修理とエコロジー

いい加減に「アホか」と突っ込みを入れてもいいんじゃないだろうか。エコロジーブーム。
中古パソコンに付属していたマウスが認識不能になってしまい、分解して掃除をしてみてもポインターの動く気配は無し。仕方なく新しいレーザーマウスを購入してみたのだが、これがまたハズレを買ってしまったみたいで、1ヶ月で反応が悪くなった。
で、とりあえず保障期間内なので、電気屋に持っていったら、「エコポイント」「エコポイント」って張り紙が多数。テレビも新聞も、最近、めっきり見ていない生活をしているので、エコポイントって何やねんと思って調べたら、政府の推奨家電商品を新しく買うと、次の買い物から使えるポイントが貰えるってことらしい。でもこれ、表向きはエコロジー推進らしいんだが、結局は低脳(あえて低脳と言わせてもらうが)な消費刺激策。
「この前買った冷蔵庫よりエコなの?」とか店員に聞いてるおばさん居るし。なんだかもう、悲しいを通り越して、呆れるも通り越して、深遠な淀みにハマって抜けなくなった気分。エコロジーを意識するのは良いことだと思うが、何でそれを消費刺激と結びつけるんだろうなぁ?おかしくないか?買換え需要を盲目的に増やすってことは、無意味にゴミも増えるってことだろう。エコポイント欲しさに、使える家電を捨てて買い換えるのは本当にエコなのか、政府機関。せめて地デジ液晶テレビ購入にエコポイント付けるくらいなら、今のテレビに取り付ける地デジチューナーにポイント付けるのが本筋ってもんじゃないのか。
ETCにしても、交通量増えたらCO2が増えるだろ。CO2を減らしましょうって言ってる傍からCO2の増大計画を無理くり推進だよ。あぁどうなってんのかねぇ。
って、ここまでは枕。本題はここから。
この前、ネットサーフィンをしていたら「金継ぎはエコロジーです」ってサイトがあった。で、私、ディスプレーの前で完全ブチ切れ。金継ぎを安っぽいエコロジー感情と結びつけて商売すんなって、あぁ声を大にして言いたい。いや、言わせてほしい。言っておかなければいけない。そうしないと勘違い金継ぎ野郎が増えてしまう。
私はこれまで、金継ぎがエコロジーだと言ったことはおそらく無い。どんな問い合わせに対してもエコロジーと金継ぎを結び付けたりはしないし、今後もするつもりは全くない。陶器の修理は、あくまでも、捨てられないという器への想いに対して行うものだ。環境問題のタームとして修理を安易に持ち込むべきではないと思うし、まして、修理オンリーで商売を考える人間はエコを簡単に口にしてほしくない。絶対に言って欲しくない。そもそもエコロジーは「生産、消費、廃棄」のバランス調整があって成立するものであって、どんなに修理が普及しても、このバランスが崩れていれば環境は破壊され続ける。エコロジーという甘い言葉で陶器の修理を飾ってはいけないのだ。
むしろ修理もバランスを崩す要素の一つになりうると言ってもいい。
金継ぎのサイトでは皆無に近い話を書いておこう。金継ぎに使用する主たる材料が漆だ。この漆、漆木の樹液だということを知っている人は多いと思うが、では、この樹液の採取がどのように行われているかを知っている人は少ないと思う。漆の樹液は、漆木が自分の傷ついた表層を覆うために染み出てくる。指を切ったときに出た血液が固まって傷口を塞ぐのによく似ている。この性質を利用し、人為的に漆木にキズを付けて樹液を抽出するのが採取方法だ。だが当然、樹液は無尽蔵に出てくるものではなく、樹液を出し尽くしてしまうと漆木は枯れて死んでしまう。昔の日本では、漆木が死ぬことの無いよう「掻き子(かきこ)」という専門の職人が、細心の注意を払って樹液の採取を行っていた。このように樹木を生かしつつ樹液を採取する方法を「養生掻き(ようじょうがき)」という。しかし採取の効率向上のため、現在では職人を必要としない「殺掻き(ころしがき)」が主流になっている。読んで字の如く、これは樹液を短期間で大量に採取し、漆木を枯らしてしまう方法だ。枯らした樹木は木材原料として使用することになると思うが、いずれにせよ事実上は漆木の大量伐採が行われていることになるわけだ。
金継ぎで使用する金も同様。話が長くなるから、これは日経ビジネスオンラインの記事を読んでいただくとして、何となく平和的に感じる金継ぎも、現代では山積した問題の上に成り立っていることは肝に銘じなければいけない。
私は曲がりなりにも陶器を作る陶芸屋だ。自分が生産販売し、消費される器の行く末を最後まで看取る覚悟があって、金継ぎを行っている。だからこそ、陶芸をやる人間は義務として器の修理を行う技術を一緒に習得すべきだと言い続けているわけだが、大量消費による甘い汁を夢見る現代の陶芸屋は、なかなかそのことに納得しない。それに加えて「金継ぎはエコロジーです」と声高に企業宣伝をする似非エコロジスト集団の登場である。私が何故、ディスプレーの前でブチ切れたかはご理解頂けたのではないかと思う。
もし近くに「金継ぎはエコだから、やってみようかなぁ」なんて人がいたら、「金継ぎって本当にエコなの?」と言って頂きたい。頭ごなしに金継ぎがエコロジーだと思わず、しっかりと考えた上で金継ぎをやってこそ、江戸時代とは違う現代の金継ぎ、陶磁器にとっての本当の金継ぎというものが成立するのではないかと思う。金継ぎをやるなと言っているわけではない。やるなら、それなりの覚悟を知ってやってほしいのだ。

2件のコメント

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; en-US) AppleWebKit/525.19 (KHTML, like Gecko) Chrome/1.0.154.53 Safari/525.19
    全く同感です.今のアホなエコブームはなんとかしてほしい.トヨタのCMなんて腹立たしいです.「エコ替え」?車の生産と廃棄が急に増える方がまずいでしょうが.それこそもったいない.今走っている車のほとんどは昔よりも排気性能がいいんだから,それをさらにハイブリッドに買い替えたって仕方ないと思います.
     「もったいないから使う」「愛着があるからなおして使う」と今のエコブームとは全然違いますよね.

  • AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    ご賛同のコメントを頂きましてありがとうございます。
    ほんとにねぇ。困ったもんです。
    私個人的には、消費が冷え込んでいるというよりも、むしろ適正な消費になりつつあるんじゃないかとすら思っているんですよね。
    そろそろ大量消費による景気循環に未来はないって、舵を取る立場にある人が言うべきでしょうね。それが言えないほど頭の固い人間なら、舵取りしたらアカンと思いますね、ぶっちゃけ。

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