隙間テープ式工法 その1

聞くところによると毎日新聞栃木版に私の記事が掲載されているらしい。「らしい」というのは、未だにその記事を読んでいないからだ。「MOTTAINAI(もったいない)」という特集をやっていて、陶器の修理がコンセプトに合うので話を聞きたいということで30分ほど話をした覚えはあるが、かなり前のことだったし、記事になるかどうかも分からないという感じだったので、ほとんど忘却していた。最近、周りの人から「新聞で見ましたよ」と言われて初めて、自分の記事が掲載されているのを知った。新聞掲載されている割に、修理の問い合わせは無いし(新聞に載っても影響力が少ないことは周知なので、まぁいいけど)、掲載紙は送ってこないし(いちいち話を聞いた人間に掲載紙を送るほど新聞社も暇じゃないから仕方がないか)、掲載の連絡も無いので、一体、いつごろ掲載されていたのかも分からず。まぁ、悪いことをして新聞に載ったわけじゃないからいいんだけども、どんなことを書かれたのかは気になるなぁ。曲がりなりにも記事の主役じゃん、俺。なのに蚊帳の外ってどういうことよ。
と、愚痴を書いても仕方がないので、それはさておき、以前に隙間テープからヒントを得た金継ぎの錆漆の話をしたと思うが、その経過報告を書こうと思う。ちなみに、これは、粘着層とスポンジ層の2層から成る隙間テープと同じように、グルテン漆の粘着層と錆漆層の2層で穴埋めをすれば、錆漆だけで欠損を埋めるよりも接着強度が高くなるんじゃないかということで実験している金継ぎの充填方法。
結論から言うと、きちんと処理すればたぶん強い。「きちんと処理すれば」というのが肝で、隙間テープ式工法は、今のところ当たり外れが非常に大きい。いや、正確に言うと分量調整が非常にシビアだ。それゆえ、本当に接着力が上がっているのかどうかの検証がしにくい。
というのも、グルテン漆で粘着層を作った後、以前に記載した錆漆混合比「砥の粉:水:呂色漆=60:20〜25:25(重量比)」をそのまま乗せると、錆漆が硬化しないことが多い。原因はいくつか考えられるが、おそらく最大の原因は漆の量が多すぎることによると思われる。上記の錆漆は、砥の粉と水と漆を様々な比率で加えて、十分に硬化し、かつ縮れが発生しない臨界を探っていく中で出来たものだ。よって、この比率が崩れると、硬化強度が落ちて脆くなったり、硬化時に縮れが発生してしまう。錆漆だけで使用する時には、この比率がおそらくベストではないかと思うわけだが、グルテン漆の上に塗ると、錆漆の砥の粉が下層の漆を吸い込んで飽和するらしく、混合比が崩れてしまう。それゆえ、全く硬化しない。
ならば、錆漆に含まれる漆の量を減らせば良いという当然の発想が生まれるわけで、確かに漆の量を減らしたところ、硬化しないという状況は回避できるのだが、今度は漆を吸い込まなかった部分がヒビ割れを起こす。陶芸をやったことのある人なら知っている作品乾燥で発生するおなじみの現象だ。砥の粉は磁器原料の磁土と同じ性質を持っているから、表層と内部の保水差が大きいと収縮時間にズレが生じ、先に乾燥収縮した表装にヒビが生まれる。錆漆の場合、保水差ではなく保漆差によってこの現象がおそらく起きている。
一難去ってまた一難だが、この回避策はすぐに思いつく。グルテン漆(粘着層)を塗った後、漆の少ない錆漆(錆漆A層)を塗って粘着層と密着させ、その後に最適混合比の錆漆(錆漆B層)を乗せれば、密着力がありヒビも入らない欠損充填が出来るはずだ。理論上はこれでOK。しかし、実際にやってみると、これがそう簡単ではない。何故なら、粘着層と錆漆A層と錆漆B層の関係が非常にシビアだから。もう少し詳しく説明すると、粘着層は接着断面の凹凸の大小で使用量が上下する。凹凸が大きければ結果として粘着層は増え、凹凸が小さければ層は減る。錆漆層Aの硬化は粘着層の厚みに影響されるので、錆漆A層を調整するわけだが、ここで厚みを読み違えたまま錆漆層Bを乗せてしまうと、錆漆層Aと錆漆層Bとの密着力が落ちてしまう。概ね接着はしているが、硬化後の水没実験で密着力の違いは如実に表れる。もちろん、上手く密着すると水没させても取れたりはしない。
慣れることで失敗を回避しやすい勘を養うことは出来るかもしれないが、私は基本的に慣れに頼るのは好きではない。100%とは言わないが、誰がやってもそれなりの結果が出る程度の方程式は必要だと思う。
さて、この問題はどうしたものか。とりあえず今回はここまで。解決方法が見つかり次第、追って報告したいと思う。

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