焼き継ぎ その5

しばらく書き込みをしていなかったが、ガラス継ぎでかなりの進展があった。もっともガラス継ぎ自体が失われた技術なので、今、行っている実験が正確にガラス継ぎを再現しているという確証はないし、仮に同じベクトルだったとしても、まだまだ江戸の職人の足下にもおよばないと思うのだが、それでも、アプローチの一つとしては結構、良い線いっているんじゃないかと自分では思うところまで来た。というわけで、その結果を報告しておこうと思う。
なお、先にあえて断りを入れておくが、この実験を他人に公言することは勿論構わない(ネットで書いているのだから、構わないもなにもないのだが)。ただし、この実験を公言する際は、必ず、このサイトに明記されていた旨を伝えるようにお願いしたい。当たり前だが、公言する人間が自分で発見したみたいに言わないように。また、一連の実験およびその文章は、私のオリジナルであることを再度、記しておく。
さて、ずっと問題となっていた接着効果のある原料。つまり、常温で粘着性があり、400度超の温度域でも粘着性(あるいは固着性)を失わない無機系の物質だが、実は非常に身近なところに解決の糸口があった。灯台下暗しとは、まさにこのことだと思う。幽霊の正体みたり枯れお花って感じもする。気付いて見るとあっけない。少し前に、骨董屋で下手な焼き継ぎの器を3000円で売ってくれるというので、買ってきて毎日、眺めていたところ、発泡した焼継ぎの下地に、赤茶あるいは黄茶色の妙な粉が混じっているのを見つけた。虫眼鏡で見ないと分からない程度なのだが、これって一体なんだろうと考えていたら、ある日、天啓のごとく閃いた。「これって素焼きした粘土の色じゃん」。そう。「常温で粘着性があり、高温で固着する無機系の物質ってなぁんだ。」というなぞなぞの答えは「粘土」だった。陶磁器の原料そのものである。
粘土で陶磁器が接着できるのか?と思うかもしれないが、実はかなり良く付く。陶芸をやっている人は経験があると思うが、作業中にロクロや衣服に付いた粘土は、乾燥すると意外なほど除去が困難になる。水を付ければ簡単に取れるが、そうでない場合はスクレイパーなどで力を入れてゴリゴリやらないと取れないほど固着する。陶磁器、特に無釉の部分についた粘土もこれと同様だ。しかも粘土の粒子は約1〜10ミクロン。接着に使うと、接着誤差を極めて小さくすることが出来、乾燥中に収縮して密着度が高くなる。器を温めると粘土の乾燥速度も早くなるので、接着時間は5分程度とエポキシ系接着剤なみの短時間硬化力を持っていて作業効率が高い。更に、接着に失敗した時は、水で洗えば簡単に除去することが出来、すぐに再挑戦も可能、と、極めて接着原料として優秀な面を多々持った優等生である。現在は信楽土を使っているのだが、たぶん、江戸の頃は渋谷などで取れた粘土を使っていたのではないかと思っている。ただ、これは下手な焼き継ぎの場合で、上手い焼き継ぎは発泡も無いし、粘土素地も全く見えない。卓越した技術なのか、上質な白絵土のような粘土を使っているのか、それとも全く異なる方法なのかは分からないが、まだまだ研究の余地はあるということだ。
そういうわけで接着原料の方はおよその予想が付いたのだが、ガラスと思われるシーリングの方が、さっぱりだ。今のところフリットを使っているが、販売されているものは純度が高すぎるのか、調合が上手すぎるのか、焼継ぎのように厚みを出して使用しても透明度が高く、困ったことに多数の貫入が発生する。つまり優秀すぎて再現が出来ない。日ノ岡珪石でも入れて溶融温度を変えるのか、それとも鉛を多めに入れて釉をマット化させたほうがいいのか、全く予測がつかないうえ、実験道具がショボイので、調整のしようがないというのが現状だ。とはいえ、江戸時代の道具も、それほど高度高機能だったとは思えないので、頑張れば再現は可能なのかもしれない。
これについは、進展がありしだい、追って連絡したいと思う。

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