Voigtlander NOKTON Classic 35mm SC


覚えている限り、おそらくこのブログでカメラの話をしたことはないと思うが(猫田さんの日記を除く)、今回は、ちょっと書かずにはいられなかった。カメラをやっていない人には、全く興味の無い話だと思うのだけれども。
それを察してなお、書きたくなってしまったレンズ。それがVoigtlander(フォクトレンダー)のNOKTON(ノクトン)Classic35mmSC(シングルコート)。2012年発売なので、クラシックという名前とは裏腹にかなり新しいレンズなのだが、往年の銘玉レンズを標榜し、今、持てる技術を全力投入したという設計思想。それがクラシックの意味するところらしい。
ところで、写真を撮る目的は人によって様々だと思うが、私が写真を撮る(というか、正確には写真機を扱う)基準は、その時の空気を写真に収めたいということに尽きる。つまり撮影した時の空気が写真に感じ取れるかどうか、という一義なのだ。モチーフの良し悪しとか、凝った構図とか、適正露光云々とか、あまりそうしたことは気にせず(まぁ、結果的にそういうことが空気感を作る個々の要素にはなってくるのかもしれないが)、むしろ空気の量とか重さとか温度のようなものを写真から感じたいわけである。そのために、どんなカメラ、どんなレンズを使うかという選択が生まれてくる。
これまで自分のそのニーズに最も合っていたカメラはNikonのカメラ(一番使ったのがD90)で、これと、その時々に合わせ種々のレンズを毎日カバンに入れて持ち歩いていたのだが、今年の夏からは富士フィルムのX-M1に切り替えた。小さくて非常に操作性が良い事に加え、吐き出す絵の空気の含み方が、私にとっては完璧の域に達していたからだ。これを買ってからは現像アプリでの調整は全くせず、ほとんどがカメラ現像のJPEGで十分。ちょっと色に深みが欲しい時だけRAWから無加工でJPEG変換させる程度。それくらい今のところ信頼を寄せている、というか、もうこれ以外には考えられないほど惚れている。(たぶん、もっと高いカメラを買うことが出来れば違う感想も出てくるのだろうが、まぁ、稼ぎの少ない人間で手が出せるのは、ここまでだな、という前提はある。レンズもほとんど新品ではなく中古だし。)
で、レンズである。そういわけで、これまではほとんどがNikonのFマウントのレンズだったのだが、X-M1にしてからは、ライカのMマウントも気軽に使えるようになった(マウントの説明は長くなるので省略)ため、あまり使用頻度の高くないニコン用のレンズは思い切って売り払い(結局、残したのは3本だけ)、そのお金で今回購入したのがNOKTON Classic 35mm SCである。ちなみに新品。富士フィルムの銘玉、フジノンレンズXF35mmも持っているので画角がかぶるからどうしようかなぁと悩んだのだが、実は私、Nikonの頃からフォクトレンダーLOVEなので、悩みはしたが結局、買ってしまった。
結果的には紛れも無く正解。この個性的でありながら、とんでもなく空気を含んだ絵を作れるレンズ。毎日、抱いて寝たいほどである(そんなことをしたら、きっとカビるのでしませんけど)。
現在のデジタルカメラ用レンズの主流はエッジが効いて高彩度、高解像度が好まれているのだが(フジノンレンズXF35mmは、このタイプ)、NOKTON Classicレンズは全く異なる価値観を提示する。無論、解像度は高いし発色も良いのだが、今時のレンズが得てして物質の色をそのまま捕らえる感じなのに対し、こいつは物に光が当たって、そのこぼれた光を集めてくるようなレンズなのだ。あぁ、色というのは光の反射によって生まれるものなのだなということを改めて教えてくれる。しかも、露出をローキーにすると影の暗さを持った重厚な色、ハイキーにすると若干セピア混じりで彩度の低いクラシカルな懐かしい感じの色といった、まるで異なる表情の絵作りをする。ここまで露出で絵が変わるレンズも珍しい。(個人的には、露出をハイキー、X-M1をVelviaに設定したときに撮れる、実に雰囲気のある絵が良い感じ。)さらに、絞りを開放にすると溢れる光を集めて絵にフワッと乗せたような感じなのに、絞っていくとどんどんエッジが立ち上がりジグソーパズルのピースをはめるように個々の要素を所定の場所へ収めた感じに変化していく。その変化の手際が一級の職人の仕事を見ているような気持ちよさで、それが絵に独特な手触り感のある空気を作り出すのだ。
ちょっとこの人、おかしくなったんじゃないかと思われるかもしれないが、いやいや、使ってみると、たぶんこの文章は納得して頂けるのではないかと思う。
とにかく楽しい。そして素晴らしい。あまり神という言葉を使うのは好きではないが、このレンズを作った人々は正に神だと言っても過言ではないだろう。本当に素晴らしい。有難うコシナの職人さん。
もし、購入を悩んでいる人がいるなら、迷わず買っていじり倒すべきだと私は思う。
ってことで、NOKTON Classic35mm SCで撮った猫田さん。

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