陶磁器に親しむ

陶磁器に親しむというと、何となく難しいといった印象を持つ方がいらっしゃるかもしれません。鑑定士や骨董店で器を眺める気難しいオヤジさんのように、歴史や産地、土や釉薬を勉強しなければ、陶磁器に親しむなど出来ないと思っていらっしゃる方もいることでしょう。
無論、知っているに越したことは無いのかもしれませんが、陶磁器を目の前にしたとき、歴史や産地、土や釉薬の事など全く知らずとも、陶磁器に親しむことは、決して難しいことではありません。
唐突ですが、あなたは初対面の人と会った時に、まず、どこを見ますか?顔ですか?胸ですか?それとも足でしょうか。
異性を見るとき、あなたはどこに惚れますか?かわいい口が好き。がっちりとした肩が好き。すらっと伸びた足が好き。など、いろいろありますね。
実は、器に親しむ事は、人と接する事に似ています。だから、昔の人は、器の各部に人と同じ名称をつけてきました。
「口」「耳」「首」「肩」「手」「胴」「腰」「足」など。これらは全て器の部分の名称です。
例えば「口」。
ここは、大抵、器を見るときにまず、目が行く部分でもあり、わずかな角度や厚み、色の変化によって器の全体の印象ががらりと変わります。人の場合も、唇のちょっとした厚みや大きさで、顔の印象が大きく変化しますよね。
陶芸家も、最後は口をどのように作るかで、非常に悩むことが多く、口の作り方を誤ったばかりに器全体の印象が悪くなることも少なくありません。特に、湯飲みや茶碗は、人が直接、口を付けるところでもあるので、いわば器とのキスシーンでどういう演出をするかと迷う映画監督のような気持ちにも似ています。
「肩(茶入れなどで見る口の下の張り出た部分)」や「腰」も、ちょっとした形の違いで、スタイルの抜群のきらびやかなモデルになったり、疲れの溜まったお父さんになったりします。
特に腰は、器の重量や、手取り(持ったときの感じ)のバランスを決める部分です。わずかな厚みの差で、手取りのバランスは全く異なるものになります。見た目の印象と、手にした時の気持ちを一致させる為には、この腰の作りがポイントになります。
「耳」や「手」はお洒落を演出する部分です。
イヤリングやピアス、ブレスレットや指輪をするように、器も耳や手の部分には洒落たデザインを施して、より魅力を引きだす演出部分になります。壺などは耳を付けて、ちょっとおどけた感じを演出する時もありますし、ティーカップの手の装飾は優雅でありながら遊び心をくすぐる楽しいデザインです。
その他、「首」や「胴」、「足」にも、様々な作り手の思い、使い手の関心というもがあるでしょう。
デパートやギャラリーで器を見る時、単に「陶磁器」という気持ちで器と接するのではなく、ちょっと、そんな事を思いながら見てみると、今までよりもちょっとドキドキしたり楽しみが増えたりするかもしれません。
あるいは、家にある食器を洗う時「面倒くさいなぁ」などと言わず、我が子を産湯につけるような気持ちで、器の各部を丹念に洗ってあげては如何でしょうか。
もちろん、陶磁器が魅力的に思ったら、かならず「奇麗だね」とか「かわいいね」と声をかけてあげて下さいね。
きっと、明日、同じ湯飲みでお茶を飲んでも、今日よりももっと美味しく感じることうけあいですよ。

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