全年全月13日の投稿[4件]
2023年7月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
新たな選択肢、カゼイン漆の接着剤は金継ぎで十分に使用可能だという話
No.
58
:
Posted at
2023年07月13日(木)
#徒然なる日記 #金継ぎ #陶磁器修理
カゼインそのものについては、東京の陶芸教室で仕事をしてた頃(20年以上前)からヒビの入った磁器を牛乳で煮ると、ヒビが見えなくなるレベルのヒビ止めが出来るという事で知っていたし、だいぶ前に旧猫田に小判には、牛乳のカゼイン止めで陶磁器を接着することは出来るけど熱湯を入れる器でやると吸水して脆くなるから基本的にお勧めできないという話を書いていた記憶がある。
その後は全くカゼインと縁が無かったのだが、少し前に、生分解プラスチックについてネット検索をしていて牛乳から作るカゼインプラスチックというのを読んで、改めてカゼインの事を調べている時にカゼインプラスチックの欠点は漆を混ぜれば何とかなるのでは?と閃いた。
その後、更に調べてみたら、漆に卵白や牛乳を入れ、タンパク質で粘度を上げるという手法は伝統技法として行われていること。漆とカゼインタンパクは分子レベルで結合し、漆やカゼイン単体とは異なる性質を持つ事。カゼイン分子はガラスに積極的に密着する性質があること。などが分かり、これは相当に凄い接着剤を思い付いたのではないかやと思ったら、伝統技法の応用として漆を主成分とする接着剤 という特許を見つけて、あぁやっぱり既にあったか、そりゃ思い付くよな。となった。
この特許では、工業用のカゼインと素黒目漆を使うことで、高純度のカゼイン漆を作るというのが主旨で、それゆえに工業的な応用展開が期待できるわけだが、私個人としては金継ぎで使用する糊漆や麦漆、漆に粘土を混ぜた接着用錆に、新たな接着の選択肢が出来れば良いので、そこまでの純度にはあまり興味が無い。美術画材としてカゼイン粉末を売っている(一応、油絵科出身なので画材についてはそこそこ詳しい)のは知っているが、金継ぎをやりたい人が手を出すには敷居が高いと感じるし、金継ぎのために自分で無脂肪乳からカゼインを抽出するのも手間である。もう少し気軽で安全なカゼインを入手出来ないかと考え、スーパーでうろうろして見つけたのが雪印メグミルクの「カッテージチーズ」であった。
スーパーで材料を買えるのは非常に手軽。しかも食用として売っているので安全面については心配無用。
雪印メグミルクのカッテージチーズの成分を見ると、タンパク質含有が17.6%。特許で作り方を説明しているカゼイン水溶液とほぼ同じ比率。ただし、その他に乳脂肪分や防腐剤が入っているので、問題は、これと漆を混ぜて特許のようなカゼイン漆が作れるのか、特許のカゼイン漆程では無くても、割と近しい強度が得られるのかということだ。そこでカッテージチーズを買い、作り方から混合比率なども含めて耐水性や接着強度を調べてみることにした。
作り方や注意点は、そのうちnote でちゃんと解説したいと思っているので、ここでは結論だけ書くが、アンモニア水を入れて溶解させたカッテージチーズに漆を重量比で100~120%混ぜると、強力なカゼイン漆接着剤を作ることが出来る。無論、耐水性や接着強度も申し分ない。特許で書かれている接着強度は麦漆よりも上だそうだ。カッテージチーズはそこまでではないかもしれないが、少なくとも麦漆相当か、それより少し上である事は間違いない。
ガラス板に塗って乾かした後、熱湯に浸けるテストでは糊漆や麦漆よりも密着耐性が高いと思われる。
そして何よりカッテージチーズを使う方法はカゼイン粉末から水溶液を作るよりもハードルが低い。
余ったら食べてしまってもいいのだが、冷凍庫で凍らせると長期保存も可能(ただし風味は落ちるので冷凍させたものは接着剤用になるけれど)。
カッテージチーズから作るカゼイン漆は、接着剤の選択しとして十分にあると考えている。
カゼインそのものについては、東京の陶芸教室で仕事をしてた頃(20年以上前)からヒビの入った磁器を牛乳で煮ると、ヒビが見えなくなるレベルのヒビ止めが出来るという事で知っていたし、だいぶ前に旧猫田に小判には、牛乳のカゼイン止めで陶磁器を接着することは出来るけど熱湯を入れる器でやると吸水して脆くなるから基本的にお勧めできないという話を書いていた記憶がある。
その後は全くカゼインと縁が無かったのだが、少し前に、生分解プラスチックについてネット検索をしていて牛乳から作るカゼインプラスチックというのを読んで、改めてカゼインの事を調べている時にカゼインプラスチックの欠点は漆を混ぜれば何とかなるのでは?と閃いた。
その後、更に調べてみたら、漆に卵白や牛乳を入れ、タンパク質で粘度を上げるという手法は伝統技法として行われていること。漆とカゼインタンパクは分子レベルで結合し、漆やカゼイン単体とは異なる性質を持つ事。カゼイン分子はガラスに積極的に密着する性質があること。などが分かり、これは相当に凄い接着剤を思い付いたのではないかやと思ったら、伝統技法の応用として漆を主成分とする接着剤 という特許を見つけて、あぁやっぱり既にあったか、そりゃ思い付くよな。となった。
この特許では、工業用のカゼインと素黒目漆を使うことで、高純度のカゼイン漆を作るというのが主旨で、それゆえに工業的な応用展開が期待できるわけだが、私個人としては金継ぎで使用する糊漆や麦漆、漆に粘土を混ぜた接着用錆に、新たな接着の選択肢が出来れば良いので、そこまでの純度にはあまり興味が無い。美術画材としてカゼイン粉末を売っている(一応、油絵科出身なので画材についてはそこそこ詳しい)のは知っているが、金継ぎをやりたい人が手を出すには敷居が高いと感じるし、金継ぎのために自分で無脂肪乳からカゼインを抽出するのも手間である。もう少し気軽で安全なカゼインを入手出来ないかと考え、スーパーでうろうろして見つけたのが雪印メグミルクの「カッテージチーズ」であった。
スーパーで材料を買えるのは非常に手軽。しかも食用として売っているので安全面については心配無用。
雪印メグミルクのカッテージチーズの成分を見ると、タンパク質含有が17.6%。特許で作り方を説明しているカゼイン水溶液とほぼ同じ比率。ただし、その他に乳脂肪分や防腐剤が入っているので、問題は、これと漆を混ぜて特許のようなカゼイン漆が作れるのか、特許のカゼイン漆程では無くても、割と近しい強度が得られるのかということだ。そこでカッテージチーズを買い、作り方から混合比率なども含めて耐水性や接着強度を調べてみることにした。
作り方や注意点は、そのうちnote でちゃんと解説したいと思っているので、ここでは結論だけ書くが、アンモニア水を入れて溶解させたカッテージチーズに漆を重量比で100~120%混ぜると、強力なカゼイン漆接着剤を作ることが出来る。無論、耐水性や接着強度も申し分ない。特許で書かれている接着強度は麦漆よりも上だそうだ。カッテージチーズはそこまでではないかもしれないが、少なくとも麦漆相当か、それより少し上である事は間違いない。
ガラス板に塗って乾かした後、熱湯に浸けるテストでは糊漆や麦漆よりも密着耐性が高いと思われる。
そして何よりカッテージチーズを使う方法はカゼイン粉末から水溶液を作るよりもハードルが低い。
余ったら食べてしまってもいいのだが、冷凍庫で凍らせると長期保存も可能(ただし風味は落ちるので冷凍させたものは接着剤用になるけれど)。
カッテージチーズから作るカゼイン漆は、接着剤の選択しとして十分にあると考えている。
2022年3月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
ロックウールは陶磁器金継ぎの新機軸になるのか という話
No.
49
:
Posted at
2022年03月13日(日)
#金継ぎ #陶磁器修理 #徒然なる日記
以前に、漆芸では刻苧を作るのに木粉と漆と米糊(または小麦)を混ぜるけど、この刻苧は陶磁器と相性が悪い。それで刻苧は敬遠していたけれど、錆に刻苧綿を入れた刻苧錆みたいにしたら良いじゃないかと気付いて、陶磁器の金継ぎの刻苧は「粘土(+砥の粉)+漆+刻苧綿+水」なんだ、という事で落ち着いたという話をいたしました。
あれから、耐水性や強度などを調べて確かに使えるという事は分かったわけですが、ただ、収縮でのヒビは無いし、乾燥後の曲げ荷重に対しても強い事も間違いないんですけどカッターで削った時になんとなく脆い感じがする。そりゃ、漆が染みこんで硬くなっているとはいえ刻苧綿は細い植物の繊維ですからカッターを使えばサクッと切れるのは当然なんですけれども、そこがどうしても気になる。曲げ荷重には強くても、根本的な硬度が低下してしまう事に何か解決策は無いかというのが懸案事項として頭の隅に残っていたわけです。
プラスチックの分野ではガラスやカーボンの繊維に樹脂を浸み込ませ、更に積層させて強度を持たせたFRP(繊維強化プラスチック)というものがあります。漆芸でも麻布に漆を浸み込ませて木胎の器の強度を確保する方法があって、カップの取っ手の修理などに使う人もいるようですが、それだと木粉の刻苧と同じで陶磁器との相性は悪い。じゃぁやっぱりガラスの繊維で強度向上かとは考えましたが、ガラス繊維というやつは軽いので作業中に散れたり舞ったりするし、皮膚に付くとチクチクしてかなり辛い。それに、万が一、ガラス繊維を入れた刻苧を飲み込んだりしたら胃壁にガラス繊維が刺さったりする可能性も無くはないわけで、FRPの作業をやったことがあれば誰でも食器につかうのは躊躇すると思います。FRPのトレーはあっても食器が極端に少ないのは、そういう理由もあるんじゃないかと思うわけです。
それで、何か他に良い繊維はないものかとネット検索していたら「鉱物繊維」というものがあると分かりました。鉱物を1400℃で溶かしてから射出して繊維状に加工したものらしい、と。で、そんな凄いものならちょっと買ってみようかと調べたら、建材のガラスウールの代わりとして売ってはいるんですけど建材だから量が多い上に結構なお値段。刻苧に使えるかどうかを試験するために買うレベルじゃないわけで、でもまぁ、買えるなら買って試してみようかと安いところを調べていたら、なんと、建材ではなく植物の水耕栽培用に固めたやつを売っていると分かりまして、植物を育てるためのものなら人体に悪いものも入って無さそうな気がするし、しかも1000円程度で手が出しやすい。送料入れても買える値段だしポチっとしようかと思ったんですけど、いや待てよ、園芸用品ならホームセンターの園芸コーナーでも買えたりするのではないだろうかと気付き、近所のホームセンターに行ってみたら1個だけ残っていた。しかも4ブロック入って500円。これは金継ぎの神の導きであろうと即ゲットして帰ってきました。
販売元は大和プラスチック株式会社ですが、ロックウールは立方体に固めてビニルで巻いてありビニルに「日本ロックウール」と書かれているので、もしかしたら日本ロックウールというところで作っているのかもしれないと検索してみたら、ありました。日本ロックウール株式会社。しかも、ロックウールについて歴史や作成方法や安全性など非常に多岐に詳しく説明されている。
日本ロックウール株式会社 www.rockwool.co.jp/
ロックウールの原料となっている高炉スラグも調べてみたところ、鐵鋼スラグ協会というところが高炉スラグの有効利用についていろいろと研究、発信しているということも分かりました。
鐵鋼スラグ協会 www.slg.jp/index.html
刻苧綿の代わりを探していただけのはずが、気付けば壮大なSDGsの世界に踏み込んでいたという状態。こんな凄い原料がすでにメジャーなものとして活躍していたのか。まだまだ勉強不足だなと反省いたしました。
まぁ、SDGs云々については日本ロックウール株式会社や鐵鋼スラグ協会に任せるとして、私としては
・陶磁器の食器の刻苧として安全性は担保できるのか
・当面、安定継続的に入手可能か
という2点をクリア出来るかという事が重要で、ネット情報をいろいろと読む限り、結論としては完全OKであろうという見解に至っております。
で、実際に錆にロックウールを混ぜて刻苧を作ってみたところ、混ぜる時にジャリジャリはしますが、植物繊維の刻苧と乾く速さは変わらず。更に固めてからカッターで削ったり紙やすりをかけてみたら、かなり硬いんですが鉱物繊維が切削の邪魔になるという事はありませんでした。
削っていて気が付いたのですが、ロックウールは鉱物なのだから、錆に外割で添加するのではなく、
「木粉+小麦+水+漆」
を
「ロックウール+粘土+水+漆」
と置き換えて作れるんじゃないかと思い、やってみたら普通に作れました。
私が理想とする漆以外の有機物無しの無機物の食器用パテ。これじゃないのか、と。
あ、そうそう、ロックウールはアルカリ性のため酸性に触れると溶けるとか分解するという記事を見つけたので、粘土や水を入れず、ロックウールと生漆を混ぜてからムロに入れて固めてみたのですが、ちゃんと繊維は壊れず固めることができました。漆はPh4.5の弱酸性ですが、漆の弱酸性程度では何も変化しないようです。
現在は、実際の食器との密着性や耐水性、ロックウール+粘土+水+漆の比率はどの辺が良いのかという事について調べております。
ほぼ方向性が定まったら、noteの「案外 書かれない金継ぎの話 spinoff 」に整理して書きたいと思っています。もし、このブログを読んで自分もロックウールを使っているとかロックウール刻苧を試験しているという方がいらっしゃいましたら、noteの記事に突っ込み入れて頂けると助かります。よろしくお願いいたします。
以前に、漆芸では刻苧を作るのに木粉と漆と米糊(または小麦)を混ぜるけど、この刻苧は陶磁器と相性が悪い。それで刻苧は敬遠していたけれど、錆に刻苧綿を入れた刻苧錆みたいにしたら良いじゃないかと気付いて、陶磁器の金継ぎの刻苧は「粘土(+砥の粉)+漆+刻苧綿+水」なんだ、という事で落ち着いたという話をいたしました。
あれから、耐水性や強度などを調べて確かに使えるという事は分かったわけですが、ただ、収縮でのヒビは無いし、乾燥後の曲げ荷重に対しても強い事も間違いないんですけどカッターで削った時になんとなく脆い感じがする。そりゃ、漆が染みこんで硬くなっているとはいえ刻苧綿は細い植物の繊維ですからカッターを使えばサクッと切れるのは当然なんですけれども、そこがどうしても気になる。曲げ荷重には強くても、根本的な硬度が低下してしまう事に何か解決策は無いかというのが懸案事項として頭の隅に残っていたわけです。
プラスチックの分野ではガラスやカーボンの繊維に樹脂を浸み込ませ、更に積層させて強度を持たせたFRP(繊維強化プラスチック)というものがあります。漆芸でも麻布に漆を浸み込ませて木胎の器の強度を確保する方法があって、カップの取っ手の修理などに使う人もいるようですが、それだと木粉の刻苧と同じで陶磁器との相性は悪い。じゃぁやっぱりガラスの繊維で強度向上かとは考えましたが、ガラス繊維というやつは軽いので作業中に散れたり舞ったりするし、皮膚に付くとチクチクしてかなり辛い。それに、万が一、ガラス繊維を入れた刻苧を飲み込んだりしたら胃壁にガラス繊維が刺さったりする可能性も無くはないわけで、FRPの作業をやったことがあれば誰でも食器につかうのは躊躇すると思います。FRPのトレーはあっても食器が極端に少ないのは、そういう理由もあるんじゃないかと思うわけです。
それで、何か他に良い繊維はないものかとネット検索していたら「鉱物繊維」というものがあると分かりました。鉱物を1400℃で溶かしてから射出して繊維状に加工したものらしい、と。で、そんな凄いものならちょっと買ってみようかと調べたら、建材のガラスウールの代わりとして売ってはいるんですけど建材だから量が多い上に結構なお値段。刻苧に使えるかどうかを試験するために買うレベルじゃないわけで、でもまぁ、買えるなら買って試してみようかと安いところを調べていたら、なんと、建材ではなく植物の水耕栽培用に固めたやつを売っていると分かりまして、植物を育てるためのものなら人体に悪いものも入って無さそうな気がするし、しかも1000円程度で手が出しやすい。送料入れても買える値段だしポチっとしようかと思ったんですけど、いや待てよ、園芸用品ならホームセンターの園芸コーナーでも買えたりするのではないだろうかと気付き、近所のホームセンターに行ってみたら1個だけ残っていた。しかも4ブロック入って500円。これは金継ぎの神の導きであろうと即ゲットして帰ってきました。
販売元は大和プラスチック株式会社ですが、ロックウールは立方体に固めてビニルで巻いてありビニルに「日本ロックウール」と書かれているので、もしかしたら日本ロックウールというところで作っているのかもしれないと検索してみたら、ありました。日本ロックウール株式会社。しかも、ロックウールについて歴史や作成方法や安全性など非常に多岐に詳しく説明されている。
日本ロックウール株式会社 www.rockwool.co.jp/
ロックウールの原料となっている高炉スラグも調べてみたところ、鐵鋼スラグ協会というところが高炉スラグの有効利用についていろいろと研究、発信しているということも分かりました。
鐵鋼スラグ協会 www.slg.jp/index.html
刻苧綿の代わりを探していただけのはずが、気付けば壮大なSDGsの世界に踏み込んでいたという状態。こんな凄い原料がすでにメジャーなものとして活躍していたのか。まだまだ勉強不足だなと反省いたしました。
まぁ、SDGs云々については日本ロックウール株式会社や鐵鋼スラグ協会に任せるとして、私としては
・陶磁器の食器の刻苧として安全性は担保できるのか
・当面、安定継続的に入手可能か
という2点をクリア出来るかという事が重要で、ネット情報をいろいろと読む限り、結論としては完全OKであろうという見解に至っております。
で、実際に錆にロックウールを混ぜて刻苧を作ってみたところ、混ぜる時にジャリジャリはしますが、植物繊維の刻苧と乾く速さは変わらず。更に固めてからカッターで削ったり紙やすりをかけてみたら、かなり硬いんですが鉱物繊維が切削の邪魔になるという事はありませんでした。
削っていて気が付いたのですが、ロックウールは鉱物なのだから、錆に外割で添加するのではなく、
「木粉+小麦+水+漆」
を
「ロックウール+粘土+水+漆」
と置き換えて作れるんじゃないかと思い、やってみたら普通に作れました。
私が理想とする漆以外の有機物無しの無機物の食器用パテ。これじゃないのか、と。
あ、そうそう、ロックウールはアルカリ性のため酸性に触れると溶けるとか分解するという記事を見つけたので、粘土や水を入れず、ロックウールと生漆を混ぜてからムロに入れて固めてみたのですが、ちゃんと繊維は壊れず固めることができました。漆はPh4.5の弱酸性ですが、漆の弱酸性程度では何も変化しないようです。
現在は、実際の食器との密着性や耐水性、ロックウール+粘土+水+漆の比率はどの辺が良いのかという事について調べております。
ほぼ方向性が定まったら、noteの「案外 書かれない金継ぎの話 spinoff 」に整理して書きたいと思っています。もし、このブログを読んで自分もロックウールを使っているとかロックウール刻苧を試験しているという方がいらっしゃいましたら、noteの記事に突っ込み入れて頂けると助かります。よろしくお願いいたします。
2021年8月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
刻苧について悔い改めたという話
No.
43
:
Posted at
2021年08月13日(金)
#金継ぎ #陶磁器修理 #徒然なる日記
結論はタイトル通りで、刻苧さんごめんなさいという事で終了なんですけども、一応、悔い改めた理由を書いておこうと思います。
私、これまで漆とか金継ぎ関係の事については、ほぼほぼ書籍を買って読むということでやってきたわけですが、noteで金継ぎ専科の話を書くようになり改めてネット検索したりYoutubeを見たりして見分を深めるというよりは体系的に金継ぎ界隈ってどうなっているんだろうかと見直すようになりまして。なるほど、アメリカではエポキシに代用金を混ぜて貼り合わせるだけのキットを金継ぎセットとして販売しているのか、とか、日本でも金継ぎ体験で得た間違った解釈の理屈書いてあるなぁとか、勿論、ちゃんとした内容の金継ぎの説明サイトも増えているんだなぁとか、いろいろと勉強になっておりまして。
そんな中、今まで刻苧というのはずっと木粉と漆と続飯(または盤石糊)を混ぜたものだと思っていて、その組み合わせで作ったものは、大体が5年以内に反って変形したり、取れたりしていて、やはり植物主体は陶磁器とは相性悪いんだよなぁと思っていたわけですが、改めて刻苧を調べてみたら、まぁ刻苧の種類の多いこと多いこと。木粉じゃなくて砥の粉や地の粉を使った刻苧というのもあったりするわけです。
となると、刻苧の定義って一体、何なのかと。それで考えていて、あぁなるほど、そういう事かと気付いたのは、要するに錆漆はペイント剤、刻苧はモデリング剤という分類なんだろうな、と。当たり前といえば当たり前なんだけども。金継ぎでは案外、ペイント剤も積層させてモデリング剤として成立しちゃっているから、何となく曖昧な関係になっている状態だけども。
では、ペイント剤とモデリング剤の大きな違いは何なのかというと、繋ぎの有無。漆芸だと繋ぎは刻苧綿という事になるわけですが、要するに繊維質。これに尽きる。繋ぎが入っていれば、極端な話、そのほかの材料はどうでも良かったりするわけです。何故、繋ぎの有無が大切かというと、粉体は厚みが出ると収縮に伴ってヒビがいくから、それを防止するために繋ぎを入れる。つまり、本来はヒビがいく程度の厚みを想定しているものが刻苧なわけです。
それで、No.41のブログで書いた「粘土入れてもいいんじゃないか」案件に合致して、非常に納得がいったわけです。というのも、粘土を入れると厚みが出た時に大抵はヒビがいく。陶芸をやった人は乾燥時にヒビが入った経験は必ずあるものですが、錆も粘土単品だから当然といえば当然。普通はそれを防止するために陶芸界では珪石やシャモットを入れて調整杯土にするわけです。陶芸は加えるのが水分のみなので、かなりの厚みがあっても1か月置けば100%乾きますが、金継ぎの場合、漆を混ぜることが絶対条件。そして、珪石やシャモットを入れると何故か漆の乾きが鈍化したり、厚いものは乾かなくなったりする。粘土と砥の粉、あるいは、粘土と陶石の組み合わせ以外は多分に無理があるわけです。でも厚いとヒビがでる。このジレンマをどうしたらいいのかと思っていて、そこで刻苧綿。あぁそうか、刻苧綿を入れるとヒビがいかないのか、と。それで試しに粘土6と陶石4に刻苧綿を入れて4㎜でやってみたところ、全くヒビがいかない。しかも2日で乾く。インドやアフリカの調理用薪窯を作る時、窯にする粘土にスサを入れてヒビ割れ防止にしていたな。とか、いろいろな事が頭の中で一気に結びついて、金継ぎは、粘土と刻苧綿で刻苧作ればOKだったんだと妙に納得すると同時に、刻苧さん、今まで甘く見ていて本当に失礼いたしました、となったわけです。
人間、やはり勉強で脳をアップデートしていく事って大切ですわな。という話。
結論はタイトル通りで、刻苧さんごめんなさいという事で終了なんですけども、一応、悔い改めた理由を書いておこうと思います。
私、これまで漆とか金継ぎ関係の事については、ほぼほぼ書籍を買って読むということでやってきたわけですが、noteで金継ぎ専科の話を書くようになり改めてネット検索したりYoutubeを見たりして見分を深めるというよりは体系的に金継ぎ界隈ってどうなっているんだろうかと見直すようになりまして。なるほど、アメリカではエポキシに代用金を混ぜて貼り合わせるだけのキットを金継ぎセットとして販売しているのか、とか、日本でも金継ぎ体験で得た間違った解釈の理屈書いてあるなぁとか、勿論、ちゃんとした内容の金継ぎの説明サイトも増えているんだなぁとか、いろいろと勉強になっておりまして。
そんな中、今まで刻苧というのはずっと木粉と漆と続飯(または盤石糊)を混ぜたものだと思っていて、その組み合わせで作ったものは、大体が5年以内に反って変形したり、取れたりしていて、やはり植物主体は陶磁器とは相性悪いんだよなぁと思っていたわけですが、改めて刻苧を調べてみたら、まぁ刻苧の種類の多いこと多いこと。木粉じゃなくて砥の粉や地の粉を使った刻苧というのもあったりするわけです。
となると、刻苧の定義って一体、何なのかと。それで考えていて、あぁなるほど、そういう事かと気付いたのは、要するに錆漆はペイント剤、刻苧はモデリング剤という分類なんだろうな、と。当たり前といえば当たり前なんだけども。金継ぎでは案外、ペイント剤も積層させてモデリング剤として成立しちゃっているから、何となく曖昧な関係になっている状態だけども。
では、ペイント剤とモデリング剤の大きな違いは何なのかというと、繋ぎの有無。漆芸だと繋ぎは刻苧綿という事になるわけですが、要するに繊維質。これに尽きる。繋ぎが入っていれば、極端な話、そのほかの材料はどうでも良かったりするわけです。何故、繋ぎの有無が大切かというと、粉体は厚みが出ると収縮に伴ってヒビがいくから、それを防止するために繋ぎを入れる。つまり、本来はヒビがいく程度の厚みを想定しているものが刻苧なわけです。
それで、No.41のブログで書いた「粘土入れてもいいんじゃないか」案件に合致して、非常に納得がいったわけです。というのも、粘土を入れると厚みが出た時に大抵はヒビがいく。陶芸をやった人は乾燥時にヒビが入った経験は必ずあるものですが、錆も粘土単品だから当然といえば当然。普通はそれを防止するために陶芸界では珪石やシャモットを入れて調整杯土にするわけです。陶芸は加えるのが水分のみなので、かなりの厚みがあっても1か月置けば100%乾きますが、金継ぎの場合、漆を混ぜることが絶対条件。そして、珪石やシャモットを入れると何故か漆の乾きが鈍化したり、厚いものは乾かなくなったりする。粘土と砥の粉、あるいは、粘土と陶石の組み合わせ以外は多分に無理があるわけです。でも厚いとヒビがでる。このジレンマをどうしたらいいのかと思っていて、そこで刻苧綿。あぁそうか、刻苧綿を入れるとヒビがいかないのか、と。それで試しに粘土6と陶石4に刻苧綿を入れて4㎜でやってみたところ、全くヒビがいかない。しかも2日で乾く。インドやアフリカの調理用薪窯を作る時、窯にする粘土にスサを入れてヒビ割れ防止にしていたな。とか、いろいろな事が頭の中で一気に結びついて、金継ぎは、粘土と刻苧綿で刻苧作ればOKだったんだと妙に納得すると同時に、刻苧さん、今まで甘く見ていて本当に失礼いたしました、となったわけです。
人間、やはり勉強で脳をアップデートしていく事って大切ですわな。という話。
2019年10月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
サランラップはクッキングシートで密着させる という話
No.
29
:
Posted at
2019年10月13日(日)
#金継ぎ #陶磁器修理 #どうでもいい思い付き #修理道具
9月は更新しなかった。何でかなぁ。まぁ仕方がない。
せめて10月は更新しようという事で、また金継ぎというか漆道具ネタ。
私は漆を漉したらサランラップで保管することにしているのだが、漆は浸透性が高いので僅かな隙間があればサランラップで包んでもその中でどんどん広がってしまう。
こんな感じに。
最悪、そのままラップの外に流れてきてしまう。
これを何とかするためには、出来るだけ密着させて隙間を作らないようにしないといけない。
以前はゴムベラで押して密着を試みていたのだが、実はサランラップが伸びたり切れたりして力の加減が非常に難しい。
そこで、思いっきり力を入れて押しても伸びたり破れたりせず、確実にサランラップを密着させる方法を考えたのでご紹介。
用意するのは適当に切ったクッキングシート。100均などで買える安いもので十分です。
これをサンラップの上に乗せて
クッキングシートの上から、ヘラで力いっぱいに押す。
2,3回押してやると、なお良し。
そうすると、こんな感じにバッチリと漆を寄せる事が出来ます。
同じようにして、計3方向からヘラで押してやると、きっちり漆を寄せる事が出来ます。
最後に適当に畳んで保管します。
よろしければ、お試し下さい。
9月は更新しなかった。何でかなぁ。まぁ仕方がない。
せめて10月は更新しようという事で、また金継ぎというか漆道具ネタ。
私は漆を漉したらサランラップで保管することにしているのだが、漆は浸透性が高いので僅かな隙間があればサランラップで包んでもその中でどんどん広がってしまう。
こんな感じに。
最悪、そのままラップの外に流れてきてしまう。
これを何とかするためには、出来るだけ密着させて隙間を作らないようにしないといけない。
以前はゴムベラで押して密着を試みていたのだが、実はサランラップが伸びたり切れたりして力の加減が非常に難しい。
そこで、思いっきり力を入れて押しても伸びたり破れたりせず、確実にサランラップを密着させる方法を考えたのでご紹介。
用意するのは適当に切ったクッキングシート。100均などで買える安いもので十分です。
これをサンラップの上に乗せて
クッキングシートの上から、ヘラで力いっぱいに押す。
2,3回押してやると、なお良し。
そうすると、こんな感じにバッチリと漆を寄せる事が出来ます。
同じようにして、計3方向からヘラで押してやると、きっちり漆を寄せる事が出来ます。
最後に適当に畳んで保管します。
よろしければ、お試し下さい。