失敗とフォロー

修理の基本は「非加熱」だ、と最近痛感した。加熱修理を行うときは、本当に注意しないとトンでもないことになる。焼き継ぎがどうして無くなってしまったのだろうと以前に疑問を呈したが、要因はいくつかあるにせよ、たぶん加熱することで陶磁器の汚れが悪化することがたびたびあったためではないかと思ったりする。
びっくりする話だが、まぎれも無い実話。陶磁器の中には、再加熱をすると真っ黒になるものがある。何度か再加熱を繰り返したり、焼成温度を上げると陶器は色が消えやすいのだが、磁器はほとんど不可能だったりする。何故、そうなってしまうのか原因が分からないのだが、おそらく素地の内部に浸透している汚れが、再加熱によって素地と釉薬の境目に溜まり定着してしまうのではないかと思う。
実は、少し前に、お客さんから、器の表面に膜が張ってしまったので消してほしいという依頼を受けた。よく見ると確かに薄く艶のない膜が張っている。爪で擦っても落ちる気配はない。経験上、素焼きの時の窯に本焼きした作品を入れると出る膜によく似ているので、おそらく膜の成分は水分中のカルシウム分が器表面に付着してしまったものだろう。ヨーロッパのような硬水を使用している地域では、器を洗う頻度が増えるだけで膜が器物表面に付いてしまうという話を聞いたことがあるので、たぶん、そのたぐいの膜だと思う。カルシウムは約600度を超えると分解が始まるので、700度くらいで焼成すれば消せるんじゃないかと思って試しに加熱してみたところ、膜は消えたのだが、出てきた器が黒灰色である。ちなみに私の顔は真っ青だ。慌てて再度加熱してみたのだが、全く消える気配すらない。漂白剤に浸けてみたり、カビキラーを使ってみたが、効果なし。700度の加熱で消えない色なのだから漂白剤ごときで消えるわけがないとは思っていたが、まぁとにかく打つ手なし、四面楚歌。以前、漆の焼き付け実験で、自分の作った器が黒くなったことがあったのだが、その時は揮発した漆のせいだと思い、ちょっと高めの温度で再加熱したら消えていた。黒くなったのは漆のせいではなかったということだ。
平身低頭謝るのは当たり前として、それ以上にフォローをしなければならないということで、近所のアンティーク店に何とか同じ物を見つけてほしいと頼んだところ、18000円くらいで何とかなるかもしれないという返事。た、高!しかし背に腹は代えられず、とにかくお願いをする。しかし、家に帰る途中、インターネットで検索すればもうちょっと安く見つけられるかもしれないと気づき、英語の辞書と翻訳ソフトを駆使して世界各国のサイトを検索。すると見つけました。しかも9ポンド。日本円で1800円くらい(おいおい10分の1じゃねーか)。文法もままならない英語で何とかメールで頼み込んだところ、送料込みで19ポンドで送るよと返事をもらい、即決。結局、4000円くらいで何とかできた。しかも頼んだ3日後には商品がきちんと届く。物流業界の底力を思い知った。
海外オークションとか個人輸入とか、前から話は知っていたが、実際に体験してみるといろいろ勉強になりますな、まったく。
まぁそれはさておき、とにかく修理を行う時に、加熱するのはかなり気をつけなければいけない。特に、使用状態の素性の分からないものに関しては、加熱は御法度と思って間違いない。

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