陶芸どう?『動物食器』

今回はバランスをとって前回より50%カロリー控えめな内容にしてみた。
私の人生の概算約70%は捨て猫が傍らにいる。子供の頃は拾ってくることもあったが、東京に住むようになってからは何処からともなく栄養失調の猫がやってくきて、(ペット不可のアパートなので大きな声では言えないが)気付くと同居しているという状態になっている。一度に複数匹と居ることはなく、一匹を看取ると何故か次の猫が申し合わせたようにやってくる。申し合わせているはずはないのだが、とにかく猫との縁が妙に深い。ペット販売店には行ったこともなく、取り立ててペットが欲しいと心から望んでいたわけでもないのに、何故か膝の上に猫は乗っている。人生とは真に珍妙で、現在も昨年の10月にやって来た片目の猫と同棲中だ。
ちなみに、現在の日本のペット産業は一兆円超の巨大ビジネス。猫は推定約800万匹、犬も合わせるとその数は2千万匹弱とする報告もある。潜在的飼育願望はかなりの数で10年経たずにペット数は倍、2兆円規模の産業に膨れ上がるという予測すらある。
ヨーロッパでは早くからの核家族化の影響でペットの保有率は極めて高く、完全に人のパートナーという地位を確立している。ペット入居可能なアパートが多いのは当然、ペット連れで入ることの出来る飲食店も珍しくはない。日本も多少の文化差はあるにせよ急激な少子高齢化により、おそらく似たような状況になっていくことは間違いない。愛玩動物から家族へ、更に人生のパートナーとして、接し方や依存度は高まり続けている。要するに日本人のライフスタイルは共存からペット共生という変化を余儀なくされているということだ。
ところで、ペット好きの愛玩が露骨になると、服を着せたり、冷暖房完備のペット専用部屋を作ってみたり、果ては温泉に連れ出して混浴を満喫という状況が生まれる。ペットにとってはいい迷惑なのかもしれないが、捨てられて病気や栄養失調で死ぬよりも幾分幸せには違いない。しかし、ここまで愛でる飼い主も、何故かペットの毎日の食事には実に無頓着だ(と私は思っている)。食材の厳選こそあれ、ペットの食事状況、特に食器に対しては全く愛が感じられない。高価なの古伊万里の器やヨーロピアンアンティークを使っていたとしても、所詮は人間が使う食器の転用であって、それがペットにとって食べやすく飼い主にとって扱いやすい器ではないと思う。また、こうした疑問を解決するペットのための食器も私は見たことが無い。
犬や猫のような動物は獲物を捕獲し、出来る限り早くそれを食さなければならないため、基本的には齧り付きで、顔を餌に近づけたままずっと下を向いて食事をするのが常だ。野生動物であれば食事方法はそれがベストと思えるが、ペットの場合、特にドライフードを食べる様子を観察してみると、口に入れて噛む間にかなりの量を口からこぼし、餌を押して食器から落としてしまっていることが多い。つまり、ペットとしてドライフードを食する状況において、野生と同じスタイルで食事を取ることは犬猫にとって決して楽な作業ではないわけだ。なのに、ペット愛好家は人の使う食器をペットに転用させて上機嫌だ。人よりも食事時間が短いので、関心が薄いのかもしれないが、餌をこぼしにくい食器があれば、ペットの食事スタイルにとっても、飼い主の餌場の掃除にとっても、非常に利点は多いだろうと思う。
そこで、陶芸屋という特権を生かし、同棲中の猫には特注の食器を作って食事ライフを満喫してもらっている(実際、猫が気に入っているかどうかは不明だが少なくとも嫌がらずに食事をしているので、悪い気はしていないだろうと勝手に思っているわけだが)。
この食器は猫の顔がわずかに下を向く程度の位置まで台座を高く取り、かつ、碗部分に約30度の傾斜をつけたもので、使用を開始してから猫が餌をこぼしたり、半分かじったドライフードが食器に残るということは、ほとんど無くなった。構造的にはかなりイイ線なのだが、もう少し色や質感などを改良して、ペットが使いやすいだけでなく、飼い主が見て楽しい食器にまで仕上げるなど改良点はまだまだ多い。
なお、陶芸教室で、このペット用食器で猫に餌をやっていたところ、同じ物が欲しいとか、ネットで売りたいと言われ、いくつか作ってみた。(作っただけで、その後は関知していないから、どうなってしまったのかはよく知らない。)意匠登録や特許も考えたが、資金が無いのと、権利を取るよりも多くの陶芸関係者、愛好家にもっとペットの食事スタイルに興味関心を持ってもらい、本当にペットの為になる良い器、食事スタイルを探求して頂きたいので、この食器はオープンソースだろうと思っている(笑)。
天国にいる私と出会った猫たちも、たぶん賛成してくれるのではないかと思うのは、やはり飼い主の傲慢だろうか?

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