陶芸どう?『道具開発』

先に断っておきますが、ネチケットとして誹謗中傷はご法度。しかし今回、あえて中傷に近い発言を行おうと思います。もっとも、私自身は中傷ではなく今後の陶芸に対するエールと自覚しているので、読んで頂く皆さまも、ぜひ、そういうつもりで読んで頂ければ、と勝手なお願いをさせて頂いて、さて本題。
先日、某陶芸メーカーが新型の電動ロクロを売り出したので実物を見てほしいと持ってきた。パッと見は全くこれまで通りの電動ロクロなのだが、回転台の軸芯にダイレクトドライブを直付けし、内蔵のマイコンで回転を制御することで、静音と、低速での高馬力を可能にしたそうだ。試しに動かしてみたところ、確かに静穏と馬力はすばらしい。メーカーでは今後は全てのロクロがこのタイプになっていくだろうとの見解だ。私もそう思う。現在、電動ロクロの購入を狙っている方には十分に勧める価値のある商品だと思う。
しかし、実は、私はこのロクロを認めていない。良く言えば静音で高馬力だが、悪く言えば、それだけのロクロなのだ。せっかくダイレクトドライブとマイコン制御いう高い技術力を搭載しながら、デザインが従来の電動ロクロなので使い勝手が非常に悪い。ユーザービリティやユニバーサルデザインなど、モノを開発するメーカーは、やっと企業主体から使用者主体へ意識改革の努力を行っているという昨今なのに、この電動ロクロは、そうした開発メーカーの向上心を全く感じさせない。デザイニングに大きな問題がある。
メーカーの方にもいろいろと言ったのだが、形を変えると今までの使用者が混乱するとか安定性が悪くなるとか、難癖を付けて聞く耳を持たない。終いには、道具は慣れの問題だと言わんばかり。アホか。仕方がないのでここでも言わせて頂く。鋳型を作るコストが無いなどの理由はあるかもしれないが、今後の電動ロクロの未来を決めるであろうエポックを売りにするなら、尚のこと「電動」というロクロの利点を一から見直し、更にこれからの日本の社会状況を考慮し、技術にふさわしいインターフェイスをロクロに持たせるのが新商品としての使命ではないだろうか。そうしたデザイニングまで含めたモノとしての思想が、この電動ロクロには全く感じられない。
本体の形状、スイッチやレバーの位置・堅さ、移動のしやすさ、ドベ受けセットの方法など、今のままではお世辞にも使いやすいとは言い難い。ある程度、使用者が慣れているから、それを忘れているだけで根本的に使いやすい道具ではないと思う。平均的労働者(と思われる)私ですら、そう思うのだから、まして高齢の 方や、体が不自由な方にとって、あの形状や重さが最適とはいえないだろう。それなのに、多くの陶芸愛好家やプロに売ろうというのは、開発にしても販売にしても、正直なところモノへの愛情や思考が足りないと思う。
陶芸機材開発の方は、是非とも考慮して頂きたい。これからは高齢化社会でありバリアフリーが日本の社会構造の根幹になるはずだ。陶芸業界であっても、それは同じだろう。技術がいくら進歩してもユーザービリティやインターフェイスがこれまでと同様ならば、それは無駄な物が増えるだけに等しい。
そして、様々な道具を使って作陶を楽しんでいる皆さんも、メーカーにはどんどん文句を言った方が良いと思う。文句を言う人が増えれば、それが陶芸業界の標準になるはずだ。私の持論に「徹底的に道具にこだわることは、最高の一つに近づくことだ」というのがある。(本当は、「徹底的に道具にこだわることは最高の一杯に近づくことだ」だけど。)弘法は筆を選ばないそうだが、弘法が筆を選べば、世の中はもっと良くなっていたかもしれない、などとも思う。
自分の手が作り出すモノは至高に近づいて欲しいのはプロでもアマでも同じだろう。だからこそ、近づくための道具にも十分な知恵と愛情を注いで頂きたい。そして開発メーカーは、そういう作陶者の気持ちを高める道具を作って頂きたいと思う。

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