鬼怒川秘宝殿へ行ってきたの巻

久しぶりの、アラフォー(というかアラフィフ?)のオジさんが初めて行ってみるシリーズ。
今回は、栃木県の日光市鬼怒川にある「下野国風俗資料館」、通称「鬼怒川秘宝殿」である。鬼怒川にあると書いたが、おそらく、このログをみなさんが読んでいるころには「鬼怒川にあった」という過去形になるだろう。というのも、この秘宝殿、展示物の老朽化および、それを修理できる人間がいないなどの理由から2014年12月31日を持って閉館がアナウンスされてしまった。
2014年12月現在、日本に秘宝殿(秘宝館)と呼ばれる世俗的性風俗の専門資料館は、熱海と鬼怒川の2館しか存在しない。日本に2つしかないもののうちの一つが地元に存在し、かつ、まもなく無くなってしまうと分かっているなら、それは是が非でもこの目に焼き付けておくのは近場に住む人間の義務に等しいだろう。という半ば使命感に駆られ、行くことを決意した。
バブル期には、まだ各地にポツポツとあったらしいのだが、私は生まれてこのかた、そういう所へ行ったことがない。なにしろ「秘宝殿」。名称が怪しいというか怖くないですか?受付でいきなり精力ギンギンで脂ぎったオヤジが赤褌を付けてニタニタ笑いながら「いらっやぁいぃ」とか言って出てきたら。あるいは、館内を見ていたら、いきなり身体中テカテカのオヤジが飛びついてきたら。もう完全にパニックでオイオイと泣くかもしれない。いや、絶対にそんな状況があるはずはないのだが、秘宝殿という響きが何か危ない匂いを醸し出しているような気がして、要するに怖気づいていたわけである。
しかし、今回は閉館という言葉が、秘宝殿という言葉に打ち勝った。仮にそんなことがあったとしても行かずに後悔するよりは行った方がいい、と(いや、だから、そういうことは無いんですけども)。
というわけで、車で高速を使って1時間ちょっと。じゃじゃーん、これが鬼怒川秘宝殿である。もっとボロっちいプレハブみたいなものを想像していたので、立派な鉄筋コンクリートの建造物にまず驚き。
そして、閉館前ということで平日にも関わらずお客さんが結構いる。決して多くは無いと思うが、受付の人曰く「いやぁ、ここ何日か忙しいよ」だそうである。この人数で忙しいなら、今までどんだけ暇だったんだよ、と思ったりもするのだが。まぁ、枯れた温泉観光地のイベントパークって、そんなものなのかもね。

ちなみに閉館前で入館料は半額の1000円。その他にもいろいろ館内の説明が書いてあるわけだが、漢字とカタカナの列挙という、この説明書きのセンスが怪しさを醸し出す原因なのかもしれない。それと、各種割引ってなんですか、各種って。こういうのが怪しさを醸し出しているのか?さすがに「各種」って何ですか、と聞く勇気はありませんでした。それから、写真には写っていないが18歳未満の入館不可だそうである。昨今の18歳未満なら、むしろ後学のために見てもよさそうな気もしたのだが。ちゃんとした資料館だし。せめて閉館前の今月くらいは。


さて、いよいよ入館。支払いの受付前に6畳くらいのスペースがあり、そこにいろいろな物がディスプレイされている。春画と土着信仰的オブジェクト(モニュメント?)が主。特に細かい説明書きなどは無いが、大体、ぱっと見てすぐに理解できるようなものが多い。さらに、受付の後もしばらくは、こうした物が展示されている。物が持つパワーというのは大したもので、これだけでも少なからず圧倒される感じがある。まして性風俗に関することなので、理性ではなく感性に直接訴えかけてくるような圧迫感である。
だがまぁ、大方、予想通りの陳列。秘宝殿という名称から私が想像するのは、こういうものが所狭しと置いてあり、猥雑に物がディスプレイされた部屋や通路が続くという感じ。


ところがどっこい、ここからが秘宝の本領発揮。角を曲がって薄暗い階段を上っていくと、暗い館内にドンドコドンドコという太鼓の音(?)が響き渡り、2体の人形が現れたかと思うと、その奥に天狗の面とオカメの面をつけた男女がマグワイの舞を踊るという映像(実写)が流れる衝撃の展開。ビビリな私は最初の太鼓の音で体がビクッとしましたね。いやマジで。本当に存在する踊りなのか、このために作った踊りなのかは分からないが、結構見入ってしまう。それが終わって次の部屋へ。そこで説明書きを見てやっと納得。「古代より連綿と続いてきたであろう男女の春色模様をリアルに体験」するという趣旨だそうである。「続いてきたであろう」という文章から、事実かどうかは不確定なわけだが、各マネキンの近くにはきちんと解説が付いており、資料から読み取れるものをある程度具現化させているということなのではないかと思われる。
ちなみに、上は、修行をしても性欲が抑えられず妄想してしまう住職の図。下は、戦地へ旅立つ前に別れを惜しんで妻とまぐわう武士の図。この他にも、豊臣の秀吉が下野へ来た時の乱痴気騒ぎとか、他人の混浴を覗き見して自慰行為をしてしまう女中とか、いろいろあり。本当はセンサーで反応して動くらしいのだが、私が見たときには特に動いている風ではなかった。閉館を知った時の記事でも展示物は壊れて動かないものがあると書かれていたので、そこはまぁ動かなくても納得。マネキンが超リアルな本気の作品なので、チープさは無く、動かなくても十分な迫力である。
そのあとは、ラブサイエンスコーナー。男女の性感帯の位置とか、性器の形成の違いとか、かなり医学的なパネル展示があるのだが印字したインクが退色してしまって読み取りにくいという(笑。
良いコーナーなのだが、そのため素通りする人が多くて、ちょっと勿体無いなと。
そして、最後が売店コーナーで、大人のおもちゃや、鬼怒川秘宝伝特製の手ぬぐいなどが展示してあるのだが、手ぬぐいは売り切れ。大人のおもちゃは販売終了だそうである。閉館前にいきなり人が増えて売れたらしい。何か買おうと思って少しお金を多めに持っていたので何も買えないのは残念だったが、まぁ、売り切れは良いことだ。


で、人形のような立体物に注目があつまり、最初に少し触れた春画は意外と素通りする人が多いのだが、実は一番衝撃的だったのが各コーナーの繋ぎなどで飛び飛びに展示されている春画(正式には枕絵と言うそうだ)。要するに江戸時代のエロイラストなのだが、その春画の絵師が、菱川師宣、葛飾北斎、喜多川歌麿という歴史や美術の教科書に登場する錚々たる面々。見返り美人とか富嶽三十六景とか歌舞伎役者などでは有名だが、じつは浮世絵の絵師は、みんな春画も大量に描いているというパネル解説がされている。今風の言い方をすれば、ワンピースの作者はエロ漫画もバンバン書いているという感じかもしれない。きちんと数えてはいないが、おそらく50枚以上は展示されているだろう。もちろん複製の印刷物ではなく版木で刷り上げてある本物である。この史実と資料が在るだけでも、鬼怒川秘宝殿が存在価値は極めて高い。
2014年をもって鬼怒川秘宝殿は閉館してしまうわけだが、これだけ多くの物、特に歴史的資料が閉館により散逸してしまう可能性があるのは、誠にもって惜しいことだと言わざるを得ない。出来ることなら秘宝殿でなくても良いから纏めて見られる場所を、日光市はきちんと確保しておくべきではないかと真面目に思った。あるいは、全て纏めて唯一残存する熱海秘宝館へ移譲するという手もあるだろう。
最初は、正直、すこし怪訝に感じていた鬼怒川秘宝殿だったが、実は、大真面目に風俗と歴史を直視し、様々な角度から分析、紹介している誇るべき資料館だった。
重ね重ね言うが、閉館は実に惜しいことだと思う。

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