漆と混ぜる

珍しく2日連続でブログ更新である。更新の遅延を改心したわけではなく、長すぎて2日に分けたというのが実情だけども、まぁいいだろう。
昨日、漆に水分を加えて練ると硬化が早くなるという話をした。私は空気中から漆が取り込む水蒸気を、先に添加して強制的に混ぜてしまうからだと思っていたのだが、本によると水分の添加によって漆の重合が促進するからだそうだ。入り口は違うが、結果、出口は同じになったということだろうか。
そこで、ハタと気付いたことがある。以前、グルテン漆の話をした際に、漆と粉グルテンを先に混ぜてから水分を加えると非常に混ぜやすいということを書いた。ずっとそれでやってきて何も問題はなかったので、その方法でも間違いではないはずだが、今回の加水漆の一件で、実はグルテン漆を作る場合、漆に水を加えて練ってから最後にグルテン粉を入れるのがベストではないかと思うようになった。もし、水分と漆で重合が促進されるのだとしたら、まず、水と漆を十分に反応させ、さらにグルテンの繊維で粘りを作る方が硬化の手順として合っているように思うのだ。そもそも、漆は単体でも十分な接着剤として機能する。元々、私は漆だけで器の接着を行っていたくらいなのだから、グルテンは、あくまでも接着の補助剤と考えるべきなのだろう。そうすると、まず、漆そのものを完璧な状態にチューニングし、そこに補助剤を加えて、より完成度を上げるという段取りが正しいように思う。
ついでに、パテとして使う錆漆も同じだ。錆漆は、普通、砥の粉に水を加えて練り、それから漆を加えるとハウツー本には書かれている。実際、これ以外の方法で混ぜている人は皆無だろう。これは硬さを感覚的に調整するには良い方法なのだが、私の場合、砥の粉と水と漆の混合比率は実験から重量比2:2:6が基準になるという結論を得ている(これよりも漆が多いと硬化でシワが寄るし、逆に少ないとパサついてヒビが入る)ので、硬さを感覚的に掴む必要はなく、重要なのは混合の順番だということになる。
よって、グルテン漆にしても、錆漆にしても、水と漆を十分に反応させてから添加物を加えるというのが理屈に合っていると思うし、実際やってみると、びっくりするほど高速硬化する。ある意味、漆はなかなか乾かないという定説を覆しているとすら思う。
ちなみに、水と漆が混じったかどうかは、混ぜているときの色を見れば一目瞭然だ。
漆は水と油をゴム質が結びつけた混合液なのだが、MR漆は仕上げ用の漆なので油分の比率が高い。そのため最初は水と馴染まず水滴が浮いている。泡が立たないようにゆっくりとヘラで混ぜていると、やがて白濁してクリーム色になる。生漆に似た色だ。(ということは、生漆は漆と水分が混じらずに分離している状態ってことか。)さらに、しばらく辛抱して混ぜていると、ある時から急に白濁色が消えて薄飴色になり、徐々に色に深みがでて濃飴色になる。もっと練っていると(たぶん重合が始まって)かなりの粘りが出てくるのだが、ここまで練ってしまうと筆で塗った時に刷毛の跡が消えないので、その一歩手前で止めたものを使うと、塗りやすい。
おそらく混ぜる順番など気にしている人はいないと思うが(最終的には、きちんと混じっていれば同じなのかもしれないし)、私は少し前から、この方法を続けている。強度が同じで作業効率が上がれば、仕事としては御の字ではないかと思うし。

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