高台のこだわり

茶碗や湯飲み・カップなどの場合、大抵は器の裏に「高台(こうだい)」という足(台)があります。茶席にでも上がらない限り、日常生活において高台を気にすることは皆無だと思いますが、高台は、作り手のこだわりを感じることが出来る最良のポイントです。
通常、器の裏側は、窯で焼成する必要上、釉薬というガラスのコーティングをする事ができません。釉薬が付着していると、窯に接着して器が取れなくなってしまうからです。ですから、高台に釉薬は付けません。強度や使い勝手を考えると、器は釉薬で完全にコーティングされている方が良いわけですが、日本人は、この欠点を逆に利用し、釉薬が掛かっていない高台に「土見(つちみ)」という名称を与え、土が見える部分から、産地や作者の技術力などを見抜く面白み、言い換えれば、器との付き合い方を見つけました。
この器を作るために、どんな土が使われたのか、作者はこの器をどのような気持ちで削り出したのか、などの謎解きは器を使う人間の楽しみとなりました。また、器の作者も、それをわきまえ、わざとデザイン的に釉薬を掛け残すことで、土見の演出を行ったり、いろいろな形の高台を考えて、器の使い手に遊び所を提供します。
西洋磁器の場合は、逆に、機能性を重視し、高台はあくまでも器を安定させる台であり、器を重ねた際に傷が付くことの無いようにと、高台に釉薬を掛ける技術を開発してきました。日本でも、高台に釉薬を掛けて焼成するために「トチ」という道具を使いますが、西洋磁器の場合、このトチの形態と構造を発展させ、高台に奇麗に釉薬の掛かった器を作ることに苦心しました。また、伏せ焼きと言って、器を伏せて焼成し、高台に釉薬のかかった器を作るという荒技も行いました。(もちろん、この場合、口の部分に釉薬が付いていませんから、口は後から金をコーティングしてカモフラージュするわけです。)どれだけ釉薬を奇麗にコーティングできているかが、作り手のこだわりになっているわけです。なので、高級なティーカップは裏返して高台を見ても、土見の部分はほとんどありません。
このように、高台には作り手が器を作り上げる上での思想が見え隠れします。どうですか?ちょっとだけ、器を裏返してみたいな、と思ったりしませんか?いつも上から器を見下ろすだけでなく、たまには下からのぞいたり、ひっくり返して器と遊んで上げてみて下さい。そうそう、ちょうど犬や猫を抱いてあげるように。

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