加熱速度が速すぎると水の膨張による応力に粘土が耐えられなくなり水蒸気爆発によって形が破壊、粉砕してしまう。隣に作品があれば爆発の煽りで破損してしまう。福島原発で原子炉建屋が吹っ飛んだ映像を覚えている方は多いと思うが、水蒸気爆発といのそれ位の威力がある。実際、私も窯焚きの最中に作品の水蒸気爆発で上開き式の窯の蓋が持ち上がったのを見たことがあって、非常に衝撃だったのを覚えている。
粘土というのは一定の厚みを超えると内部の水が非常に抜けにくくなるため、水抜きのために竹串で何か所か穴を開けることで水蒸気爆発を防止する技術が必要になってくるわけだ。よくハウツー本に粘土内に密閉した空間を作ると空気膨張で爆発するという解説を見ることがあるが、粘土というのは意外に粒子の隙間が多いので、空気の膨張で爆発するということは無い。密閉空間の空気膨張で起こるのは爆発ではなくヒビが出る程度。爆発は空間ではなく粘土内部の水蒸気の急な体積膨張によるものだ。

で話を戻して、土偶の頭の穴だが、頭は粘土を固めて丸くしている場合、厚みがあり水分が抜けにくくなっている。目や口の穴は表層のみなので水蒸気抜きとして作用するほどの深さが無い。そのため頭部が爆発しないよう正面から目立たない後頭部に水蒸気抜きの穴を中心付近まであける、という極めて物理的な理由で作られていて、そこにスピリチュアル的な理由は恐らく無いと思う。

それから、土偶が板状土偶から自立式土偶へ変化した理由なども、割にまじないとか儀式とかスピリチュアルな方向で解説付けがされることが多いが、私は単に縄文人の物体に対する空間認識の発達によるものだと思っている。

私が子供の頃に、弟と粘土で遊んでいる時の記憶で、私が人間を作るために球形の頭に太めの棒状の体を作ったのに対して、弟は球状の頭に平板な方形を付けて人間としていた。当然、自立せず、頭が重いので板は曲がってしまうため床に寝かせておくことになるわけだが、なるほど弟にとって人間の体というのは頭が球体であることは認識しても、体に厚みがあるということまでは認識出来ていないのかと子供ながらに結構な衝撃を受けたのを覚えている。
大学の心理学の授業で、人間というのは成長に伴い物体や空間を平面認知から立体認知へと変化させていくという話を聞いて、弟との粘土作りのあれが、まさにこの認知の変化だったのかと非常に納得した。

というわけで、縄文時代は約1万年。当然、人間の認識が徐々に発達していく過程があるはずで、それが板状土偶から自立式土偶への変化に表れているのだろうと推測出来る。まじないをするために形を変化させたというよりは、何千年もかけて人の空間認知が発達したと考えるほうが分かりやすいのではないかと思う。

これは土偶と直接関係ないのだが、先が丸くなった棒が出てくると、すぐに男根崇拝だという話になるんだけど、私はその中には建築や工芸用の作業道具があるのではないかと思っている。建築跡や工芸品の数に対し、それを作るための道具の発見が少ないように思うのは、本来、道具であるはずのものをスピリチュアル視点で見過ぎているのが原因ではないかという気がする。

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