修理用漆の混合比

金継ぎ修理で使用する漆と水の混合比を知りたいという問い合わせが何件か来たので、書き添えておこうと思う。
問い合わせでは、ほとんどの方が企業秘密と思っている節があるようだが、順列組み合わせで機械的に試してみれば見つかる結論だし、出来ればさらにベターな方法を誰かに見つけて欲しいという希望もあるので、特に守秘事項として扱う必要はないと思う。おかしな嘘さえつかなければ、自由に転載して頂いても構わない。と、メールでいちいち返事をするのが面倒になったので、前置きとして書いておく。
それから、使用する水については、どの種の水を使えばベターなのか現在調査中のため記述は控えるが(極論としては、その漆が生息していた土地に降る雨水を濾過したもの、あるいはその土地の地下水が一番と思われるが、それはあまりにも現実的な選択ではないので)、普通に水道水で問題はない思う。塩素などが気になる方は、湯冷ましや浄水器を使えばいいだろう。私は現在、依頼品については浄水器などを通さず普通の水道水を使っている。修理箇所に塩素が残留して漆に悪さをしないと断言は出来ないから、ものすごく心配な方は、浄水器を通したほうが良いのかもしれない。
なお、これは私が修理のために用いているMR漆を使用した場合の比率であり、生漆や他漆の場合は多少比率が異なる可能性がある。また修理をするために現状ベターと思われる数値であって、ベストな比率および漆芸にベストな比率を保証するものではないので、その点、ご了承頂きたい。
並びは使用順および混合順。比率は重量比。
グルテン漆(接着用)
 漆:6
 水:1〜2(2の方がグルテンの粘りは付きやすい)
 グルテン粉:1
さび漆(欠損充填用)
 漆:2
 水:2〜2.5(砥の粉の質、主に粒度が販売元により異なるため)
 砥の粉:6
加水炭漆(最下地用。さび漆や釉薬面に密着しやすい。初期硬化が早い。)
 漆:10
 水:3
 木炭:3〜4
加水漆(平滑面作成およびヒビ埋め用。最大50%まで加水して粘度を落とす事も可能だが、混合の難度が高く、浸透しすぎて素地を着色する危険があるので注意が必要)
 漆:10
 水:2
金蒔き下地漆
金を蒔くための下地漆は、漆とベンガラ(酸化第二鉄)を混ぜるが、ベンガラは着色剤として使用するので、比率はあまり気にする必要は無いと思う(無論、多すぎは良くない)。
また、出来るだけ時間をかけて綺麗な線を引くため、私は加水による硬化速度の調整はしていない。よって金蒔きの後だけはムロを使う。
ただし、ムロに入らない大きな品物や、趣味でやりたいだけなのでムロを作る金や場所は無いという場合、漆に対して10%以下の水分添加は可能。それ以上に加水すると流動性が高くなり、金粉を蒔いた時に粉が沈んでしまうことがあるのでやめたほうがいい。

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