経過報告

ちょっと前に、漆とグルテンを混ぜると強力な接着剤が作れる、という話をしたが、あれから少しだけ進展があったので、報告。
まず、前回、小麦から取り出したグルテンと適当に混ぜて作ったグルテン漆だが、約40時間の浸水でガラス面から剥離した。麦漆や漆単体が20時間弱で剥離するので、倍の耐水強度はありそうだ。適当に混ぜたので、あくまでも参考値ということで。
さて、本題。
小麦粉からグルテンを取り出すのは、やはり面倒だし無駄が多いということでグルテン粉を買うことにした。しかし、さすがド田舎。デパートの食品売り場、大型ショッピングセンターの食料品売り場、駅近くの食料品店とまわってみたのだが全く入手不可。結局、地元での購入は無理と判断し、インターネットで買った。夕方に申し込んで次の日の午前中に届く。早い。グルテン粉探しのときに買っておいた密閉瓶にすぐに移し替え、準備万端。
で、途中の苦労話を長々と書いても面白くないと思うので、結果と補足だけ書くことにする。
まず、グルテン粉と漆の混合方法について。粉と水を混ぜた粘性物に漆を混ぜるというのは、非常に苦労する。これは麦漆にも言えることだが、グルテン粉の粘りは、小麦の比ではない。そこで発想を転換して、粉と漆を先に混ぜて、最後に水を加えてみたらどうかと考えた。やってみると、あの苦労は何だったのかと驚くほど楽にムラのない混合が出来た。グルテン粉を漆に混ぜても粉が分散するだけで粘りは出ない。ザラザラするだけ。なので、この段階でグルテン粉を漆中に均一に分散させることが出来る。小麦では試していないけれど、麦漆を作る時もこの方が楽なんじゃないのかな?職人でこういう混ぜ方をしているのは聞いたことないけど、何でだろう?
次に、混合比だが、結論から言うと、グルテン粉:水:漆=1:1:6(重量比)が、いまのところのベストではないかと思う。グルテン粉:水=1:0.6くらいでも粘りに大きな違いはないので(食べるわけじゃないから、食感とか関係ないし)、この辺は適当でいいのかもしれない。ただ、水の量が多くなると飽和した水分が接着後に浮いてくるので、1:1あたりが適当だと思う。同じ理由で、漆の量も比率6を超えると、接着後に漆が浮いてくることが多い。前回のグルテン漆の話の時に、接着剤として見るとグルテンの編み目構造と漆の硬化性がポイントだと書いたが、そこから考えると、グルテンの編み目を漆が奇麗にコーティングした状態あるいはグルテンの網目の隙間に過不足なく漆が浸透している状態で、接着面に塗れる粘度であることがおそらく接着剤としてベストではないかと考えるので、総合的に比率6辺りが良いのだと思う。粘りが強いので少し扱いにくいが、比率5でも一応可能。
なお、この比率で作るグルテン漆は、とても粘っこい。何しろ接着後にマスキングテープで補強しておかなくても形が壊れないほど(一応、怖いからマスキングテープで補強するけど)。よって、破損面に塗る時は、とにかくヘラで薄くなるように何度も小削ぎ、接着するときはしっかりと圧着させるのがコツ。モッタリと付けてしまうと接着誤差が大きくなる可能性がある。まぁ、力を入れて圧着させれば、余計なグルテン漆ははみ出てくる(粘っこいけど流動性はある)けど。
ところで、この比率の実験をやっていて分かったのだが、グルテン粉:水:漆=1:1:1にすると、弾力性のある耐水樹脂(?)を作ることが出来る。いつまで経ってもプニョプニョして乾かないなぁと思って塊をカッターで切ってみたら、中も乾いていたので、これは漆が未乾燥でプニョプニョなのではなく、グルテンの弾性が残るんだということに気がついた。で、この時に閃いたのだが、漆に対してグルテン粉の量が増えると弾性が残るということは、言い換えれば、天然の耐水弾性接着剤が作れるということだ。弾性接着剤の話はかなり前にも少し書いたような気がするが、異なる材質の接着や、耐衝撃性と剪断性に効果があり、最近よく目にする変成シリコンやシリル化ウレタンの万能接着剤(ウルトラ多用途)と呼ばれるものが、このタイプ。ということは、ある程度の耐水性が必要で、かつ天然素材で弾性接着を行いたい場合には、粉比の多いグルテン漆を使えばいいということになる。陶器の修理の場合は、弾性よりも硬性の方が必要なので、今のところ、グルテン漆の弾性についての試験には手を付けていないのだが、将来的には何か役に立つことがあるのかもしれない。
それから、前回のコメントで、錆び漆にグルテンを混ぜたらどうだろうか、と疑問を呈して、その後のコメントにシワが寄ってしまうから使い物にならないと書いたのだが、グルテン粉で混合すると、接着力と硬度の高いシワ無しの錆び漆が作れることだけは分かった。ただし、硬化に時間がかかるのと、砥粉だけのものに比べると研磨がかなり大変(グルテンの繊維のせいだと思うが)なので、私は今のところ手を出していない。たぶん積層させて形を作ったりすると、グルテン繊維のFRPって感じで、かなり強いんじゃないかと予想はしている。
さらに、以下の内容は全く手付かずで机上の空論に近いのだが、グルテンは植物由来の粘着性たんぱく質だが、同じ性質の動物性タンパク質に、牛乳から取れるカゼインがある。カゼインはすでに木材の接着剤として使用されているが、何か上手いこと考えると、このカゼインも陶器の接着剤として使えたりしないかと思ったりしている。
まぁ、あくまでも空論なので、とりあえず、ということで。
以上。

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