陶芸家のタブー

昼過ぎからテレビでさんざん流れている「遺体を窯で焼く、陶芸家逮捕」。最初はサスペンス劇場の宣伝か何かかと思ったら、本当の事件だそうだ。昨年まで陶芸屋をやっていた人間としては、腹立たしいというか、情けないというか。
また、その陶芸家というのが、山の上に城壁を付けた変な家に住んでいて、住民とも接触を持たない偏屈人間。しかも自宅にあるのは、どうやら登り窯らしい。あぁ悲しいほどステレオタイプな陶芸家だ。これで顔写真が出た時、長い口ヒゲを生やして作務衣を着ていたら私はひっくり返るかもしれない。いるところにはいるんだな、こういう人間。まぁ、ほとんど無名で作品も焼かないらしいんだけど。って、それじゃ陶芸家じゃなくて、趣味で窯持っているだけなんじゃないのか?本当に陶芸家なのか。
ところで、この事件。自称陶芸家は、銃で脅されて遺体を焼いたということなのだが、私には少々、解せないことがある。テレビでは窯場の屋根しか映っていなかったが、屋根の傾斜から見て、おそらく窯は穴窯または連房式登り窯と思われる。また、専門家の話として、1200度以上の温度で遺体を焼いたのでDNA鑑定は難しいという話があったが、穴窯にしても連房式登り窯にしても、人が入れる大きさの窯を1200度まで上げるのは最低でも2日。少し大きな窯になれば3〜4日は間違いなくかかる。(ステレオタイプな陶芸家は、たぶん、ステレオタイプなこだわりを持っていると思うので、3〜4日くらいかけて焼く大きめのものを築窯しているはずだ。)しかも、最初の火入れは小さな木片を少しずつ入れて炎を多きくしていき、炎が大きくなったら、今度は温度が落ちないよう不眠不休で薪を入れ続けなければならない面倒な作業が延々と続く。そう考えると、寒い山の上で、それだけの時間、60歳と61歳の二人が、ずっと銃で脅し脅されるという緊迫状態を持続するのは、どう考えても難しいと思う。
半日で焚けて手間も少ない電気窯やガス窯ならいざ知らず、2日以上焚き続ける登り窯。警察に連絡するチャンスはいくらでもあったのではないか。
推理はともかく、自称陶芸家とはいえ、窯で有機物を焼くという陶芸家のタブーを犯した人間が現れたことは、実に怒りと悲しみに絶えない事件だと思う。殺された女性には、心からのご冥福をお祈りしたいと思う。