猫田に小判 -新館 -

Last Modified: 2024/04/14(Sun) RSS Feed

タグ「徒然なる日記」を含む投稿64件]

ギックリ腰と薬の話

No. 93 :
#徒然なる日記

先週初め、またギックリ腰になった。ギックリ腰はかなり慣れっこになっているので、またきたかと思いながら布団に横になったのだが、今回は様子が違っていて、数分起きに激痛が来て下半身が硬直し、徐々に足先が冷たくなってきた。このまま死ぬのかもしれんと思いながらどうやら気絶したようなのだが、夜に激痛で目が覚める。
一応、足は動くようなので死ぬことは無さそうだと思い、2日ほど横になっていたが鎮痛が見込めないので病院へ行ってレントゲンを撮ったところ、背骨が少し前後にズレていて神経を圧迫しているようだとの事。足の痺れもこれに関連して起こっているということで、腰に痛み止めの注射を打ち、1週間分の薬を貰って帰ってきた。

注射の即効性は凄く、即日で痛みが消えて普通に歩けるようになった。
良かった良かったと思いながら薬を飲み始めたのだが、この飲み薬が、何というか凄い。
神経伝達物質を抑制することで鎮痛を促すという薬効なのだが、副作用で浮動性めまいがでると説明にある通り、とにかく飲むとフラフラフワフワして私の場合、気を抜いて歩くと左に寄る。歩くぞという意思が強いとまっすぐ歩けるので日常生活に問題はなのだが。
それと、神経伝達物質抑制のためか判断力が鈍い。決断は早いが、その決断の正誤を判断して体が動きだすまでが遅い。遅いと言っても0.5~1秒くらいの遅れだと思うので外見上、障害が出ているような感じではないのだが、自分の中では明らかに「遅っ」という感じがする。特にキーボードのブラインドタッチは文字が出てくる速度で遅いのがよく分かる。
だが、この遅さのおかげで人間というのは決断・正誤判断をしてから体が動き出すんだなという事を身を持って認識することが出来たので、その点では貴重な体験とも言える。

以前に緑内障の検査で瞳孔を開放する目薬を使った後、街中で文字が全く見えなくなり、街中というのは文字によって人間の行動をいかに統制しているのかを痛感したが、その時以来のビックリである。多分、年寄の動きの鈍さというのは、こういう事なのかもしれない。年寄りは決断が鈍いのではなく判断が鈍いということなのだろう。

そのうち、この鈍くささにも慣れて来るとは思うが、出来れば前の判断力が戻ってほしいなぁとも思っている。

〔 968文字 〕 編集

#徒然なる日記 #金継ぎ #どうでもいい思い付き

ウルシオールは揮発するのか?を調べている。きっかけはGoogleで漆について検索している時、AIが生成した「ウルシオールは酵素が最も活発化することで揮発する」という文章だった。
昔から、漆に全く触っていないのに被れたという話があるのは知っているが、正直、ウルシオールが常温で被れを生じるほどの量で揮発するとは思えず、全く触っていないと本人が思っているだけで実は何かしらの理由で触ってはいるという事なのだろうと考えていた。しかし9割は揮発しないと思っていても、1割位は「えぇ!ウルシオールって揮発するんだぁ」と驚いてみたいという気持ちもあり、実際に確認してみるか、となったわけである。

が、ウルシオールが揮発するかどうかをどうやって見つけるのか。まずテスト方法から考えなければいけないわけだが、問題は「手持ちの環境で」という事。空調が整った実験室や高額な道具や機材があれば割とすぐに結果が分かるのかもしれないが、金粉1gを買っただけで食事のレベルを下げなければいけない貧乏金継ぎ屋にとってそういう環境は期待できない。汚い作業場で極力手近にある物を組み合わせてウルシオールの揮発の有無を知るためのテスト方法を考えるのは、結構な想像力を必要とするように思われる。
しかし、古代や中世の人々だって、そこまで精度の高い道具が無くても様々な発見をしていたわけで、十分に頭を使えば100%は無理でも75%程度の確証までは得られるだろうとポジティブに考えることにした。間違えた結論を出しても、そこから他の人が新しい何かを見つけてくれれば、まぁ良いかという若干の投げやり感もあったりはするわけだが。

テスト方法についてはいろいろ試していることもあり書き始めると長くなるのでエックスで小出しにするとして、今のところ

「漆の酵素が、使い終わった水分を空気中に放出する際、一緒に何かが出てくるようだ」

という事までは推測出来た。ウルシオール単体で揮発するというよりは、水分放出と関連しているのだろうと思われる。
何しろ試験精度が低いので、あくまでも推測の域を出ない。もう少し試行錯誤を繰り返して精度を上げないと確証まではいかないが、いつかそれなりの確証が持てたら、触っていないのに漆被れする理由としてnoteにでも残しておこうとは思っている。

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〔 1015文字 〕 編集

拡大鏡で仕事の寿命が少し伸びた、という話

No. 91 :
#徒然なる日記 #どうでもいい思い付き #陶磁器修理 #金継ぎ

金継ぎで細かい作業するたびに眼鏡をずらしたり外したりする事に、そろそろストレスを感じるようになったため思い切って拡大鏡を買うことにした。

拡大鏡を使ってみてまず分かったのは、去年から「加齢で細い線を引くのが下手になったなぁ、いつまで修理を続けられるのかなぁ」と思っていたが、加齢で器用さが落ちたわけではなく視力の問題が大きかったということ。眼鏡を外すと細かいところまで良く見えると思い込んでいたが、否、拡大鏡で見える解像度とは雲泥の差。ちゃんと見えるということは、ちゃんと細かい作業が出来るということに直結しているのは、体感してみて五臓六腑に染みわたった。

そして、よく見えるようになって仕事の精度が上がると、材料の無駄もかなり減った。線が細く引けると、使う漆の量も金粉の量も結構驚くほど減るし、線だけではなく欠けに充填する錆も無駄に食み出さなくなるので使う量が減る。
無駄を減らす最良の策は、精度を向上させることだったんだなぁと納得した。いくら無駄を減らそうと頑張っても精度が低いうちは結局無駄が出てしまうわけで、逆に言うと、精度が上がると無駄を減らすとか考えなくても自動的に無駄が減っていくのだ。精度ってほんまに大切。

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(写真:親に修理を頼まれたカップ)

ちなみに拡大鏡はネットで検索しても金継ぎするのに最適な倍率が分からなかったので、試しに5倍と10倍の2つを買ってみたが、使いやすいのは5倍だった。
10倍は確かに無茶苦茶細かいところまで見えるようにはなるのだが、その分、見える範囲もピントの合う範囲も狭い。特にピントの合う範囲が狭いのは割とストレスで、レンズ中央から外れると像の歪みが大きいので立体物に線を引く時は拡大鏡を少しずつ動かして調整しなければならず、そのたびに線から筆が離れるので集中力が途切れる。1~2cm角くらいの欠けであれば範囲も狭いし割と平面なので10倍でも使いやすいが、初めて買うなら5倍くらいの方が総合的に使い勝手は良いと思う。5倍でも十分精度の高い仕事出来るし。

〔 910文字 〕 編集

#徒然なる日記

昨年12月、弥生から更新するかどうかのメールが来たのだが、2024年から料金を1万円近く値上げするけどって書かれていた。

個人事業主になると1年目に税務署から、希望者には帳簿についてレクチャーが無料で受けられますよという手紙が来る(今もやっているかは分からないが宇都宮税務署はそういうサービスをしていた)。右も左も分からないことだらけだったので希望すると返答をしたら、〇月〇日に〇〇に来るようにと手紙が来たので行ってレクチャーを受けた時に使ったのが弥生会計というアプリだった。
別に弥生を推しているわけではないとの話だったのだが、結構1日みっちり弥生で会計を習ったので、帰ってから違うアプリを1から覚えるのは面倒だという理由で、それ以来19年間、弥生を使っているわけだ。

正直、弥生は自分のような小規模個人事業主にはオーバースペックなわけだが、まぁ、当時は弥生含めて2つくらいしか確定申告までトータルサポートするアプリが無かったということもあり仕方が無かったとも言える。だが、今ではカード使用情報や銀行口座入出金を自動管理してくれるアプリもいくつか出ているし、何より弥生は他のアプリに比べてサブスクリプション料金が高い。そのうえ料金値上げするという。

もう少し身の丈に合った料金の安いアプリは無いかと思っていたところ、Youtubeで紹介していたのがTaxnapというアプリ。クラウド型で、カードと銀行の情報をリンクさせAIが仕分けを提案するので可否判断をし、更に個人用と事業用をスナップで振り分けると仕分け台帳を作成してネット確定申告までやってくれて年間使用料が1万円くらい。キャンペーンで2024年3月までは無料で使えるというので早速登録してアプリダウンロードしてみたのだ。

で、1か月ほど使ってみたが残念ながら登録解除することにした。ネットでTaxnapを検索すると宣伝がらみの良い話しか出てこないので、登録解除することにした側の話も書いておこうと思う。
とは言え、Taxnapは出来の悪いアプリではないし、サービスとして悪くはないのは確かだ。ただし使用者がアプリが求めるものに適応した環境下であるかどうかで、使い勝手が大きく変わってしまう。問題はそこだ。

一番のネックは、私が使っているセゾンカードはTaxnapに対応していない、そして、足利銀行はネット利用が有料なので私がネットバンキングの申請をしていない、つまりカードと銀行の情報をTaxnapと連携出来ないわけで、そういう人には簡便さというメリットが全くない。
それでも、カードや銀行の情報が使えない人には手動でデータを打ち込むことが出来るようになっているが、例えば消耗品をカードで購入した場合「消耗品/事業主借」ではなく「消耗品/現金」でしか登録出来ない。個人事業主には必須ともいえる「事業主貸/銀行預金」というのも作れない。つまり現金の入出以外の記述が出来ないようになっている。
元々、ネットのカード情報で出入を管理する仕様だから、消耗品ならば購入後にレシートや領収書を保管しておいてカードで引き落としが行われるのを待ってからデータを打ち込んでいくという方法になると思うが、それを手動でスマホ上でやるのは非常に手間だし、物品の正確な購入時期も分からなくなる。12月に物品を購入し翌年の1月に引き落としの場合は会計的には問題なくても、年跨ぎは帳簿として使いにくい。
また、うちの場合、金継ぎ修理の代金は品物の出来上がりを見て頂き、仕上がりに納得できたら入金して頂く事にしている。(これは私が尊敬する方から、仕事は全部終わるまでお金を払ってはいけないし、お客さんから頂いてもいけない、と教えられたことが非常に大きい)。そのため修理品返却から支払いまでにタイムラグがあるので売掛金で処理をする必要があるのだが、売掛が扱えないため別途で売掛帳を自作しないといけない。
カードと銀行のデータ読み込みありきで作られたアプリなので仕方がないとはいえ、このアプリだけで全体を確認出来ないのは意外とストレスになる。

更に、Taxnapは他の会計アプリデータを読み込んでデータの引継ぎが出来ることになっているが、自動で読み込むわけではなくデータを送って読み込み作業をしてもらう手続きが必要で、手続き後2週間くらい待っていなければならず即時に乗り換えが出来ない上、弥生のデータは、売掛で会計したものも全て現金収入で計上されてしまうので月の入金合計が合わなくなる。
1年間のデータを入れてしまうと、弥生の帳簿と照合しながら手作業での不要データを削除する作業を行わなければならないわけだが、Taxnapに読み込まれる際、摘要の内容がすべて「弥生からインポート」と書き換えられてしまうので照合は金額しか判断材料が無く、また全ての摘要をひとつひとつ書き換えなければならない。摘要の表記は確定申告に直接関係することではないから放置するという手もあるが、後で見返したり調べたりする必要が出た時に無修正では明らかに困る。

アプリの問題点について問合せをすることは出来るのだが、LINEに登録してチャットで行う必要がある。私はLINEをやっていないので、そのためだけにアカウント登録をするのも面倒だ。

これらをクリアーするのは流石に発狂しそうなのでTaxnapは解約となったわけだ。

結局、Taxnapを気持ちよく使える人は、初めて会計アプリを導入するあるいは他の会計アプリの引継ぎが不要で、Taxnapが扱えるカードと銀行口座を持っていて、出来れば個人と仕事用のカードと銀行口座を別にしていて、売掛や買掛での取引が極めて少ないかやっていない。そしてLINEのアカウントを持っている、という条件に適合していることが必要だと思われる。
それと、Taxnapは複式簿記方式で台帳がクラウドに保管されているらしいが、初心者事業主に分かりやすいようアプリそのものは複式簿記で表示されない仕様なので、複式簿記の記述に慣れている人には分かりにくいというか、かなり頭の切り替えをしないと訳がわらかなくなる。

そんなわけで、2023年の確定申告をするために仕方なく弥生の更新料を払うことにしたが、正直、この先、弥生のサブスクの値上げが続いたらアプリのために貧乏一直線になる可能性があるわけで、一体どうしたものかなと思っている。

〔 2670文字 〕 編集

Aliexpressの金額に衝撃を受けた話

No. 89 :
#徒然なる日記 #陶芸

昨年末、窯の熱電対(窯の温度を計測するための金属棒)が寿命を迎え、計測不能で窯が点火しなくなってしまった話は、以前にブログで書いた通り。
エルエルキルンは熱電対が上中下と3本挿してあり、8600円×3で2万6千円位。送料入れると3万円弱。背に腹は代えられないので買ったわけである。

で、つい先日、Aliexpressを見ていたら、意外にも陶芸用品が充実しており電動ろくろも3万円代からあったりして(私が持っているのは15万円くらいの日本製)、仕事始めた頃にAliexpressあったらなぁとか思いながら商品を見ていたら、熱電対も売っているのを発見。その値段が何と「500円」!
中国の窯にしか対応してないとか何か特別な熱電対なのだろうと思ったが、規格を調べてみたらサイズも一緒で、ちゃんとうちの窯で使えるやつだった…。3本買っても1500円で、しかも送料無料。

まじかぁ~。5年後には熱電対寿命で買い替えることは間違いないなので、それなら今のうちに3本買っておいたほうがいいのか、それとも5年後の窯が使えているかを考えて、その時に購入を検討した方が良いのか。5年後だと値段も上がってそうだし、買っておいて使わなくても1500円だしなぁ。

それにしても、万年筆が安いのは分かっていたが、まさか熱電対の値段が500円とは。ヤバいな、Aliexpress。

〔 614文字 〕 編集

縄文人のモテたい欲を想像する、という話

No. 88 :
#徒然なる日記 #どうでもいい思い付き #縄文時代

先日、茨城県埋蔵文化センターいせきぴあ茨城で、漆器や漆を塗った土器の特別展示をしているというネットニュースを見て、いせきぴあ茨城って何処にあるのかと調べたら車で1時間半くらいで行ける場所と分かり、ちょっと見に行ってきた。
茨城県埋蔵文化センターは廃校をそのまま利用して縄文時代~平安時代までの埋蔵品などを保管、調査していて、その廃校の一角を展示室として無料で埋蔵品を公開しているところ。入館無料なのは有難い。
昇降口を入ると係の人が居て、何処から来たとか何で知ったとかちょっとしたアンケートに答えるとカラーパンフレットを貰って入室できる。いろいろ説明してもらおうかと思ったら、何故か「詳しいかたのようなので、どうぞご自由に見てください」と言われて係の人が出て行ってしまった。ん~、別に詳しい人の空気は全く出していなかったと思うのだが。まぁ、それはさておき、写真撮影OKなので展示物を観たり写真を撮ったりしてきた。展示室は教室2つ分なので博物館というほどの規模ではなく、コンパクトにまとまっていて全部を集中して観察しても疲れない程度なのは個人的に嬉しい。

で、その中で非常に感動したのが、桜の樹木から作った鉢(半分だけ)。縄文後期のもので弁柄を入れた赤い漆が塗られているのだが、内外の両方に非常に緻密な装飾が彫られている。(内側はカメラで上手く取れなかったので外側だけ)

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陶胎は形を作るのも装飾するのも粘土をちゃんと精製して練っていればそこまで大変ではないと思うが、木胎となると木を削って整形し更に彫り物を入れてから漆を塗らないといけない。しかも加工道具は恐らく石器や動物の骨を加工したもので金属道具のような専門形状をしていないわけだから、これを作るのにどれだけ大変だったかは想像に難くない。

一体、どんなモチベーションでこんなの作るんだよと思いながら暫し出土品の前で立ちすくんでいたら、急に、開けた風景の中で世間話をしながら楽しそうな顔をして木を削っている縄文人女性のイメージが浮かんだ。あぁ、そうか。これは仕事としてノルマを果たされてやっていたわけではなく、作る事が楽しくてやっていたのかもしれないと気付く。アドレナリンが出まくった状態で木を削り続けた結果が、これなんだろうな、と。

そこに気付いたら、頭の中で一気にいろいろなことが繋がってきて、縄文人がいろいろ作るモチベーションの根底には「モテたい」という欲があって、そこからいろいろと作ったんじゃないかという発想に至った。以前、土偶に妊婦が多いのは妊娠可能な女性がいる、または、妊娠中の女性がいることを集落に周知させる目的が大きかったのではないかとブログで書いたが、装飾を施した器というのも、モテたいの延長線上から生まれてきたものだったのかもしれない。

用途がよく分からない遺物はすぐに祭器や呪具だと決めつけて自然に対して畏敬の念や祈りを捧げるために作ったとか結びつけるのだが、そもそも時間の観念が存在したかどうかも分からないのに、より高次な思想のための物作りと考えるよりは、殆どの物はモテるために作ったと考えると、遺物を祭器や呪具にするよりも納得がいくような気がする。
男女関係なく、モテるためにいろいろなものを考えて作った。そして禍々しい神への祭りなんてことをしていたわけじゃなく、合コンやマッチングイベントを定期的にやっていて、そういう時のために生活用品以外にも普段からいろいろ物を作っていたんじゃないかと思ったりする。

考古学者はすぐに集団統率や文明による社会秩序というものを考えがちな気がするが、縄文時代ってもう少し俗っぽいというかプリミティブでシンプルな気持ちに全力で、多様な形状や装飾も、モテたい、モテるために誰かに伝えたいという気持ちから生まれていったような気がするのだが、それは私だけだろうか。

〔 1640文字 〕 編集

#徒然なる日記 #Youtube

うちは免税事業者継続でインボイスやりませんとホームページで宣言したからなのかは分からないが、宣言を出してからパタッと業者からの金継ぎ修理依頼が無くなり、まぁ、うちは契約とか全くせずに困った時だけ声をかけてねのスタンスでやってきているため、それで何処ぞに文句を言ったりも出来ないわけなので、要するに暇だったりする。(そのくせ窯が壊れて直したりして、お金にならない労働はあったりするわけだが。)

コロナで暇になった時はnoteに「案外 書かれない金継ぎの話」を書いたりして時間潰したのだが、基本的な事はあらかた書いてしまったし。ということで仕方がないのでYoutubeの動画を見たりしている。
そんなわけで、今日は無茶苦茶面白いチャンネルを3つ、お勧めしてみたいと思う。

1つめは『サイエンスライター北村雄一の地球放送
1本平均15~16分の動画で、現時点50本が公開されている。
生物の進化という視点から地球の歴史を解説するチャンネル。地層や化石などを元に生物誕生から少しずつ話が進み、最近では、宇宙人が居るとしたらどういう進化を遂げるのかといった考察などもしている。
流石、ライターさんのチャンネルだけあって、とにかく構成も説明も分かりやすい。古代生物の学名の解説とか声出して笑ってしまったりする。
昔の生物って面白い形をしているよなぁ~ってくらいの興味があれば、グイグイ地球の歴史に引き込まれていくこと請け合い。出来れば最初から順番に見るのがおすすめ。


2つめは『ことラボ ことばの不思議を解き明かす
1本平均10分程度(ほとんどは10分以下)の動画で、現時点50本が公開されている。
たぶん言語学というジャンルになると思うが、多角的に言語についての情報を解説して頂けるチャンネル。
「はぁ~いこんにちは、ことラボ りょうさんです」と、呑気な感じのあいさつで始まるけれど、そこから一気に動画主の博識が爆発して心を鷲掴み、話が展開していく。
割と動きの少ない画面なのだが、話の面白さと完璧な構成力で最後まで息つく暇もなく一気に見てしまう感じ。
地球放送のような順番は無いので、好きな動画からチョイスしても楽しめる。


3つめは『ナゾトキラボ【IQ & 謎解きチャンネル】
1本平均15分程度(わりとバラつきあり)の動画で、現時点252本が公開されている。
最初は、頭の体操をメインとした動画だったが、「親鳥さん」と「ひよこい」シリーズからは数学系謎解きエンターテイメントという方向になっている。
頭の体操も面白いのだが、私は数学解説が無茶苦茶好き。正直、中学知識で止まっている私にとって動画に出てくる数式は2割も理解出来ていなかったりする感じだが、数式を理解出来なくても数学の世界観を知ることが出来るのが素晴らし過ぎ。特に虚数と複素数をグラフ化する話は、実数解は巨大な数学というイマジナリーの一断片でしかなかったのかぁという驚きで涙腺緩むくらいに感動した。その他、暗号解読の謎解きなどは完全に映画1本見たような満足感があったりと、全ての動画が面白い。

以上、チャンネルの紹介でした。
「地球放送」と「ことラボ」は動画本数も50本で、更新も月1ペースのようなので今からでも一気見できる。知的エンターテイメントが好きな人は是非ともチャンネル登録して観て頂きたい。

〔 1440文字 〕 編集

土偶の造形の解説についての話

No. 86 :
#徒然なる日記 #どうでもいい思い付き #陶芸 #縄文時代

Youtubeで縄文時代の土偶についての動画を見ていて、土偶の後頭部に穴が開いていて何のために開けたのか分からないという解説がされていたのだが、普通に水蒸気爆発防止の穴でしょ?と思った。陶芸をやっていれば当然開けるだろうと思う位置にちゃんと穴を開けている縄文人はやはり凄いなと思うと同時に、陶芸やったことがない人からすると穴の意味が分からないのかと少しびっくりした。

成形可能な状態にした粘土には15~20重量%の水分(物理水)が含まれている。この水分は焼成時の加熱に伴って水蒸気になり粘土から抜けていく。この時、徐々に温度が上がって水が液体から気体に変わっていくと粘土は形が壊れることなく熱変性していくことになるわけだが、加熱速度が速すぎると水の膨張による応力に粘土が耐えられなくなり水蒸気爆発によって形が破壊、粉砕してしまう。隣に作品があれば爆発の煽りで破損してしまう。福島原発で原子炉建屋が吹っ飛んだ映像を覚えている方は多いと思うが、水蒸気爆発といのそれ位の威力がある。実際、私も窯焚きの最中に作品の水蒸気爆発で上開き式の窯の蓋が持ち上がったのを見たことがあって、非常に衝撃だったのを覚えている。
粘土というのは一定の厚みを超えると内部の水が非常に抜けにくくなるため、水抜きのために竹串で何か所か穴を開けることで水蒸気爆発を防止する技術が必要になってくるわけだ。よくハウツー本に粘土内に密閉した空間を作ると空気膨張で爆発するという解説を見ることがあるが、粘土というのは意外に粒子の隙間が多いので、空気の膨張で爆発するということは無い。密閉空間の空気膨張で起こるのは爆発ではなくヒビが出る程度。爆発は空間ではなく粘土内部の水蒸気の急な体積膨張によるものだ。

で話を戻して、土偶の頭の穴だが、頭は粘土を固めて丸くしている場合、厚みがあり水分が抜けにくくなっている。目や口の穴は表層のみなので水蒸気抜きとして作用するほどの深さが無い。そのため頭部が爆発しないよう正面から目立たない後頭部に水蒸気抜きの穴を中心付近まであける、という極めて物理的な理由で作られていて、そこにスピリチュアル的な理由は恐らく無いと思う。

それから、土偶が板状土偶から自立式土偶へ変化した理由なども、割にまじないとか儀式とかスピリチュアルな方向で解説付けがされることが多いが、私は単に縄文人の物体に対する空間認識の発達によるものだと思っている。

私が子供の頃に、弟と粘土で遊んでいる時の記憶で、私が人間を作るために球形の頭に太めの棒状の体を作ったのに対して、弟は球状の頭に平板な方形を付けて人間としていた。当然、自立せず、頭が重いので板は曲がってしまうため床に寝かせておくことになるわけだが、なるほど弟にとって人間の体というのは頭が球体であることは認識しても、体に厚みがあるということまでは認識出来ていないのかと子供ながらに結構な衝撃を受けたのを覚えている。
大学の心理学の授業で、人間というのは成長に伴い物体や空間を平面認知から立体認知へと変化させていくという話を聞いて、弟との粘土作りのあれが、まさにこの認知の変化だったのかと非常に納得した。

というわけで、縄文時代は約1万年。当然、人間の認識が徐々に発達していく過程があるはずで、それが板状土偶から自立式土偶への変化に表れているのだろうと推測出来る。まじないをするために形を変化させたというよりは、何千年もかけて人の空間認知が発達したと考えるほうが分かりやすいのではないかと思う。

これは土偶と直接関係ないのだが、先が丸くなった棒が出てくると、すぐに男根崇拝だという話になるんだけど、私はその中には建築や工芸用の作業道具があるのではないかと思っている。建築跡や工芸品の数に対し、それを作るための道具の発見が少ないように思うのは、本来、道具であるはずのものをスピリチュアル視点で見過ぎているのが原因ではないかという気がする。

〔 1678文字 〕 編集

#徒然なる日記 #どうでもいい思い付き #陶芸 #エルエルキルン

窯焚きをしていたら1200℃を超えた辺りで電源が落ちてしまい、何度も再点火を試みてどうにか1230℃までは上がるものの、それを超えると過剰加熱の表示が出て完全にダウンし1250℃まで届かず。翌日、再挑戦できるかとスイッチを入れたところFAILと表示されてスタート出来ず。
仕方がないのでエルエルキルンに問合せたところ、熱電対の寿命だと思うので1本引き抜いて(私の窯は3本使っている)確認してみて下さいとの事。コントロールボックスを開けて熱電対を引き抜いてみたところ、先端が熱で伸び切った上に炭化し完全に金属性を失っていた。日本の窯は保護管で固定されていて中の計測金属の寿命を見た事が無かったので、なるほど熱電対の最後はこうなるのかと結構驚いた。

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(注釈 左が新品の熱電対、右が寿命を迎えた熱電対)

明らかに寿命なので新しい熱電対を3本注文することに。アメリカの窯はDIYが徹底しているので、個人でパーツ交換出来る仕様になっているのは非常に有難い。

安めなK型(現在使っているものと同等)と値段の高いS型があってS型の方が寿命が長いとの事で、どちらにするか迷ったが、窯を買ってから6年は使えたので交換後も6年は使えるだろうという判断と、6年後に炉体の寿命が来ていたら熱電対ごと買い替えになる可能性も考えられるため熱電対だけ高寿命でも仕方がないかもという判断からK型にすることに。

注文から2日後に新しい熱電対が届いたので、早速交換する。
エルエルキルンのオフィシャルYoutubeに交換の動画があるので、それを何度か見て覚え、必要な道具を用意する。用意すると言ってもプラスドライバと懐中電灯くらいだけど。
交換手順そのものは非常に簡単で、先日、熱電対を引き抜いた時に構造は理解していたので、30分もあれば3本交換終わるだろうと思ったのだが、結局2時間くらいかかる。というのも、交換は簡単なのだが錆がとにかく酷い。そのせいでネジが抜けないし、やっと抜いて熱電対を交換しても今度はネジ山が馬鹿になっていたりしてネジが閉まらない。耐熱ウールを噛ませたりして何とか対処し、通電してみたところFAILの表示も出なくなり点火も出来るようなので、一応は一安心。

ところで、粘土には物理水と化学水(結晶水)という2つの水分が含まれていて、物理水は成形のための加水分で100℃になると蒸発する(窯の温度計だとは250℃くらいまで出ている)。更に分子レベルで結合している化学水というのがあり、これは1000℃くらいまで出続けると言われている。どちらも水蒸気になって出ていくのだがヤカンで水を沸騰させて出てくる水蒸気とは比べもにならないほど高温というのが曲者で、これが窯の金属を腐食させる。ステンレスというのは錆びない金属と思われているが、高温水蒸気はステンレスでさえボロボロに腐食させる。エルエルキルンは金属部分に腐食しにくいステンレスを使っているが、それでも6年使うと加熱水蒸気と触れる箇所はボロボロになってしまう。
熱電対を交換しながら思ったのだが、電気にしろガスにしろ、近代窯というのは耐火煉瓦を固定するためや各種部品を接続するために割と金属を多用していて、耐火煉瓦よりも金属の劣化が窯の寿命に関わってくる。前に使っていた日本の窯はアングルに鉄を使っていたのでステンレス以上にボロボロで最後はステンレスの針金でグルグル巻きにして使っていたなと思いだした。扱いやすいぶん煉瓦だけを積んで作った古代窯よりも、その点は明らかにデメリットだな、と。

〔 1530文字 〕 編集

#徒然なる日記 #陶芸

陶芸の講習会をやっていると、講習会で作った器は壊れないのに高い値段の器は壊れるんですよ、とか、自分のカップを洗っている時に落としたことないのに夫のカップは何故か落とすんですよ、という話を聞くことがある。

大抵は、おっちょこちょいエピソードとか笑い話のまま原因を聞かれることもなく話が流れてしまうので、きちんとその理由を話す機会は無いのだが、注意しているのに落としてしまう事で悩んでいる人のために、陶芸屋視点で理由を書いておこうと思う。

結論を言うと、器が手に馴染んでいないから。言い換えると、反復学習の不足が原因だ。

上記でいえば、来客用の器は、普段使いの器よりも手にする機会が少ない。夫のカップはお茶を出す時と洗う時に触るだけで、(例えば口元まで近づけるといった)それ以外の動かし方をしていない。つまり、器の形や厚み、重さのバランスなどについて手が覚える(正確には脳が無意識に記憶するわけだが)時間が圧倒的に短いのだ。
風呂場で髪を洗う時に目をつぶったとして、自宅であればシャンプーや水道の位置は大体予想出来るし、シャンプーの蓋を開けたりお湯を出すことも出来るが、旅行先の温泉の浴場で目をつぶったら、自宅の風呂と同じようにはいかない。それと同じで、普段使いの器や自分が愛用しているカップというのは、日々の反復経験によって器から様々な情報を収得し記憶している。逆に、来客用の器や夫のカップというのは普段遣いの器や自分用のカップに比べ、受け取っている情報量が圧倒的に少ない。

つまり、来客用の器や夫のカップというのは、根本的に落とすリスクが大きい器なのだ。
これは新しく買ってきた器を使う時にも当然発生するリスクだったりする。
食器に限らず、道具などを買う時に、手で持ってみてしっくりくると感じた経験を持つ人は少なくないと思うが、あれは、これまでの反復経験と合致する情報が多いということを意味する。
器というのは、よっぽど奇抜な作家の新作でもないかぎり大体は似たような形をしているので、これまでの経験と同じ使い方をすれば同様に扱えるだろうと勘違いしがちだが、実は、似た形であっても微妙に厚みや重さやバランスは異なるので、使いこなすには反復練習が絶対条件だったりする。

新しく買った器をすぐチップさせてしまう人、高い器を割りやすい人、夫のカップを落としやすい人は、手が器の情報を取得するまで、言い換えると器が手に馴染むまでには結構な時間が必要だということを忘れないようにしておくといいと思う。

〔 1093文字 〕 編集

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