陶磁器偽装

ここのところ食品偽装問題でメディアは連日大賑わい、らしい。最近はめっきりテレビを見なくなったのだが(部屋のテレビのリモコンを踏んで壊してしまったのに、全く不便を感じない程度までテレビを見ない現状も、どうかと思ったりする)、とりあえずYahoo!ニュースをチェックする限り、頻繁に偽装ネタが掲載されているからテレビも凄いんじゃないかと察する。食っても腹を壊さず、かつ、原価に見合った売値なら、多少の嘘があっても私は別に目くじら立てるほどじゃないと思うわけだが、要するに利ザヤの大きい嘘をついたところが問題なんだろうね。
ところで、あまりにも当たり前すぎて陶芸屋は誰も指摘しないが、陶芸では、(おそらく)昭和時代から偽装は公然と行われている。贋作というレベルではなく、その前の段階だ。私は陶芸を始めたころから不思議に思っていることなのだが、なぜか陶芸界は焼き物にしっかりとした定義付けを行うということをしない。(産業発展のためには定義付けをしないほうが安全だという空気があるのかもしれないけど)そのため、正確に偽装とは言えないのかもしれないが、普通に考えれば偽装だと思う。
その最たるものが「○○焼き」というやつだ。例えば益子焼き。普通、益子焼きと言われたら「使っている粘土=産地の粘土」と考えるように思うが、実際のところ、益子焼きとして売っている器には益子産の粘土はほとんど入っていない。いや、うちはきちんと益子で売っている益子粘土を使っているという人がいるかもしれないが、益子の粘土は組合が管理し、販売する粘土には中国や東南アジア、オーストラリアなどさまざまな国から輸入した粘土をブレンドしている。(正確には粘土だけでなく、長石や珪石などの石、さらに着色のための金属も入っている。)混合配分は企業秘密らしいが、聞くところによると、益子の原土はかなり少量らしい。最近、輸入粘土の高騰で、ちょっと益子原土の比率増やしたと組合は言っていたが。なんだそれ。(ちなみに、地鶏の定義は国内在来種の血統が50%以上ということなので、その定義を陶芸に当てはめたら、粘土を買っている益子焼きの作家が作る器は益子焼きではないということになる。ま、それは極論だけど。)益子に限らず多くの陶芸産地が売る粘土はブレンドと考えて間違いない。ほとんどオリジナル土が入っていない粘土が多数あるという話は、10年前に粘土精製業者から直接聞いたから、今でもそれは変わっていないと思う。
ただ、陶芸屋という側面から話をさせていただくと、そもそも、地面から掘り出して精製し、すぐ陶芸に使える粘土の埋蔵量なんていうのはたかが知れているし、産業として確立するためには、さまざまな原料をブレンドして安定性を高めておかないと損失率が高くて採算ベースに乗せられる状態にはならない。原土から自分で精製して器を作ってみると誰でも分かる。これだけの陶芸家が器を作って食いぶちに出来たり、陶芸趣味が産業として成立したり、100円ショップで陶磁器が買えるのは、血のにじむようなブレンド技術の向上あってこそである。一定のクオリティーを維持するために毎日、世界の粘土をブレンドして研究している窯業者に、陶芸屋は足を向けて寝ることは出来ない。
が、そこまできちんと説明をして器を作ったり、売っている業者は皆無である。いや、むしろ○○焼きの粘土とか、土の味という売り文句で、変にブランドを付けて売るところまである。益子も例外ではない。しかも、益子焼きなのに、実際、益子町内で焼いていない物まであったりするから、状況はさらに複雑かつ深刻だ。ミートホープや船場吉兆を、陶芸関係者は対岸の火事と思っていてはいけないんだが、本当は。
とりあえず、産地名の付いた焼き物をブランドとして認知させようとするなら、少なくとも産地が焼き物の定義をきちんと行って、ある程度の線引きはしっかり自分たちで行う必要があるんじゃないかと思う(粘土の混合率をブランドの定義にするべきかどうかは分からないけど)。それで自分の首を絞める状況が生まれたとしたら、そこが平成の陶芸産業の本当の始まりだし、それが本当の陶芸ブランドってことになるんだろう。
でも、そういうことをやる産地はないだろうなぁ。いまのところ、きちんとこういう定義とか線引きをやっている団体が、美濃のグリーンライフ21の「Re食器」だけってのは、じつに悲しい限りだと思う。

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