ガラス用漆の金継ぎ使用について(途中報告)

先月始めに、ガラス用漆を金継ぎに使うと凄いかもしれないというブログを書いた。
あの時は購入して間もなかったので、本当に凄いかどうかが分からなかったが、その後、少しだけガラス用漆の試験を行ったのでメモ程度に書いておきたいと思う。メモ程度と書いたのは、本当は、無機物と有機物の説明や、接着の結合の種類(機械的結合や物理的結合など)の説明をきちんと行う必要があるが、かなりヘビーで文字量も必要な話になってしまうので今回はそこまでの細かい説明はしませんよ、という意味合い。その点を御了承頂きたい。
まず、このブログを読んで頂いている方が期待しているであろう「結局、ガラス用漆の金継ぎへの使用はどれだけ信用できるの?」について結論を書いてしまおう。その後は補足なので、忙しい人は結論だけ読めばOK(中間報告だし)。
今のところ、ガラス用漆を実用向けで陶磁器の金継ぎに使うのは『結構、信用していい』。強度の向上は、用途により期待できる。
もう少し詳しく書くと「漆を浸透させて行うヒビ止め」、釉薬および素地に接する部位の「下地塗り」、「錆漆」は、ガラス用漆による接着強度の向上が期待できるのでお勧めする。
である。以上。
以下は時間がある人のための補足。
今年は猛暑が10日間くらい続いたせいもあり、漆も室内放置で良く乾いた。なのでムロは使わず、室内放置で漆は乾燥させている。これが実験の前提。私の仕事場はエアコンがないので、室内でも気温、湿度はほぼムロと同条件になっていた(つまり、気温27度以上(実験中は30度以上の日がほとんど)、湿度60%以上。湿度が低いと思われるかもしれないが、気温が上がるほど湿度は低くても漆は乾く。意外と知らない人が多いけど)。ただし朝夕で多少の気温差や湿度差は出るので、それらが安定しているムロを使用すると結果は変わるかもしれない。ここを頭に入れておいて頂きたい。
その上で、以下の条件で試験を行った。
理化学実験用のスライドガラス(磨きあり)に「漆のみ」「麦漆(漆:水:中力粉=3:2:1)」「錆漆(漆:水:砥粉=2:1:6)」を塗ったものを、MR漆バージョンと、ガラス用漆バージョンでそれぞれ用意する。
きっちり3週間かけて室内条件にて硬化させる(3週間の理由は、ガラス漆の効果を得るには3週間乾燥させるようにとオフィシャルサイトに書かれているから)」。
その後、まず常温の水に入れて24時間、ガラスに密着しているかどうかを調べる。
続いて、熱湯(常時加熱)に入れて、どれくらいの時間、密着しているかを調べる。
という方法で行った。(一応、熱湯で煮ている写真を掲載しておきます。分かりにくいと思いますが、こんな感じ。)

その結果。24時間の水没では、
MR漆バージョンは、「漆のみ」「麦漆」が剥離。
ガラス用漆バージョンは、「麦漆」の薄塗り部分は剥離。厚塗りは付着。
次に、煮沸している熱湯に入れた時は、
MR漆バージョンは、漆のみは速攻で剥離。麦漆5分で剥離。錆漆10分で剥離。
ガラス用漆バージョンは、麦漆5分で剥離。漆のみと錆漆は15分煮てみたが剥離なし(15分で剥離しなければ、実用性としては終了して良いと勝手に判断した)。
となった。
ちなみに、熱湯は常時加熱なので、おそらく90度以上をキープしている状態。
これが常時加熱させない状態だと、耐久時間は長くなると思われる(常温の水よりは短いと思うが)。日常使いを考えたら器を煮るという使用法はないはずなので、煮沸の試験は変なのだが、今回は密着強度を見る目的なのと、試験体が少なかったので、加熱させない熱湯水没試験はやっておりません。申し訳ない。
かなり前に、普通の漆(中国産)とMR漆(中国産)でやった時に試験結果は全く同じだったので(普通の漆とMR漆は硬化するまでの酵素の量の違いだけで、硬化した後は同じ物だから当たり前なのだが)、普通の漆とガラス用漆を比べても、おそらく同じ結果になると思われる。
よく分かったのは、ガラス用漆は有機物が混入してくると密着力が落ちる。ということ。麦漆が意外なほどに弱かったのは想定外だった。では、これを小麦ではなく粳米、つまり糊漆で試した場合はどうなるかだが、おそらくMR漆で行った糊漆と麦漆の結果から考えて同じように弱くなると思う。
仮に、ガラス用漆にシラン剤が入っているとしたら、この結果は化学的にも非常に納得できるもので、また、この結果から耐水および耐熱水を期待するなら、接着にはガラス用漆のみ使用する、または、極力、小麦や粳米などの有機物を減らすことが大切だということになると思う。(注:今回は、平滑なガラスに対しての試験なので、陶磁器に使用すると、平滑なガラスよりは付着時間は長くなるはず。)
逆に、そこをクリアーすると、実用のための最良の金継ぎ方法への道が開ける可能性は極めて高いとも言える。
実際、修理することを考えると、接着で漆のみ使用するのは非常にテクニックを必要とする。できれば少量でも初期保持力としてデンプンなりグルテンなりを使いたいので、次は、どの程度まで入れれば、漆単体に近い密着力が得られるかを探る必要があるだろう。
これについて、および対コストとの関連などについては、また、追って試験を行った結果と一緒にブログで書きたいと思う。
とり急ぎは、ここまで。

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