修理を依頼する時に注意したいこと

いつもは金継ぎをするために大切だと思うことを書いているが、今日は、金継ぎを頼む時に大切だと思うことを書こうと思う。
案外、金継ぎ依頼の注意点をきちんと書いているページは少ないように思う。ブログに金継ぎを依頼するための方法を書いたものが少ない理由は簡単で、そんなことを書いても閲覧数が伸びないからだ。また、金継ぎの依頼を受けている店にも記載が少ないのは、書いても読まずに依頼する人が多いし、注意書きの多い店は好かれない恐怖心があるということもあるだろう。うちの店のページは、かなりの分量を注意書きに要しているが、大抵は問い合わせで「依頼したいので、どうすればいいか教えて下さい」という一筆が添えられてくる。注意書きのページのアドレスを貼って「内容について不明な点があったらお問い合わせ下さい」と返信すると、まぁ、十中八九、音沙汰なしになる。それくらい注意書きは毛嫌いされる傾向があるわけだ。が、読んでもらえないから書かないというのは、やはり商売として”デサービス”だと思う。
と、前置きしておいて、本題。
まず、壊れた物は、基本的に極力、持ち主が手を加えないようにしましょう。
壊れたら、できるだけ破片を拾い集めて一つずつ包装シートで梱包するだけ。気が動転してしまうのは分かるが、そこは落ち着いて。セロテープで元の形状になるよう仮組みしたり、破片を洗ったりすることはしないでほしい。
特に、セロテープの仮組みは、それを剥がす労力が半端無い。セロテープは貼り合わせるために作られたもので、剥がすことは念頭にない。
テープを、器が痛まないようにピンセットで出来るだけ静かにゆっくると剥がす。失敗すると、破損面がガリっと鳴って粉砕物が出て破損が酷くなる上、材質によっては粉砕物で指を切ったりする。綺麗にテープをはがしたら糊残りを確認し、糊が残っていればアルコールを付けた綿棒で拭き取る。これだけで1時間くらいは余裕でかかる。
セロテープ剥がすだけで修理代加算するなとクレームを受けたことがあるが、こういう労力やリスクが生じていることは頭の隅に入れておいて頂きたい。
更に、自分で接着剤で直したけど上手くいかなかったというのも、相当の困りごと案件だ。いわば、風邪をひいたので民間療法で治そうと思ったら悪化して瀕死状態、みたいな話である。それでも、出来る限り何とかするのがプロなので、やるだけのことはやってみるわけだが、まぁ正直、納得のいく修理にはならないわけで、納得のいかない仕事でお客様に返却する気持ちの悪さは、たとえ、お客さんに喜んで頂いてもストレスとして蓄積する。
次に、依頼の際には極力「安い品物で申し訳ありませんが」とか「つまらない物ですが」という形容詞は使わないようにしましょう。
謙譲表現は日本人の美徳だが、修理依頼での謙譲表現は不要だと個人的には思う。風邪でうなされた自分の子供を医者に見せるとき「愚息ですが」とか「バカ息子ですみませんが」という親はまず居ない。自分にとって大切な物は、きちんと大切だと言って良い。
もっとも、これは高額な物しか直す価値は無いという(個人的には滅してほしいとすら思っている)修理業者の洗脳による影響は大きいと思うので、修理を依頼するお客さんはむしろ被害者なのかもしれない。だが、はっきり言わせて頂くと、野に咲くの花と、花屋の生花に美しさの上下が無いように、修理依頼品も上下は無く、こちらは全身全霊をかけて最高の状態まで仕上げたいと思っている。そこに不要な謙譲の形容詞を挟む必要は全く無いのだ。
今でこそ、そういう言葉を無視できるようになったが、仕事を始めた頃は自分がつまらない物を修理する程度の人間だと言われたようで酷く落ち込んだものだ。
逆に、大切であることを切々と語られるのも大変ではあるが、少なくとも安物だと言われて修理品を受け取るよりは100倍いい。
最後に、お金はきちんと払いましょう。
修理をする上での第一義は、持ち主の方に喜んで頂きたいということなのは間違いない。修理の感想を頂けたら、それは修理人として大変な喜びだ。手紙やメールを頂けた時などは末代までの家宝にしたいとすら思う。それくらい修理品の返却というのは、お客様に納得していただけるかどうか不安なのだ。
支払いというのも、感想の延長線上、あるいは会話の延長線上にあると私は考えている。だから見積りを提示してお客様が納得し了承の言葉を頂くまでは修理は行わない方針でやっているし、もし、修理した品物に納得がいかない時は1年以内は無料で再修理をすることも掲示している。
だが、事実として毎年、未払いがある。ぶっちゃけ、独立して仕事を始めてから未払いが無かった年は無い。年末に必ず貸し倒れ損失が発生する。つまり、この世には一定率で金を払わない人々が存在するわけだ。あぁ世の中とはそういうものかと少なからず頭では理解するわけだが、それでも、一応、書いておく必要はあるだろう。お金はきちんと払いましょう。どうしても払いたく無いときは、面倒でも、その理由をきちんと説明すべきです。何のアクションも無いままメールアドレスを消去したり、引っ越して音信不通になるのは止めましょう。商売を通しての金銭授受は、言葉のやり取りとほぼ同列だということを頭の隅に置いて下さい。
多少、愚痴っぽくなってしまったが、以上、修理を依頼する時の注意でした。

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