不真面目の真面目

私は、酒もタバコもやらない。多少(というか多分に)体質的な問題もあるが、基本は自発的に飲まず吸わずということにしている。何かの話の中でこういう話題になると、十中八九「真面目ですねぇ」と言われる。そして、間違いなく次に続く質問が「じゃぁ、ストレス発散ってどうしているんですか?」である。
おぃおぃ、私の基本は不真面目に生きることだ。30歳を過ぎてから、それもアリかな、と思い始め、自営業の陶芸屋になるときに不真面目に生きようと心に決めた。
だって、酒やタバコをやっている人のほうが、それをやらない人より何十倍、何百倍も真面目だと思いませんか、みなさん。酒以外の食べ物はいらないとか、空気を吸わなくてもタバコ吸っていれば幸せなんていう人は除外するとして、大抵の場合、酒を飲む理由って、ストレス発散とか人付き合いでしょ?裏を返せば、発散しなければならないストレスを抱えるほど、日々、真面目に生きているわけでしょ。酒の力を借りて愚痴らなければならないほどの嫌な思いを、我慢して腹に溜め込むわけでしょ。更に、わざわざ自分の人生の中の貴重な時間を切り分けて、それを酒の付き合いに使ったりもする。車に乗りたい衝動を抑え、歩いたり、金を払ってタクシーに乗って帰らなければならないリスクを承知で居酒屋へ足を運ぶ。しかも、死ぬまで、そういう生き方を永続させることを無意識的に選択までしている。社会性だと自分に言い聞かせながら。タバコだって似たようなもんだ。それって、どう考えても真面目な人間にしかできない所業だと思う。私には、到底、出来ることじゃない。そんな人生を強制されたら、たぶん5秒も経たず、殺虫剤を浴びた虫のように死んでしまうと思う。だから不真面目に生きることにした。その結果として、酒もタバコも私には必要が無くなった。それだけのことだ。真面目というのが社会に向かって開くベクトルで、不真面目が逆方向のベクトルだと仮定するなら、私は間違いなく不真面目に属する。
と、そこまでは前置き。ここからが本題。
そういうわけで不真面目を人生を中心に据えた私なのだが、陶芸に関してだけは、自分でも真面目でいたいと思っている。
先日、おまえはバブル時代の遺産かと思いたくなるような自称デザイナーから「絶対に売れる器のデザインがあるんだけど、このデザイン、買わない?」ってな電話があった。いや、実際にはこんなに端的な話ではない。もっと、まわりくどい話から始まって、結果、そういうことが言いたいんだろうと私が結論づけた。今にして思うと新手のオレオレ詐欺じゃないかと思ったりするが、これまでいろいろと怪しい電話はあったにせよ、こういう切り口は初めてだったので、思わず話を聞いてしまった。しかし、この自称デザイナー、全く陶芸というものが分かっていない。仮に詐欺ではなく本当にデザイナーだったら、間違いなく詐欺的なデザイナーだ。
で、私は陶芸に関してだけは真面目である。が、人生は不真面目だ。酒の力を使わなくても言いたいことは溜め込まずに言って、その場でストレス発散してしまう。だから電話口でちょっとだけ軽めにキレた。
「あのですね、デザイナーの仕事ってそれだけですか?陶芸って形を作って売るだけだと思っているんですか?いや、今までの陶芸は確かにそういう側面が多分にあったと思うんですけど、これから陶芸をデザインしていくなら、良い感じの器を考えるだけじゃ消費社会を助長するだけと違いますか?デザインってもっと社会的なシステムまで計画するもんでしょ?陶器を作るなんて、今時は誰にでも出来るんですよ。陶芸屋から金を取ろうと思うなら、作った後のことまでのコンセプトをきっちりと計画して提示して下さいよ。売り方とか販売網とか、そういう短絡的なことじゃないですよ。その器を買った人が長く使っていくための仕組みとか、もし、その器がいらなくなったときには回収できるシステムが作れるかどうかとか。いらなくなった器を社会に再循環させるための可能性や方法まで思索しているとか。形がエコっぽいユニバーサルデザインだなんていう偽善で物を作っても、それは詐欺ってものですよ。私のような売れない陶芸屋だって、それくらいのことは考えて器を作っているんです。デザイナーだったら、それよりもずっと先進的な所で器のことを考えてから話を持ってきてくれないと。私はデザイナーが嫌いとか、そういうわけじゃないんですよ。デザイナーって、自分よりもずっと未来を見ている人だと思っているんですよ。要するに憧れなんです。」
って、言おうと思ったんだが、実際は「形がエコっぽい。」辺りで電話が切れてしまった。うーん、残念。2度と電話がかかってくることはないと思うので、仕方が無いからブログに最後まで書いてみた。実際、こういう詐欺的デザイナーっているんだろうか?こんな個人事業主まで電話してくるような人はいないと思うけど、もうちょっと大きな所へ真面目に話を持っていく人は、案外、居たりするんだろうなぁ。100円ショップとか巣窟な感じもするし。牛乳パックや発泡スチロールトレーの回収箱を置いている100円ショップなんて見たことないもんね。少なくとも栃木では。
ま、仮に詐欺的デザイナーから電話を受けてしまったという陶芸屋さんがいましたら、上記の内容を言うと電話を切ってくれますから、フォーマットに使ってみてください。っていうか、出来れば本当のデザイナーさんを相手にしている陶芸屋さんも、フォーマットにして下さい。お願いします。

2件のコメント

  • AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    考え方、共感できます。
    これからも頑張ってください。

  • AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; GreenBrowser)
    どなたか存じませんが、共感のコメントを頂きありがとうございます。
    頑張ります。っていうか、不真面目を明言した手前、頑張るほど頑張りませんけど、とか言った方がよかったのかな?
    それはさておき、このブログはコメントが付かないので(読む人も少ないから当然ですが)、キーボードを叩いていてエンターキーを押していただけただけでも非常に嬉しい限りです。ありがとうございました。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です