焼き継ぎ その3

主犯格と思われる人物の自殺により、陶芸家そっちのけの報道になっているあの事件。ニュースで映った作品は自然降灰だったので登り窯専門と思っていたのだが、家の空撮で多数のプロパンが映っていたから焼いたのはガス窯だったのかと思った矢先、「私はスイッチを押しただけ」という証言で、どうも使ったのは電気窯らしいと分かった。って窯を3つも持っているのか。何故3つの窯から、電気窯を選んだのだろう。妙に窯の選択が冷静だな。
と、それはさておき、焼き継ぎの話の続き。
ガラス継ぎは漆を使った焼き付けだったのではないか、という仮説を立てたが、それだけでは説得力が無いので、ネットで漆(種類がいろいろあるのだが、透明度の高さで、生漆の瀬〆と、透漆の朱合に決定)を購入し、近所のホームセンターで3000円の温度設定機能付きのオーブントースターを購入して実証実験をやってみた。
結果だが、これがとんでもないことになっている。
というのも、漆はどちらも酸素と反応して黄赤色になってしまう(このように色がつくことを「くろまる」という)。確かに薄く塗った場合、在る程度の透明度はあるのだが、接着の場合は使用量も多くなり、接着部分の色はほとんど黒色だ。しかも加熱すると、その色はより濃くなり、温度によっては流れたり発泡したりする。もっとも流れたり発泡したりするのは、砥の粉などを混入することで在る程度は回避できることは分かったので、あとは色の問題だ。ところで前に白漆を使ったと書いたが、白漆は明治に入ってから使われ始めたんだそうな。ってことは江戸時代にはチタンを入れた白漆は無いということになる。そこで江戸時代に入手可能そうな白い顔料を日本画の画材屋で買ってきて入れてみたのだが、これがまた、どうやってもグレーにしかならない。(田舎ではガラス粉を入手するのが不可能のため)まだガラス粉を入れた実験をしていないのだが、おそらく結果は似たように色が付きそうだ。
うーん、ガラス継ぎが漆による焼付けという仮説は誤りだったのか。ショック。とはいえ、まだ完全にダメとは思わない。というのも、漆は常温で酵素が酸素と反応し硬化するのだが、加熱の場合にはそれと無関係に重合反応で硬化する。よって還元焼成のように酸素を極力減らしてやれば、黒くなることは防いで固化することが可能かもしれない。江戸時代の熱源はおそらく炭だと思うので、加熱が還元雰囲気だったことは充分に考えられる。問題は、300度以下の温度域で還元雰囲気を維持できるのかということになるのだが、どんな炉でそれが可能になるのか分からず、未だ思考中。
それとは別に、新たな仮説も立ててみた。漆ではなく、澱粉糊のような乾燥して固化する別の物質なのではないか、というのがそれだ。ガラス継ぎの技術は何故か時代の中で消え、漆による金継ぎだけが現代に残っている。つまりガラス継ぎには何か金継ぎに勝てない弱点があったのではないか。で、その弱点は、おそらく接着力にあると思う。実際のところ澱粉糊の硬化状態は、見た目にはガラス継ぎに非常によく似ている。光沢は弱いが、透明度はほとんど同じだ。ただし、乾燥状態では接着しているし、結構な強度なのだが、お湯を入れると数分でパックリ割れる。ガラス継ぎは、おそらくここまで弱くないと思うので、澱粉糊単品ではないだろう。何か別のものを混ぜれば、結構いい線いくのではないかと思ったりしているのだが、その混入物の検討がさっぱりつかず。暗礁に乗り上げている。
というわけで、いずれにしてもガラス継ぎの再現は、結構やっかいだということが分かった。たぶん、方法が見つかれば何て事は無いのかもしれないが、如何せん、そこまでが長い。もしかしたら、何故、ガラス継ぎの技術は途絶えてしまったのか、ということが分かれば、使った材料も自ずと導きだされるのかもしれない。
進展があり次第、追って報告をしたいと思うので、お楽しみに。

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